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 ぼくは、彼女に初めて会った時から、彼女の姿を写真に収めたかった。

 放課後になると、ぼくは迷わず部室へ向かう。
 その原則は、どんなに多忙であっても例外はない。たとえ、定期試験で部活動が全面的に休止であろうとも、夏季・冬季休暇であろうとも、ぼくは職員室で鍵を受け取る。
 それは、ぼくが無類の写真好きだから、という理由もある。
 だけれども、一番大きな理由は彼女が訪れるからだ。

「彼女」というのは、同級生の伊豆見左近(いずみさこん)のことを指す。
 初めて彼女を知ったのは高校入学時まで遡る。高校で初めてできた友人から「どうも同じ学年に可愛い女の子がいる」という、よくあるありふれた噂話で彼女の名前を聞いた。
 ぼくは、自分で言うのも無粋だけれども恋愛に対して奥手だった。昨今喧伝される「草食系」なる軽いファッション感覚よりもずっと硬派な態度を誇示していたから、友人の話を適当に受け流してしまっていた。
 それ故、ぼくは彼女と出会う時間が大幅に遅れてしまった。しかし、その事実自体には、ぼくにとって特に深い意味はない。別に悔しいとか惜しいとか、ましてや口惜しいだなんて思っていない。全然、思っていない。
 ただ、もっと早く彼女と出会っていれば、今までのどこか色褪せた高校生活が違った色合いと輝きを放っていたのではないか、とは思う。残念ながら。

 ぼくが彼女に抱いていた期待。それは今にして思えば、彼女があまりにも異色だったからだ。
 紺色のセーラー服に白いタイ。短い黒髪に、日焼け知らずの白い肌、猫背気味で教室の端に陣取って、読書に没頭する彼女は男子生徒から見ると、「引っ込み思案で自己主張を知らず、自分の美しさに気付いていないが根は純粋でカワイイ深窓の令嬢」といった趣だった。
 かくいうぼくもまた、彼女にそう言った第一印象を抱かずにはいられなかったので、人の事を言えたものじゃない。そうやって、多くの男子は理想と現実のギャップというものを知り、諸行無常を嘆くのである。
 その時のぼくは、なんと言えばいいのだろう。上手く言葉で表現できない気持ちにとらわれていた、のかもしれない。きっと、正常じゃなかったのだと思う。
 それ故、ぼくはその他大勢の愚かな男子生徒と同じく、愚かな質問をしてしまった。
「何読んでるの?」
 黒髪が揺れた。顔を上げた彼女の顔に浮かんでいた表情は、驚きではなかった。
 唇を緩く曲げた、慎み深い笑み。
 ぼくは次の句を継ぐ事が出来ずに、ただ彼女の返答を待った。頭の中が真っ白となって、他に言うべきことがあったかもしれないというのに、ぼくは何も考えることができなかった。
 それ故、ぼくは彼女をずっと見続けることになった。息が詰まって、呼吸をするのを忘れていたことに気付く。鼻から空気を取り込むと、彼女から漂う優しい香りにまた息が止まりそうになる。
 彼女は微笑みながら、分厚い本のカバーを外した。そして、ぼくに向けて掲げた。
 題名は『アウシュヴィッツの回教徒』
 後に、ネットの密林であらすじを確認したところ、第二次大戦時、強制収容所に収容され無残にもガス室で虐殺されたユダヤ人達を、当時ナチスの命を受けガス室送りの片棒を担いだ同胞――つまりは同じユダヤ人――の証言で語られた本である。
 ぼくはその時、彼女に声をかけたことに対する激しい後悔に苛まれた。その他大勢の男子生徒と同じく。

 ぼくがその他大勢の男子生徒と違った点。
 それは普段、同級生の和に入るのを潔しとしなかった彼女がぼくと話すようになり、ぼくもまた彼女からの接触を拒まなかったということにある。
 ただし、それを「好機」と表するのには疑問が残る。というのも、ぼくと彼女の会話のギアは、往々にして噛み合わなかったからである。
「なんでそんな本を読んでるの?」
 ぼくは予想だにしなかった衝撃から立ち直ると、恐らく万人がそう思うであろう、純粋にして素朴な疑問を彼女にぶつけた。
「……なんで、って?」
 ぼくの問いに対して、彼女は小首を傾げた。きらきらと輝く瞳に無防備なまでに無垢な表情。まるでぼくの質問の意図が心底理解できない、と言外に表しているような仕草に、ぼくは狼狽した。
「面白いから。あとは空いた時間の有効活用にだけど」
 彼女の淡々とした受け答えに、ぼくは言葉を紡げずにいた。
 第一印象を裏切る恐ろしい題名の本。そして、容姿や雰囲気とは印象が異なる意外な言葉。その二つが、ぼくを打ちのめした。
 固い笑みを浮かべて硬直しているぼくを、彼女は怪訝そうな顔で見つめた。多くの男子生徒の視線を引くだけあって、彼女のそんな些細な仕草でさえ絵になっている。
「百聞は一見にしかず。まずは読んでみることをお勧めする。わたしは普段、人に大事な本は貸さない主義だけど……今日は特別に」
 伊豆見はそう言うと先程まで読んでいた辞典の様に分厚い本を、ぼくに対してやんわりと、しかし有無を言わさず押し付けた。
 ぼくが反射的に返そうとするよりも先に、彼女はそそくさと鞄の中から文庫本を取り出した。結果的に、ぼくはこの恐ろしそうな本を返す機会を失ってしまった。
 ぼくは目を白黒させながら託された本を見下ろした。普段愛読するのは、写真のハウツー本と、定期刊行されるカメラ雑誌だけだ。こんな分厚くて難解そうな本は到底読めそうにない。ぼくは身体の奥から込み上げる溜息を必死に飲み込んだ。
 ぼくはせめてもの抵抗に、彼女が手にしている文庫本を見つめて「そっちの方がいいかも」と呟いた。我ながら、実に慎ましやかで紳士的な抵抗だ。
「……ああ」
 彼女は手にした本に目をやる。
「『虐殺器官』がいいの?」
「は?」
 今、彼女はなんと言ったのだろう。
 何かとても不穏な単語が聞えたような気がする、のはきっと幻聴だ。断じて、「虐殺」なんとかだなんて言葉は、ぼくは絶対に聞いていない。
 ぼくが事態を上手に処理する事を誤った、と知った時にはすでに手遅れの感があった。
「じゃあ、わたしが読んだら貸す。まだ読んでいる途中だから」
 不条理にも、ぼくに対する過重な読書課題の冊数が増えただけだった。

 伊豆見から半ば押し付けられるように貸し出された本を片手に、ぼくは途方に暮れていた。さながら読書難民である。夏休みの貴重であり最後の砦でもある最終週に、読書感想文に苦しめられる由緒正しい生徒の態だ。
 ぼくが発していた手負いの草食動物を思わす臭いを嗅ぎ取ったのか、高校入学当時からの友人が話しかけてきた。その生意気そうな顔に、心底嫌らしい笑みを浮かべて。
「難儀だったな」
 どうやら、ぼくと彼女との一部始終を余すところなく目撃していたらしい。
「ああ。どうしてくれようか、これ」
 ぼくは彼女曰く「大事な本」を高らかに掲げた。友人はいっそ清々しいまでの笑顔を浮かべて言った。
「苦しめ苦しめ。その他大勢の男子生徒みてえにな」
 彼こそ、ぼくに伊豆見左近の名前を最初に教えた男である。
 彼は腹の底からおかしいらしい。その顔は身体に何か深刻な衝撃でもあったのか、引きつって笑顔なのか単に強張っているだけなのか、判断に窮する。
「楽しそうだね。人が泣きたい心境だっていうのに」
「自業自得って奴だっての。あの子に手出す輩は皆、等しく痛い目に遭うのさ」
 ぼくは思い切り顔を顰めた。
「……言っとくけど、ぼくは彼等みたいな下心はないよ」
 彼は一瞬目を見開くと、がははと声を上げて喚き出した。その姿は傍で見ていて非常に痛々しい。何故か笑われているはずのぼくが見て恥ずかしくなる、破廉恥極まりない声だった。
「じゃあ、なんで読書に普段興味ない奴があんなこと訊くんだよ。ったく、素直じゃないな」
 ぼくは彼に背を向けた。
 自分でもわからない心の靄に悶々として、彼と目を合わし続けることが耐え難かった。ぼくは平静を保つようにふうっと息を吐き出すと、努めて冷たく言った。
「……それは、死に至る好奇心みたいなものさ」
「キルケゴール?」
「それは絶望だから。『死に至る病。それは絶望である』ってね」
 まあ、ともかくだ。彼は気を悪くする風もなく続ける。
「いやはや、あの子とおまえの表情の落差で笑い死ぬところだったぜ。もう、これから死地へ赴く兵士みたいな顔してた」
 彼はぼくを指差して言った。
「……近いうちに死に至るぜ?」
 死に至る。その言葉のせいで本の重量が増したような気がした。
「本当に、きみは嫌な奴だよ」
 ぼくは彼に背を向けたまま歩き出す。その場に佇んでいると、ぼくの身体が溶け出して地面に沈みこみそうだったからだ。
「だが、あの子が本を貸し出すなんて前代未聞だな。良かったなあ。おまえ、気に入られたんじゃねえの?」
 彼は先を歩くぼくを追い越すと、容赦無く肘で突いた。ぼくは「一発は一発」と言わんばかりに手刀を彼の背中に叩き込んで応酬してみせる。こうして、ぼくらの下らない日常は作られている。
「まあ、おれを楽しませてくれ。もがいて足掻いて苦しんで、な」

 ぼくは写真部部室に篭った。部室を訪ねる者は誰もいない。
 というのも、写真部の事実上の部員はぼくだけであり、他の部員は名ばかり部員であり、端的に言えば「幽霊部員」だった。
 一歳年上の先輩方から託された写真部をどうにか存続させたものの、写真部の歴史はどうやらぼくの卒業と共に幕を下ろす運命にあるらしい。
 しかし、特に悲観はしていない。写真部などと言っても、実態は「各々が個別に写真を撮る」という活動が主である訳だから、本来的には部活動として存在する意義は薄い。切磋琢磨してその技術を伸ばすのが、部活動の本来の趣旨だ。
 だけど、先輩方は「皆違って皆良い」を信条にしていたため、互いに削り合い、磨き合う事なく、なあなあで済ませていた。
 ともかく、ぼくはこの部室を「都合の良い個人的な空間」ということで使用している。
 机の上に、先程強引に貸し付けられた本を置いて眺めた。
 ぼくはぱらぱらと頁をめくった。
 あまり気が進まない。だけれども、人間関係を極めて円滑に進めるのは相手に話を合わすのと、愛想笑顔と相場は決まっている。
 このまま彼女に黙ってこの本を返すよりも、適当な感想を添えた方が教室の勢力均衡を崩さずに済むだろう。彼女だって、添えられた適当な感想に事を荒げるようなことはしないだろう。なんせ彼女は自ら進んで「栄誉ある孤立」の道を驀進しているのだから。
 ぼくは受験勉強の要領で本を読み進めた。決して作者の気持ちを汲み取らない。汲み取らなければならないのは、この本の著者である柿本某氏ではなく、この本を貸し付けた伊豆見左近の心境である。いわば彼女が課題の出題者なのだ。彼女から百点満点を貰う心積もりで読解を進めなくては、及第点は頂けないだろう。
 作者が表現を代えて言い換えている点を丹念にノートに書き写していく。本来ならば蛍光ペンで線をがしがし引きたいところだが、借り物である以上、丁重に扱わなくてはならない。「生命の算術」等繰り返される単語をまとめているうちに調子が出てくる。
 なんのことはない。これも学校で日々繰り返されるルーチン・ワークだと思えば気が楽になる。この感想文の出来が学期末に送られる嬉しくもない成績表に反映されないことを思えば、まだマシである。
 プリモ・レーヴィ、ハンナ・アーレント、そしてニーチェ。挙げられる聞きなれない固有名詞は別個に拾い上げて、人類の知識と科学の境地であらせられるネット本尊で調べればいいだろう。
 課題に目処がつくと、心穏やかになる。
 段々心の波が小さくなると、今度は様々なものが脳裏に浮かんだ。学校に隠れてこっそり行っているアルバイトや、ロードレーサー、そして何よりカメラの事が頭に浮かぶ。
 脳裏に浮かぶ様々な事象を押し退けて、体の中から込み上げる睡魔に、いつしかぼくは身体を委ねた。



 ぼくは、何故彼女に話しかけたのだろう。
 普段のぼくであれば、絶対に発しなかった言葉。
 彼女は、何故ぼくに本を貸したのだろう。
 普段の彼女であれば、絶対に貸し出されなかった本。
 意識と無意識の狭間で、その言葉が耳の奥底で木霊した。

 気を抜いているぼくに喝を入れる様に、戸が音を上げた。
 ぼくは目元を擦った。そして、眉根を顰めた。事実上一人の部員しかいないこの写真部に、一体どこの誰が、用があるというのか。
 ぼくは先程浮かべていた不審を表情から拭うと、気だるい気分を抑えながらドアを開けた。
 開けた途端、小さく開けた隙間からすっと文庫本が差し出される。
「読み終わったから、どうぞ」
 澄んだ声の持ち主が、一体誰であろうかと尋ねるのは愚問だろう。伊豆見左近嬢以外の何者でもない。
 彼女は見た目以上に重量感のある文庫本を、ぼくに押し付けた。咄嗟にその本を受け取ると、彼女の手は引っ込んでしまった。
 ぼくは、今し方手渡された文庫本に目を落とした。一拍遅れて何が起こったのかを悟ると、ぼくは無気力に首を振った。

 日が西に沈み、空も海も街も全てを赤で塗りたくる。赤い絵具を恥も外聞もなく乱暴にぶちまけた様な大雑把な夕焼けに目が眩んだ。
 世界は雑多な色で溢れている。それを夕日は一色で統一してしまおう、という極めて野心的な思惑を感じさせる。
 ぼくもまた、赤に染まりながら帰宅する。しかし、決して急がない。この街のどこかに転がっているシャッターを切る機会を、注意深く、探る様にして駆け抜ける。
 動物園を併設する野毛山を下り、目の前に横浜みなとみらいを拝める交通量の多い道路をただひたすらに走る。すれ違う緩慢な動きのママチャリ連中を見て、口元を歪め偏狭な自尊心を満たす。こうした情景の積み重ねが、ぼくの日常を構成している。
「参ったな」
 ぼくがうっかり声を伊豆見にかけてしまったことで、大変なことになってしまった。しかし、今更後悔したところで後の祭りだ。
 じりじりと夜と押し合いへし合いを繰り広げている夕日を眺めながら、ペダルを漕ぐ。
 京浜東北線や横浜線と言った高架を潜ると、生活観が溢れた地区から一転して都会的な街並みが広がり始める。人々の営みを感じさせる混雑し混沌とした統一感のない風景が、先進的な機能美を競い合うビル群に取って代わる。荒涼とした空き地には黄色と黒の重機が入り乱れて、未曾有の建築ラッシュに沸いている。
 ふと足を止めた。
 目の前にそびえる巨大なクレーンが迫っている。ぼくはブレーキをかけて立ち止まると、肩からかけたカメラを手繰り寄せ、無心にシャッターボタンを押した。
 写真は良い。ファインダーという視野で世界を還元して見る事ができるから。
 ぼくはその場に立ち止まり、飛び込んでくる風景をじっくり眺めた。
 クレーンとは反対側には、横浜ランドマークタワーをはじめとする、みなとみらい地区の高層ビル群が天空へと競うように伸びている。日本における高層建築の雄が、横浜の大地にどっしりと構え、ぼくを悠然と見下ろしている。
 ぼくはランドマークに焦点を合わせると、シャッターボタンを押し切った。

 ぼくは、夕日は好きだったが、朝日はあまり好きじゃなかった。
 その好みに深い理由がある訳じゃない。ただ、朝は一日の始まりであり、なさねばならぬ事が積み上がっているからだ。対して、夕方は大抵の事が終わっていて、一日の終わりに目途がついているから、くらいの詮無き理由だ。あるいは、黄色っぽい朝日より赤っぽい夕日の方が好き、だろうか。
 登校はいつも難儀だった。ロードレーサーで他の自転車よりは早く学校に着くという利点を余す事なく享受できるものの、茹だる様な熱い夏や凍てつく冬の大自然相手には目も当てられない。
 この日は、季節外れの猛暑に苦しめられた。身体から塩分が抜けてしまったからか、まるで自分の身体じゃないように重く感じる。
 教室に入り、腹の調子を狂わす強い冷気に震えながら座席に着く。冷暖房完備は有り難いが、男子の過度な冷房と女子の過度な暖房に、頭を悩ませる日々が続いている。それ故、夏でも学校指定のジャージを持ち込み、冬には制服の袖をまくっている。一体何のための冷暖房かわかったもんじゃない。
 強い視線を感じて振り向くと、伊豆見がこっちを向いていた。しかし、すぐに眼下の本に視線をずらした。
 ぼくは肩を落とした。彼女が話しかけてくれれば、ぼくは鞄から借り受けた本を、読解を元にした感想を付け加えて返す事ができた。登下校で背負う荷物が減っただろうし、謀らずとも彼女との親睦を深めるきっかけになったかもしれない。
 ぼくは彼女を見つめた。そっちから取り立ててくれなければ、こっちはリアクションできないじゃないか、と心の中で呟いた。
 ぼくが意味深な視線を送っているというのに、彼女は朝礼が始まるまで顔を上げなかった。

 授業と授業の合間の五分間の休みも、昼休みも、なんの行動もなかった。
 それ故、ぼくは常に即応状態を維持しなければならない状況が続いていた。いっその事、ぼくから出向いて彼女に本を返してしまおうか、とも思ったが、ぼくはその方策を選ばなかった。
「今動くのは得策じゃないな」
 ぼくは一人、写真部部室で呟いた。
 結局、無常にも時は過ぎ去ってしまった。彼女に返す心積もりだった本と共に、ぼくは普段通り部室へ足を運んでいた。
 ぼくはぼんやりと本の頁を弄んでいた。
「……そもそも、なんでこんな本読むかな?」
 時間の有効活用にしても、もっと有意義な時間の利用方法があるはずだ。少なくとも、退屈な日常と日常の合間に惨たらしい虐殺の一頁を指し込む事が、時間の有効な利用法だとはぼくは思わない。
 伊豆見左近は、そういう少女なのだろうか。ぼくは大いに唸った。
 ぼくが想像する伊豆見左近という女子生徒は、高校生には難解なハードカバーを黙々と読んで知的好奇心を満足させるような少女だ。間違っても、アウシュヴィッツが云々カンヌン言うようなキャラじゃないはずだ。そうだ、そうであってほしい。
 どちらかというと、明治の文豪達のむつかしい全集を読んで、かつての古き良き日本を嗜み、たまには今時な恋愛小説を読んで公序良俗に反しない善良な恋愛に思いを馳せるような読書少女であっても良かったはずだ。いや、むしろそちらの方が「伊豆見左近」っぽい。
 成績優秀で模範的な優等生。それでいてちょっと奥手で引っ込み思案で自分の美しさに未だ気付いていない可愛い女の子路線の方が、世界にとっても調和が取れているのではないか。そうだろう。

 日々悶々とするぼくを尻目に、彼女は日々淡々としていた。
 彼女はまるでぼくに本を貸した事を忘れたかのように、何事もなかったかのような日常をただ機械的に反復しているように見えた。
 その間、いつでも彼女から本を取り立てられても問題がないように、借りた本を学校に持って来ていたというのに。
 ついに、彼女への当てつけも含めて、借りた『アウシュヴィッツの回教徒』やら『虐殺器官』をぼくは教室で公然と読み始めた。こうして、彼女が声を少しでもかけやすくするよう環境整備に努めているというのに、当人は黙々と日々の自由時間を読書に費やしている。
 もはや、ぼくは普段の課題をこなす際の読解モードも限界に近付き、とうとう普通にこれらの本を読み始めてしまった。
 今まで「絶対読むものか。読むものか断じて」と心に決めていたのに、ぱらぱら捲っているうちに、とうとう耐えられなくなってしまった。
 そして、繊細なぼくには厳しすぎる描写の数々に、ともすれば目を覆いたくなるのだった。

 非常に残念なことに、ぼくにも読書の習慣ができた。
 ぼくは帰り際、横浜駅までロードレーサーで足を伸ばし、店先で立ち読むという迷惑極まりない行為を犯していた。書店の皆さま方には申し訳ない気持ちで一杯であるが、ぼくとて投下できる経済資源は限られている。一応学校には内緒で経済活動に勤しんでいるものの、収支の不均衡の解決には至っていない。高校生の吹けば大空高く飛んでいく超軽量の財布のほとんどを、カメラと自転車に費やしている以上、他の場面で贅沢できない。
 そこで、ぼくは彼女と遭遇した。彼女というのは、無論伊豆見左近のことである。
 遭遇、といってもぼくが一方的に見かけただけである。彼女は短く切った黒髪を揺らしながら、店内をゆっくりとした足取りで歩いている。そんな極めて日常的な情景であっても、息を飲む程の美しさを纏った姿はさすが伊豆見左近である。
 ぼくは彼女に話しかけようかと思い身を乗り出したものの、すぐに押し留まった。
 ぼくの流儀は迎撃である。そして、ぼくは流儀に反するようなことはしない。それ故、ぼくは奇襲も強襲もすることなく、ただ彼女から何らかのアクションがあるまで、ずっとスタンバっていたのだ。
 ぼくは彼女の買い物を本棚の影から静かに見守る事にした。ただ見守るだけではない、情報収集を怠るような失態は犯さない。彼女が購入する本をこの眼にしっかりと焼き付けて、今後の参考と指針にしよう。そうしよう。
 彼女は、ぼくの姿に気付く事なく、本棚や平積みにされているハードカバーをじっくり見聞している。そういう姿は実に様になっていて、非常に「伊豆見左近」っぽい所作のように見えた。悩む時に小首を傾げて、顎に手をやる姿なんて様になり過ぎていて、ぼくはカメラを構えたい衝動を必死に抑えた。ぼくはフェアな精神を持っている。他人の肖像権を侵害するような男じゃない。なので、網膜にしっかりと彼女の綺麗な姿を焼き付ける。
 彼女はきっかり三十分、書店を歩きながら思案を続けた後、本を両手に抱えてレジへと向かった。
 ぼくは彼女の頭脳明晰さに感心していた。最新科学から哲学書まで多岐に渡り、どの本も五千円だとか高額で、一瞥して万人が理解できるような生易しいものではなかった。いわゆる専門書という奴で、自身の専門じゃ無ければそもそも単語一つで躓きかねない「むつかしさ」を醸し出している。
 両手にエコバックをぶら下げて帰路に就く彼女の後姿をぼんやりと眺めていると、なんだか声をかけることは躊躇われた。さすがは美少女伊豆見左近。そんな姿も様になっていたし、絵になっていたからだ。
 彼女の後姿を見送っていると、肩を叩かれた。
 ぎょっとして振り返ると、奇怪に引き延ばされた笑みがあって驚いた。頬の筋肉が弛緩しているような、笑みと評するのが微妙な表情だ。
「何やってんだ?」
 友人は間の抜けた声で言った。

「で、借りっぱな訳か?」
「うん」
「……じゃあ、進展なしか」
 友人は心底つまらなそうに言う。ぼくは眉を精一杯顰めて抗議した。
「きみねえ、いつもそう言うけれど、ぼく達はそういう関係じゃないから」
「いやいやいや。おまえ、全然説得力ねえからな」
 友人もまた鋭い眼光を光らせて睨み返してくる。ぼくはなんだか馬鹿らしくなって肩を落とした。
「事態の好転を期待する訳じゃない事を予め表明してから言うけどさ」
「あ?」
「ぼくは彼女の事がよくわからないよ」
「……と、言いますと?」
「あの本を貸し出されてからずっと彼女を注意深く眺めているけれども、ちっとも伊豆見の考えていることがわからない。ぼくに本を貸しつけたことだってそうだし、彼女が脳だとか、遺伝子だとか、意識や意思なんかに興味を抱くことすら理解できない」
 友人は傍で見ていて不快な笑みを消した。急に真顔になると、それはそれで非常によそよそしく感じられる。
「ま、それを言っちゃあおしまいって奴だ。そんなこと言ったら、おれは伊豆見のことはおろか、おまえの興味を抱く事だって理解してやることはできねえ。第一、自分自身の事でさえよくわからねえ。自分の事は自分が一番よくわかる、なんて世間じゃ知った風して言うけどな」
 ぼくは思わず口を噤んだ。
「その発言こそ禁じ手だろ? 社会や世界が実のところ、よくわからない状態であまりに不便で非効率的だから、ぼく達は『科学』や『数学』だとか、そういったものである種場当たり的に説明してるんじゃないか。そうやって積み上げた基礎の上にプレハブ式の英知があるんだ。その根源を揺さぶる様な事言わない。身も蓋もない」
「そんなこと言ったってなあ。じゃあ、おまえの肩から提げてるカメラで伊豆見を撮っていって集められた写真、いわゆる彼女の断片を集めてって合わせた全体像が『伊豆見』って訳じゃない事はわかんだろ? おまえがどんなに伊豆見をストーキングして情報を片っ端から列挙したところで、本当の彼女の本質に迫れるだなんて、妄想であることを分かれってんだ」
「分かれとか言われてもね。……あと、ストーキング言うな」
「おやおやおやー。おれはてっきりおまえが伊豆見の後を追っかけているように見えたんだがねえ」
 肩を並べてルミネの駅ビルを出ると、外はすっかり暗くなっていた。
 帰宅途中のサラリーマンや制服を着た生徒達をかわしながら、車ばかり往来する道路の隅に申し訳程度に設けられた歩道を、ぼく達は歩いていく。
「まあ、おまえの尾行する熱意にだけは賛辞を送ったってもいいけどな。だがな、そうやって彼女にしかわからないものを求めて、しまいにゃ『わかんねえ』と白旗振って手こまねいてんのは正直、どうかと思うぜ?」
「……じゃあ、どうしろって言うのさ?」
 乗らずに手で押しているロードレーサーのグリップを、ぼくは強く握り締めた。
「そりゃもう……」
 友人は綺麗に揃った歯を見せて笑った。
「当たって砕けろよ」
 友人はさらっとした口調で言った。
 彼はぼくの課題を「他人事」のように言ってくれる。
 ぼくは溜息をついた。所詮、彼は自分の学校生活の芸能欄に新たな恋の噂が掲載されるのを待っている視聴者だ。断じて当事者なんかじゃない。当事者であるぼくの気持ちを理解することはできないし、理解しろだなんて言うのは大人気なくて、栓無き事だ。
「当たって砕けねえと、わかんないことがある。それが世の中ってもんさ」
 友人はわかったような口調で言った。嫌らしい笑みをにたにた浮かべながら。



 気が付けば、ぼくは伊豆見左近に振り回されていた。
 これは、実に不条理極まりないことだと思う。ぼくの平和な高校生活を直下型で揺さ振る不穏な揺れに対して、受動的なのは頂けない。これは断じて自然災害などではないのだから。
 ついに、彼女はぼくの夢にまで介入してきた。
 夢の内容は以下の通りである。
 彼女は平常と変わらず、背中を丸めて黙々と本を読んでいる。ぼくが声をかけると、彼女は顔を上げた。初めて話した時のような、朗らかな笑みを浮かべている。
 ぼくは遅くなってごめんね、などと言って彼女に借りていた本を差し出す。
「早かったね」
 彼女は、ぼくから手渡された本を胸に抱いた。本との再会を心から喜んでいるように、ぼくには見えた。
「いやいや、大変だったよ。あんまり読書しないものだから」
 彼女の質疑にぼくは難なく答えていく。
 そうして、ぼくは読解モードから導き出した感想を彼女に淀みなく、まるで歌い上げるかのように話す。彼女は目を細めて時より相槌を打って、ぼくの言葉に対して静かに耳を傾けている。
 そうして、ぼくは彼女から課せられていた「課題」を見事にこなし、また今まで通りの日常へと帰っていく。彼女もまた、込み入った教室の隅で分厚い本に目を落とす日々に戻る。
 なるほど、そういえば古典の世界で、「彼女がぼくに何か強く思うところがあるから、ぼくの夢に彼女の姿が出てくる」という解釈をしていた時代があったらしい。きっと、彼女はぼくに貸し出した本の行方が気になって、ついにはぼくの脳裏に対して直接介入したのではないか、と思われた。
 ああ何と素晴らしき、古き良き古典の世界。
 ぼくは云々と頷いた。
 そういうことであれば、ぼくは彼女に対して接触を試みるのもやぶさかではない、などと不覚にも本気で思った。
「って、なんでそうなるかな……」
 ぼくは頭を抱えた。
 自分で自分に対して突っ込むというのは、非常に寂しいことであるのを知った。

 登校時、下駄箱で彼女を見かけた。
 別に、友人の言葉に従おうだなんて思った訳じゃないし、夢にまで出てきて心が揺さ振られた訳でもない。
 ただ、極めて現実的な問題として、ぼくはそろそろ本を返すきっかけを作らなくてはならないと思っていた。
 本を弄んでいる内に、いつの間にか読破してしまった。大丈夫だ、そのうち彼女が痺れを切らして返却を迫って来てくれるだろうなんて考えている内に、月日があっという間に経ってしまいそうだったからだ。
「伊豆見」
「……何?」
 彼女は整った眉を寄せた。なんでぼくに話しかけられたのかわからない、という顔をしていたが、不意に思い当たったらしい。「ああ」と一言呟いた。
「……おはよう」
「ああ、おはよう」
 ぼくも努めて笑顔で答える。
 そして、がくっと項垂れた。そうじゃないだろう、と突っ込みたい衝動をぐっと堪えた。
 脱力したぼくの行動を理解できないようで、彼女は頭上に疑問符を浮かべて不思議そうな顔をしている。
「いや、この前本貸してくれただろ? そろそろ返そうと思って」
 彼女はぼくの言葉を聞くなり、さっと踵を返した。そして、ぼくを置いて歩き出した。
 一瞬何が起きているのかわからなかった。しかし、次の瞬間にはぼくが置かれた事態を呑み込んで、必死に彼女の後を追った。
 彼女のシャンプーあるいはリンス、もしくはボディーソープ、でなければ香水の香りだろうか、ほのかな芳香に胸が詰まった。幸せを内包した心地よい香りに窒息死しそうになる。
「……ちょ、ちょっと、待って」
 彼女はぼくを顧みることなく、ずんずんと廊下を歩いた。そして、ぼくの歩く速度を考慮することなく階段を上っていく。
「返すって言ってるのに!?」
 教室の四隅で四六時中読書に没頭している華奢な身体の一体どこにこんな力があるのか。普段から自転車通学で鍛えているぼくを置いて、伊豆見は教室の戸を開いた。
「……い、伊豆見ってば! ぼくの話、聞いてる?」
 自分の座席に着くと、彼女はぼくを上目遣いで見上げた。
 息一つ上がっていない。どこかこの世界から隔絶された冷たい雰囲気を彼女は身に纏っていた。
「……期限は設けなかったから」
 彼女は言った。
「気が向いたら、返してもらうから」
 そうぼくに一方的に告げる。
 そして、彼女は鞄から恐らく昨日買ったであろう本を取り出すと、茫然と佇むぼくを尻目に読書を始めた。

 心の中に、当たって砕けた感が漂っていた。
 いっその事、彼女に無理矢理本を返して、伊豆見との関わりの一切合財を清算してしまえば良かったという後悔の念すら浮かんでいた。
 しかし、「気が向いたら」などと言われてしまったら、なんだかその時まで大事に持っていることが借りた者の責務であるような気がして、実際に行動に移すのは憚られた。
 授業中もそんな事を考えていたので、あっという間に昼休みになった。
 つまらない授業の暇を潰せたようであり、貴重な勉強時間を全力でドブに投げ入れた様な気もする。納得がいかない。
 勉強道具を机の中にしまっていると、普段なら声をかけずとも寄ってくる友人の姿がないことに気付く。学食に行っているのか、それとも今日の昼食を抜くつもりなのか、あるいはお手洗いにでも行っているのか。
 ぼくは彼の浮かべていた、人を小馬鹿にする嫌味に満ちた笑顔を脳裏に描いた。
 幻滅した。
 友人でありながら、ぼくの天敵のような気がした。
 まあ、どうでもいい。忘れた頃にやってくるだろう。そう思って屈んで机に下げた鞄から弁当箱を取り出す。
 ふわっと、石鹸のような清潔感のある香りがした。どこかで嗅いだことのあるようなその香りに、表情を緩めながら改めて前に向き直る。
 前方に広がった視界一杯に人が迫り、ぼくは「……うぉう」などと我ながら変な悲鳴を上げてしまった。恥ずかしい。
 目の前には伊豆見左近が佇んで、ぼくを見下ろしていた。
 彼女は首を傾げた。その動作にはどうやらなんでそんなに驚いているの、と訊ねる意味合いが内包されているらしい。
「いや、目の前にいてびっくりした。音もなかったから」
 ぼくは胸の中で弾んだ心臓を、必死に落ち着かせる。驚きのあまり、喉元から臓器を吐き出してしまうんじゃないかと思った。
 彼女は口元を微妙に歪ませた。非常に控え目な微笑に見えなくもないし、非常に控え目な嘲笑のように見えなくもない。
「……痛覚マスキング、ってどう思う?」
 彼女はそう呟くと、ぼくの前の席に何食わぬ顔で座り、弁当箱を広げると昼食を食べ始めた。そのあまりに自然で堂々とした立ち振る舞いに、ぼくは突っ込むに突っ込めなかった。
 口に白いご飯を頬張っている姿は、なんだか小動物めいていて可愛らしい。ぼくも彼女に倣い、弁当箱の蓋を開けた。
「……ああ、貸してくれた『虐殺器官』の奴ね。自分が傷付いていることを明瞭に認識しているのに、『痛い』と実感しないのは……正直、想像できないな」
「……痛みのクオリアを取り除く。ロマンチックな感じがする」
 ぼくはそうかなあ、と大きく叫んだ。心の中で。
 ロマンチックという単語は、痛いという実感遮断に対して用いられる表現ではないと思った。
「痛覚マスキングや戦闘適応感情調整、『意識』の濃淡……。硬派なSFだけれども、示唆に富んでいて面白いと思う」
 ぼくは目を見開いた。
「驚いたな。ぼくはてっきり、きみがわんさか死んでしまう物語が好きなのだとばかり……」
 彼女は笑った。
 ぼくの心の靄が急に晴れる様な気がした。彼女は濫りに死が描かれている理由ではなく、もっと真っ当な理由であの本を読んでいたのだと思うと、なんだかほっとしてしまった。
「……うん、そういうのも『好き』だけど」
「それ、笑って言っちゃいますか……」
 ぼくは彼女をまじまじと見つめる。
 笑みを浮かべて箸を口へ運んでいる彼女は、年相応の女子生徒のように見える。とても人の死がまざまざと描かれた本を、好んで読むような女の子には見えない。
「数多ある人の死に様を見ていると、今自分が『生きている』という事を改めて実感できる気がするから」
 その言葉に、ぼくは梅干しを取り損ねてしまう。
 小さく丸い、赤い梅干しは机を転がると、夕焼けの様に沈んでいった。

 青い空に朱が混じり出した。
 ぼくは普段通り、写真部室に籠っていた。
 ぼくはカメラを構えると、許可なく持ち込んだノートパソコンを置いた机や、先代達が不法投棄よろしく放置していった三脚をカメラに収め始めた。
 その瞬間から、ぼくの意識は「写真」という作品まで一気に還元されてしまったかのような錯覚に囚われた。
 ぼくはファインダーを通して、写真部部室を捉えている。今のぼくの視野は七対三の長方形にまで削ぎ落とされている。左目を瞑った右目だけで、世界を覗き込んでいる。
 しかし、ぼくの意識は右目と右手に集約される。今までの経験と感性に従って、構図を思案しシャッターを切っているはずなのに、ぼくの意識というものは身体から抜け出して、カメラ、あるいは写真というデジタルデータに出張してしまってお留守のような感覚に苛まれていた。
 ぼくはディスプレイに表示される映像を確認する。ぼくが先程まで見た視界と世界が写真データとなって浮かび上がっている。
 ぼくが体験した世界、ぼくが見ていた光が、ぼくというフィルターを通して構成される。
 ぼくは、主体的にシャッターを切っているはずなのに、いつも受動的にシャッターボタンを押している、いや「切らされている」という被害妄想に浸っていた。
 唐突に、戸が叩かれる。
 一瞬、聞き間違えたのではないか、と思った。来訪者のいないはずのこの場所に、誰かが足を踏み入れるなんて、そう簡単には想像できなかった。
 しかし、ぼくは知っている、かつてここを訪れた人のことを。ぼくが扉を開くと、その人が立っていた。
 かつて、顔を合わす事無く本を押し付けただけの少女が戸口に立ち、ぼくに向かってまるで挑むかのように視線を注いでいる。その少女が、伊豆見左近であるのは言うまでもない。
 ぼくは、本を返す事も、本の感想を述べる事ができず、ぼんやりと彼女を見下ろしていた。彼女が本の返却も、本の感想もぼくに対して求めていないのではないか、と思わずにはいられなかった。
 課題であったはずの感想や、借りた者の責務であった返却といった概念が揺さ振られて、ぼくは困惑した。ぼくと彼女を結ぶ唯一の線だったはずなのに、彼女はその履行を促している訳ではないという事実が、ぼくを激しく混乱させる。
 一体、彼女はぼくに何を求めているのだろうか。
「……誰もいないの?」
 ぼくの心の中での混濁をそっちのけで、彼女は言った。その言葉に、ぼくは現実に引き戻されたような気がした。
「あ。ああ、他は名ばかり部員だからね。……事実上、ぼくだけ」
「ふうん」
 彼女は気のない返事をすると、ぴょこんと背伸びをした。ぼくの肩より先に広がる写真部部室を窺っている。猫が自分の縄張りを開拓する時の、好奇心と警戒感を混ぜ合わせた色を大きな瞳から放っている。
「誰もいないなら、入っていい?」
 予想だにしない彼女の言葉に、ぼくは恐慌状態となった。
 その言葉は、本の返却も感想もこちらからする事のなかったぼくに対する一種の皮肉だったのかもしれない。あるいは、猫の様な好奇心の賜物であったのかもしれない。
 本当のことは、友人の言った通り、恐らく彼女自身にしかわからない。もしかしたら、彼女自身、胸に秘めた感情の真意を悟っていないかもしれない。

 ともかく、その日から彼女が部室を訪れるようになった。



 日本の原風景。
 赤い夕陽に低い雲、背後に広がる低い山々の壁。そして、山肌に幾重にも重なった棚田。多くの日本人が、日本の原風景と尋ねられた時に出す回答を、ぼくは知らない。
 ただ、ぼくにとっての原風景は、横浜ランドマークタワーがある景色だ。横浜の大抵の場所からぼくたちを見下ろすこの高層建築物に、ぼくの心が支えられている。
 ぼくはランドマークが建っていない横浜という街のことは知らなかったし、想像すらできない。
「きみにとっての原風景ってある?」
 ぼくは彼女に訊ねる。写真部部室を訪れるようになってからも、彼女は相変わらず部屋で読書に耽る日々を送っている。
「原風景って、人の心の奥にあるっていう情景のことだよね。心理学とか都市空間論の」
「よくご存知で。ぼくはランドマークタワーのある横浜の光景なんだけど、きみは?」
 彼女はその問いについて、深く思案しているようだ。彼女は形良く整った顎に手をやると、可愛らしく唸った。
「……海に浮かぶベイブリッジ」
「なるほど」
 ぼくは感心していた。ぼくの心は、彼女の心とは丁度「地理的に」正反対側を向いていることを指摘されたようだった。
「ランドマークタワー、好きなの?」
 彼女は訊ねた。ぼくは思わず身体を強張らせた。
「うん、まあ……」
 彼女はぼくの固い反応に、目を光らせた。猛禽類を髣髴とさせる、容赦のない眼光だった。ぼくは猫と遭遇してしまった鼠のように身体を震わせた。
「……ふうん。行った事ある?」
「いや」
 ぼくが短い言葉で応じると、彼女は形の整った眉を曲げた。
「好きなのに、行った事ないの?」
「外から眺めるのは良いんだけど。……ほら、ぼく高所恐怖症で。あんな高いところは耐えられそうにないから」
 ぼくは曖昧な笑みを浮かべた。
 自分の弱点をさらけ出す様な真似はしたくなかった、というのが本音だ。
 彼女が微笑ましく思っているのか、それとも薄笑いしているのかわからない両義的な笑みを浮かべている。微笑みと薄笑いは同じようでいて、意味合いが非常に異なるのだが。
「話は戻って。その理由、たとえばベイブリッジが浮かぶのってなんでだと思う?」
「それは……わたしの場合、うちから見える風景だから」
「そっか。確かに普段から日常を構成する風景って、記憶というよりもなんだか魂に刻まれている感じがするよね」
 彼女は笑った。
 普段通りの微笑とも嘲笑ともつかない笑顔に、ぼくの心は土台をぐらぐらと揺さ振られる。たとえその笑顔の意味がぼくをあざ笑っていようとも、ぼくの礎にひびを入れる力がその笑みには宿っていた。
「あのさ。ぼくは何か変な事、言ったかな?」
 ぼくはなんだか不安になって、彼女に訊ねた。
「いや、魂って言ったから。何か信じている宗教でもあるのかなって」
 ぼくは顔を曇らせた。
「いや。ぼくは無宗教だよ」と言いかけて、ぼくは遅ればせながらようやく彼女の真意に思い至った。
「ああ、宗教を信じていない癖に、魂とかそういうものを信じてるのかってきみは思ったのか」
 彼女は頷いた。
「そう言えば、借りた本にも魂について触れている個所があったね。ぼく達は自分の意識や意思を唯一無二で神聖な、ある種の『魂』みたいに崇高なものとして語ろうとするけれど、もし本当に信じている宗教がないなら、ぼくはただの肉の塊で、それを認めなくちゃいけないんだよな」
 ぼくは言い終えてから、肩の荷が下りた様な感じがした。
 ようやく、彼女に感想を伝える事ができたという、実感がそこにはあった。
 本については、彼女と弁当を食べた時に話したのが最初だったけれど、その時は達成感や満足感はなくて、それ故心の中に鈍い重石がのしかかっていたような気分に苛まれていた。
 けれど、その石が今の言葉でなくなったような気分だった。
「わたし達は、ともすれば覚束なくなる現実を前に、信じることでしか世界を肯定できない。それは一種の宗教で、根拠のない確信で満ちている」
 彼女の言葉は、ぼくの心に染み渡っていくような気がした。
 表現し難いひび割れた傷を癒す、潤いのような声と言葉。
「だから、恥ずべき事じゃないと思う」
 ぼくは思わず息を吐き出していた。
「ありがとう」

 部室からの帰り道。
 最近は、二人一緒に下校することが増えた。ぼくは普段ロードレーサーで駆け抜ける通学路を、自転車から降りて彼女のペースに合わせて歩く。
 彼女は後ろ手に鞄を持って、ぼくの前を歩いていく。艶やかな黒髪を揺らしている彼女を見ると、ぼくの心は相反する気分にとらわれる。
 彼女の仕草に和み、心が癒されるようであり、同時に彼女の一挙手一投足に心を掻き乱されるようでもある。
 どっちつかずの感情に、ぼくは戸惑っていた。
 夕日がぼく達を幻想的に照らしている。ぼく等は赤に染まった街をゆっくり歩いていく。南から吹く海風が微かな潮の香りを運んでくる。
「……幸福ってなんだろうね」
 彼女は頭上を見上げた。その顔は、頬を夕日で赤く染めているからか、子どものように無邪気で無垢だ。
「ぼくには、きみがすでに答えがわかっているように見えるんだけど、どう?」
 ぼくが訊ねると、彼女は目を見開いた。想定外のぼくの反応に、心底驚いているようだった。
「そう見える?」
「うん。きみなりの持論があるんじゃない?」
 彼女は歩幅を広げた。途端に、自転車を押すぼくと先を歩く彼女との距離感がぐっと広がった。
『幸福を探し求めることは不幸を生み出す主たる原因である』
 彼女はそう言うと、ぼくに向かって振り返った。
「それは誰かの言葉?」
「うん、エリック・ホッファー。苦労多き湾岸労働者であり、自分の人生体験から哲学を築いた偉人。その功績を時の大統領レーガンに称えられて大統領自由勲章を贈られた」
 彼女はそう言うと、また歩き出す。ぼくは、彼女の背中に声をかけた。
「確かに。幸福のことばっかり考えて込んでしまうと、まるで自分が今不幸であるような錯覚に陥りそうだね」
 彼女は振り向いて、力強く頷いた。
「そうだね。彼は母親との死別の後目が不自由になってしまうの。でも、十五歳の時、奇跡的に目が見えるようになる。彼はそれ以降、また目が見えなくなる前にって、貪欲に本を読み漁った。そんな彼らしい言葉だね」
「……何だか、ホッファーの人生は数奇なものだったんだね」ぼくはしみじみと感慨に耽りながら言った。
『自分自身の幸福とか、将来にとって不可欠なものとかがまったく念頭にないことに気付くと、うれしくなる。いつも感じているのだが、自己にとらわれるのは不健全である』
 彼女は、気取る事無く淡々とした口調で言った。
「これも彼の言葉。このような言葉は、彼の実践的な人生哲学の賜物なのかもしれない」
 ぼくは、赤い光を受けた彼女の表情に見入った。ホッファーの言葉は彼女の魅力を存分に引き出しているように見えた。
「……彼の様に生きることができたら、どんなに幸せなんだろう、って思う」
 彼女はそう言うと、表情を緩めた。
 伊豆見の澄んだ横顔に、ぼくの心が打たれたような気がした。ぼくは思わず明後日の方角へ顔を背けてしまった。

「良い感じじゃんか」
 振り返ると、友人が立っている。
 今日も過酷な自転車登校をしてきたぼくをまるで待ち受けるかのように、彼は自動販売機の前で飲み物片手に佇んでいた。
 その顔には、にやにやと人を小馬鹿にした笑みを浮かべていることは言うまでもない。
「……気を遣ってるつもりなのか?」
「そりゃもう。おれの御蔭でおまえ、幸せなランチタイムを送る事ができてんじゃんか」
「……きみに頼んだ覚えなんてないけどね」
「ったく、素直じゃねえな。人が気を利かして、安いだけが取得の学食で昼食ってるってのに」
 友人は、ぼくをキッと睨みつけてくる。
「大体、今じゃおまえ、彼女を部室に連れ込んでるみたいじゃんか?」
「言っとくけどね、ぼくはきみが考えるような嫌らしいことは一切合財してないからな」
「それは彼女に失礼だろ!」
 不条理だ。何故か怒鳴られた。彼女から非難の言葉を投げかけられるならばともかく、彼に言われる筋合いなんて毛頭ないように思えるのに。
「きみはひょっとして、彼女がぼくに対して、何かそう言うものを求めてるっていうのか?」
「いや。そりゃないかもな、さすがに」
 彼のトーンが急に下がった。ぼくもつられて肩を落とした。
「……散々高く上げておいて、突き落としてくれるなよ」
「何、これも一種のお約束だ」
 彼は破顔一笑と言った感じだった。彼は急に押し黙ると、ぽつりと言った。
「彼女、おまえと話すようになってから、よく笑うようになったんじゃね?」
 ぼくは押し黙った。
 彼女は変わったのだろうか。ぼくが彼女に読んでいた本を訊ねた時から。
 彼女は、ぼくが思っていた伊豆見左近ではなかった。しかし、ぼくが思っていた伊豆見左近よりもずっと、魅力的な少女であるかもしれない。
「案外、良い傾向なんじゃねえの」
「……もうさ、なんとでも言えばいいよ」
「ひゅーひゅー! お二人さん、ラブラブー」
 そう言って、彼は獣の様な吠え声で笑った。自分で言ってウケたのか、腹を抱えて爆笑している。
 なんとも小学生並に低次元である。別に、ぼくは自分が大人であるとは断じて思っていないけれども、彼と相対化できるくらいには思慮分別を弁えていると思う。
「いや、でもさ……」
「ったく、一体なんだよ? うるさい奴め!」
 友人はにっと笑った。いつもの嫌らしい笑みで。
「でも、おまえ等結構幸せそうじゃん?」



「今日は部室に行けない」
 彼女は普段と変わらない調子で言った。それ故、ぼくの反応は一拍遅れた。
 言葉に意味が乗っていない、純粋な空気を揺さ振る波のようだった。
「え、そうなの?」
 ぼくはその事実を、極めて自然に受け止めているように思えた。その声音からは、極めて冷静だった思う。心がざわついているニュアンスを、一切滲ませていなかったはずだ。
 彼女は言った。
「今日はちょっと用事があるから。帰りが遅くなるといけないから、学校が終わったら行こうかなって」
 ぼくに対する詫びも申し訳なさもなく、実に淡々とした口調だった。
 その口調に、ぼくは彼女の真意を一片たりとも見出すことができなかった。
「そう」
 ぼくは彼女に倣って、普段と変わらない声音で話せたことを誇りに思った。

 ぼくは、茫然自失だった。
 彼女が部室に来なかったからではない。ぼくが彼女に対して、実は並々ならぬ感情を抱いているのではないか、という疑惑に対してである。
 確かに、ぼくは不可解であったと言わざるを得ない。
 ぼくは、彼女から無理矢理押し付けられた本を「課題」などと評して軽く扱っていたというのに。ぼくは彼女に対して、アクションを起こさなかった。たとえ本を無理矢理貸されたとしても、感想とともに返却する節操がぼくにはあったはずだ。
 それが、ぼくが今まで貫いてきたコミュニケーション手段であったはずだ。
 今までの流儀も作法も、選択することができなかった。
 それは、ぼくが彼女に本を返し感想を告げることで、彼女との関係が途切れることを恐れたからではないのか。
 ぼくはその事実に思い至ると、居ても立ってもいられなくなった。一人になった部屋で、ぼくは無心にシャッターを切りまくった。
 シャッター音が、まるで笑い声のように部屋の中で空しく木霊した。

 横浜の街並みが赤に染まった帰り道で、彼女を見かけた。
 濃紺のセーラー服に白いタイという学校指定の制服。その目を引く手入れの行き届いた短い黒髪。華奢だが女性的な繊細さを感じさせる後ろ姿。説明するまでもなく、伊豆見左近である。
 用事が終わったのだろうか。
 ぼくはその時、彼女がぼくに愛想を尽かして、彼女が嘘をついて部室に行かなかった恐れを皆目毛頭抱いていなかった。普段のぼくならば、真っ先にその目を覆いたくなる可能性に思い至って、ぼくは声をかけなかったはずだ。
 しかし、ぼくは彼女の後ろ姿を見つけた時、不覚にも思ってしまった。胸に広がるほっとした気の緩みを。
 ぼくは、彼女に声をかけずにはいられなかった。歩道と歩道の継ぎ目で車体を左に切って、ぼくはベルを鳴らした。
 黒い髪が揺れ、彼女の何事にも動じなさそうな瞳が、ぼくの姿を捉えた。
「何?」
「いや、偶々見かけたもんだから。もう用事は済んだの?」
 ぼくはロードレーサーから降り、彼女の前に立った。
 彼女は頷いた。そして、ふと遠くの方を指差した。彼女が指差した方向には、高層マンションが天に向かって伸びていた。
「あそこに住んでる」
「……ああ、高所恐怖症には立ち入れない領域だね」
 彼女は首を傾げた。そして、頷いてみせる。
 ああ、そう言えばあなたは高所恐怖症だったね、と訊ねられている様な感覚だった。ぼくは不承不承、頷いてみせる。
「横浜マリンタワーですっかりトラウマになって。……だから、好きなランドマークタワーにも行けそうもないよ、残念ながら」
 彼女はぼくの話を噛み締めるように頷きながら聞いていたのだが、不意に微かな笑みを浮かべた。
 何故か、背筋が寒くなった。
 彼女は穏やかな笑みを浮かべているというのに、ぼくの肌の周りだけ温度が下がったような気がするのは何故だろう。
「……じゃあ、うちに来る?」

 ぼくは健全な高校生である。
 最近親しくなった異性の同級生からのいきなりのお誘いとなれば、丁重にお断りするのが常識的な判断であると思う。
 まして、彼女の発言は軽い冗談である恐れもあり、それに対して真に受けるのは甚だ恥ずかしい行為だ。むしろ、こちらも冗談で応酬するくらい紳士でなければならない、と日頃自負していたつもりだ。
 何が言いたいかといえば、ぼくに下心というものは毛頭ない、という事である。断じて、「まあ、ちょっと変な人かもしれないけど、可愛いし」などと思ったつもりはない。神と信仰に誓って嘘偽りはない、信じる神も奉ずる宗教もぼくは持たないけれど。
 しかし、高所恐怖症にとって高層マンションは天敵以外の何者でもない。高層階へ直結しているエレベーターに対しては軽い殺意を抱かずにはいられなかった。何が怖いって、外に面する部分は足元まで強化ガラスなのだ。透明なのである。
 そこから望む横浜の風景こそ絶景であり無類であるが、がんがん階数を重ねあっという間に人や車が小さくなっていく過程までを人様に見せ付ける行為は残酷非情以外の何者でもない。このエレベーターを設計した、東芝エレベーターには遺憾の意をたっぷり含めて抗議してやりたい。
 ぼくは唇をぐっと噛み締めて頑なになり、高齢者のために設けられた手摺りに藁にもすがる思いでしがみついた。それでもなお、せめて心だけは精一杯の虚勢を張っているぼくを、彼女は微笑を浮かべながら眺めていた。その笑みの内訳を小一時間程問いただしたい。
 およそ一分三十秒という刹那の時間であったが、目的の階に到着する頃にはどっと疲れが出ていた。「息も絶え絶え」と表されても致し方ない情けない姿を、伊豆見を前に晒す事になった。
「どうぞ」
「じゃあ、お邪魔します」
 玄関を潜ると、青と赤の色に染まる空が迫ってきて心臓が縮んだ。
 なんの事はない。玄関から廊下を通して、居間、そしてその先にあるガラスを隔てた空があるだけである。
 なのに、ぼくは全身の毛穴が開くような気分を味わった。回れ右をしてその場から脱走しようにも、先程の恐怖の直方体が待ち構えている。四面楚歌だ。
 コンピュータよろしく凍り付いていると、伊豆見の母が現れた。きっと伊豆見左近が年齢を重ねれば、こうなるのだろう、と思わせる綺麗な女性だった。大人しそうで慎み深そうな外見は、母子共通する特徴のようだ。親子というよりも、年の離れた姉妹のように見えた。
 ぼくは反射的に急の来訪を侘びた。意識がうまく機能しておらず、その時の記憶は曖昧模糊だった。
 次に通されたのは伊豆見の部屋だった。
 ああ、とうとうぼくも異性の同級生の部屋に足を踏み入れることになるのか、などという夢見がちな感傷と、今後起こるべくして起こるハプニングに胸を躍らせていた自分を、次の瞬間激しく嫌悪した。
 通された部屋が、図書館の閉架書庫を思わせる本棚の群れだった。
 テレビでインタビューを受ける大学教授の研究室みたいな、機能美と合理性を追求し過ぎた結果、殺風景もここに極まる部屋だった。
 伊豆見左近、ぼくの抱いたワクワクを返せ、元本とともに利子をつけて。
「……本当に、本が好きなんだね」
「うん」
 ぼくは精一杯の皮肉を込めて告げたのだが、彼女は褒め言葉として受け取ったらしい。笑みがどこか誇らしげだった、拡大解釈にも程がある。
 ぼくがさらにウィットに富む発言を思案しているうちに、伊豆見は窓際へと行ってしまう。ぼくは顔を顰めた。
 出会ってから現在に至るまで、ぼくは終始伊豆見のペースに呑まれている。釈然としない。
「治療中断とか、臓器摘出、中絶ってどう思う?」
 ぼくは一瞬彼女の言ったことを理解できなかった。しかし、すぐに彼女から押し付けられた本で触れられていたテーマだという事に思い至る。
 だが、ぼくにとっての決定的な敗因は、ぼくはこのテーマに対して回答を持ち合わせていなかった、という事実だ。ぼくは唇をもごもごさせてしまい、言葉を紡ぐことができなかった。
 見苦しいながらも弁明させてもらうとすれば、普段から治療中断だとか、臓器摘出、ひいては脳死、そして中絶に思いを馳せる高校生が一体どこにいるっていうんだ、という至極真っ当な突っ込みだ。恐らく、目の前で眼下に広がる横浜という街を見下ろしている彼女こそが、少なくともその一人ではあろうが。
 彼女はぼくに目を合わすと、笑った。平時と変わらない微笑を向けられてぼくは固まった。彼女の美しさに溜息をつく場面だったと思う。
 しかし、ぼくはその笑みがすぐに回答しなかった、否、回答できないことを開き直っている自分に対する嘲笑なのではないか、と疑わずにはいられなかった。
「何か飲む物、持って来るから」
 彼女はそう言うと、部屋を後にした。
 心の中に秋風が渦を巻いている様な、空しい気分だった。

 恐る恐る、ぼくは窓際に近付いた。
 ぼくは眼下に広がる街並みという現実から目を背けることで、目の前に迫る様々な色のグラデーションとなった空を受け入れることができた。
 ぼくは自分が高層マンションの一室にいるという事実を棚上げすることで、普段肩から提げているカメラを構え、ファインダーを覗き、無神経にもシャッターを切ることができる。
 ぼくは、無心にシャッターを押す傍ら、ある一つの事実に思いを馳せていた。
 彼女に最初に貸し出された『アウシュヴィッツの回教徒』
 そこで証言している人間は皆、ナチスドイツによって捕らえられたユダヤ人や反ナチスの人間であった。彼等は、ナチスの命を受けて、収容されているユダヤ人の誰をガス室送りにするか選ぶ権限や、収容者の観察という職務に就いていた。
 いわば、彼等は被害者でありながら、ナチスの世紀の大虐殺の片棒を担いだ加害者ということになる。だが、それ自体は非常に瑣末な問題であるように思えた。彼等が、収容されていたユダヤ人達を「回教徒」、つまりイスラム教徒と呼び、「死ぬべくして死んだ人間」として無碍に扱ったことに比べれば。
 彼等は口々にナチスの蛮行を非難し、その口で舌も乾かぬうちに「回教徒」達は死を運命付けられた、などとのたまう。
 ぼくは眼下を、下に広がる大地を目にして、「今自分が高所にいるのだ」という事実を見て見ぬ振りをすることで、何食わぬ顔でシャッターを切っている。彼等は、自分の目の前に佇む収容者達を見て、「こいつ等はなんて汚い身なりをして、ゾンビみたいに無感動なんだ。そんな人間を殺したところで良心を痛めることはないな。どうせわたしがやらなくても、誰かが彼等を殺すんだから」などと思って、ガス室送りの書類に署名をする。
 ぼくはふと視線を下げた。霞んだ視線の先に、灰色の地がどこまでも広がっている。ぼくは背筋を擦る恐怖を噛み締めながら、目を逸らさずに眺めた。
「彼等は、顔を上げて空を見上げることができる。彼等は、顔を下げて地面に掘られた穴に打ち捨てられた遺体もまた、見ることができる」
 ぼくははっとして振り向くと、伊豆見がお盆を携えて部屋に入ってきた。
 安っぽい緑色の着色料で満ちた炭酸飲料。メロンソーダであることは一瞥してわかった。
「ハンナ・アーレントは著作『人間の条件』において、戦後の裁判の様子を指して、ナチスの犯した罪はナチス幹部個人単位にまで還元できる、なんて語っていたけど……」
 彼女は盆を置くと、自然な手付きで黒髪をかき上げた。いい香りを振りまく髪は、さらさらと踊った。
「彼女は同じ理論で、収容者達を死に追いやったユダヤ人達個人の罪までは触れなかった。もっとも、それは彼女自身がユダヤ人であったから、価値中立的にナチスとユダヤを見ることができなかった、って言ってしまえばそれまでなんだけど」
 ぼくは口ごもった。
「この本の著者の面白いのは、ナチズムは武力で倒されただけで、論破された訳じゃないっていう意見。そして、ナチ的思想は治療中断、臓器移植、脳死、中絶みたいなあらゆる生命に関わる事項の裏にチラついてるってところ。生きていて良い命とそうでない命を選別する。『生命に値する生命』を峻別する『生命の算術』がそこにあって、わたし達はそれをいつだって『仕方がない』と思っている」
「でも、現に仕方がないんじゃないのか? たとえば、ぼくが脳死になった時、そのまま死ぬよりは、難病に苛まれる人達に臓器を提供したほうが有意義なんじゃないのかな」
「その理論をよもやあなたは、そのまま脳死になってしまった患者の家族に言えるの?」
 奥さん、旦那様は脳死状態です。そのまま無意味な生命活動を続けるのはご家族の方々のためにもなりませんし、病院の医療リソースは限られております。直る見込みのない患者に時間と金を費やすのは経済的にも非合理的だとは思いませんか。どうか、他の難病の方々に臓器を譲ってはいかがでしょう。きっと、旦那様もそれをお望みだと思いますよ。
「あなたがドナーカードなり、『生前』の意思表示でそうするのはどうぞご勝手に……だけど、もしあなたの命が本当に『あなた』のものなら、『有意義』だとか『仕方がない』だとか、そういう発想は生まれないと思う」
 彼女はグラスの片方を取ると、口をつけた。
「ウィトゲンシュタインの『言語ゲーム』だよ。『人間』と『人間でないもの』を分ける明確な境界線なんてものは、本当はどこにもないんだよ。客観的な根拠によって成り立ってない。ただ、決めつけられた様式というルールに従っているだけ。一体、誰が、その区別を、『生命に値する生命』だなんて選別することができるの。『生命の算術』なんて本当は嘘っぱち」
 ぼくは、彼女の言葉に耳を傾けるので精一杯だった。ただ、彼女に圧倒されていた。
「費用対効果とか、多数決とか、民主主義とか、自衛的戦争だとか、緊急避難や正当防衛だとか、もっともらしい概念で装飾しても、その裏には生々しい死体が転がっていることを忘れたがっているんだと思う。そうやって自身の罪を容易に他に転嫁するくせに、自分が死体となって転がることは断じて受け入れられないし、死体になった時に自分の死を『仕方がなかった』なんて言葉で清算されたくない、なんて身勝手にも思ってる」
 ぼくは結局何も言えずにメロンソーダを眺めた。緑色の水面が爆ぜて、空気中に炭酸ガスを放出している。ぼくの代わりに、声にならない叫びを上げている。
「でも、人間ってそんなものじゃないか。確かにご指摘の通り、ぼくは我が身が可愛いし、ついつい自分を他者と相対化してしまうきらいがある。きみのいう事は、実にごもっともだ。反論もタムロンもございませんが、皆口では耳当たりの良いことを言って、とても愛に満ち満ちているけれど……その実、裏では『仕方がない』って本気で思ってる。それは一種の真理なんじゃないの?」
「うん、そうだね」
 彼女は笑った。ぼくは狼狽した。予期された反撃がなかったことに、ぼくは目を白黒させた。
「そうだねって、何? ……他に何か言う事はない訳?」
「いいえ。多分、そうやって世界は回っていると思う。人間は自らの罪をニーチェ曰く『わたしがそう欲した』だなんて捉えられる程には……強度がない。『仕方が無かった』という一言に集約して清算を済ます。それこそ、タッチ・アンド・ゴーで」
 ぼくは押し黙ってしまった。
 その発言は卑怯だと思った。開き直る、という禁じ手を使われた気分だった。
「ところで」
 押し黙っているぼくに彼女は訊いた。
 彼女は姿勢を正したので、ぼくも反射的に身構えた。
「……タムロンってなに?」

 ぼくは極めて普段通りに、父親不在の食卓で極めて健康的な食事を胃袋へ送ると、早々部屋に引き篭もった。
 机の上には、彼女から借りた本が並んで置かれている。ぼくは、机の上に置かれている本を取ると、胸へぎゅっと押し付けた。まるで彼女がいつも本を運ぶ時、そうするみたいに。
 ぼくは彼女の開き直りを、卑怯だと思った。
 しかし、それは嘘だ。
 ぼくは、本当は彼女に否定して欲しかったのだと思う。
 きっと彼女は、ぼくがやむにやまれぬ『仕方のない』事情で死ぬとしても、皆がぼくの死を公然の事の様に受け止めたとしても、彼女だけは声を大にして平気な面をしている奴等を非難してくれるのではないか。
 そう思うと、心が和んだ。
 彼女は、多くの人の死を相対化する一方で、死を自身の死と重ね合わせることができる。

 それは、ぼくにとって、この上ない救いである気がした。



 かつて父は、ぼくに言った。
 学生はいい、好きなだけ自分の好きな勉強ができる、と。
 だが、ぼくの見解は違う。ぼくにとって勉強は、父やその他大勢の社会人達に課せられた仕事だった。
 勤め人は利益を出さねばならないし、こなさなくてはならないノルマがある。それはぼくとて同じだ。ぼくは両親から同級生よりも良い好成績を期待されていて、二ヶ月に一度行われる大手予備校――それは河合塾であったり駿台予備校だったり、東進ハイスクールだったりする――の模擬試験を受ける。
 両親から、親族から、学校から、あるいは社会から、ぼく達は有形無形の期待と共に見返りを求められている。莫大な経済的、社会的、あるいは時間的なリソースが投下された教育に対して、成果や効果を求められる。
 ぼく等は、日々そんな重圧に曝されている。いつ被爆して心身に重大な異常を来たすか、わかったもんじゃない。
 そんな時、ぼくは写真部部室に篭って、伊豆見から借り受けたハードカバーと文庫本を読む。ぼくと彼女との数奇な交流は、不思議と途絶えることなく続いている。
 ふと、初めて彼女の家を訪ねた時の事を思い出した。彼女と取り留めのない話をした後、頃合を見計らって帰る事にした。
 下まで見送ると表明した伊豆見の提言を、謹んでお断りして部屋でさよならの挨拶を交わした。部屋の戸を閉めると、伊豆見の母がやってきて玄関前まで見送ってくれた。
「あの子、変わってるでしょう?」
 ぼくは首を左右に振ろうとして、やめた。「ええ」とか「はい」とか、そんな曖昧な言葉を返すと、伊豆見の母は顔を綻ばせた。
「でも、お似合いよ。あなた達」
 そう言って綺麗な微笑を浮かべる姿は、娘そっくりであった。
 彼女がエレベーターで見せた、人が怖がっているのを尻目に面白がっていたあの笑みに。

「……赤いね」
「ああ」
 ぼく達は、立ち入り禁止の校舎の屋上で西に沈む夕日にさよならをする。
 秋も深まり、夜が来るのが大分早くなった。赤い空を赤トンボが二匹、抱き合いながら飛んで行く。
「朝日と夕日、どっちが好き?」
「夕日」
 ぼくは即答した。彼女は頷いて見せる。
 彼女はぼくにその理由を訊ねなかった。もしかしたら、彼女はその答えに思い至っていたのかもしれない。
 今は紅に染まった海から潮風が強く吹き付けて、彼女の髪を弄んでいる。頬をなぶる風がひんやりと冷たい。
「この夕日の赤が好きだ。白一色の雲、青一色の快晴、黒一色の夜。でも、ぼくは、赤一色に染まるこの夕日が好きだ」
 それと、一日が終わる目途がついたことを告げる赤い報せが。
「ねえ、この胸を一杯にする赤い感触って、なんていうのかな?」
 ぼくは胸中を満たすこの赤に思わず感慨深くなって、目を細めた。
「クオリア」
 澄み切った言葉が聞こえた。
「クオリアって言うの」
 彼女は答えると、自分の黒い髪を押さえた。秋風は彼女と戯れ過ぎだ。彼女の髪の優しい香りがぼくの脈拍数を上げる。
「『わたし』だけが感じることのできる、主体的体験。世界に対する知覚。イメージという感触それ自体。楽しさや苦しみを感じる『わたし』という意識がそこには確かにある、証拠……なのかな。そこまで言えるかは、ちょっとよくわからない」
 彼女ははにかんでいる。ぼくもつられて笑った。
「きみにも、わからない事があるんだな」
 彼女は唇を尖らせた。わたしにだって、わからない事くらいある、と言っているような気がした。
「というのも、意識的な選択の前に潜在意識の活動がすでに行なわれていて、潜在意識が意識的な選択を決定しているから。神経生理学者リベットの実験を踏襲したドイツのヘインズ博士の研究によると、意識による判断の七秒前に、脳がすでに判断を下しているんだって」
「じゃあ、ぼく達が普段から唱えている理性だとか合理性とかいう言葉は、単なる後付けってことだよね。そして、『わたし』という意識の意味は、かなり個人的な意味に還元されてしまうんじゃない? 自分だけが有する体験で、それは他の第三者から見れば、実に『どうでもいい』問題にまで要約されてしまう訳で」
「御明察」
 そこで、彼女は目を曇らせた。
 笑っているようでいて、泣こうとしている様な表情だった。
「……話は変わるけど。ホッファーの事、覚えてる?」
 声音自体は先程と変わらない。ただ、目が笑っていない。寂しげに潤んでいた。
「ああ。幸福と自己を語った、最強の湾岸労働者だね」
「彼はドイツ系アメリカ人だった。彼が生きた時代、丁度ドイツは全体主義の嵐だった」
 ぼくは彼女の横顔を眺めた。
 彼女は夕日を親の敵のように睨みつけている。
「彼は『魂の錬金術』でこう綴ってる。『人間とは、まったく魅力的な被造物である。そして、恥辱や弱さをプライドや信仰に転化する。打ちひしがれた魂の錬金術ほど魅力的なものはない』」
「恥辱や弱さを自尊心や信仰にすり替える事が、魂の錬金術ってこと?」
「ううん。彼は自尊心とプライドを全く別の意味合いで使ってる。『自尊心に支えられているときだけ、個人は精神の均衡をたもちうる。……何かの理由で自尊心が得られないとき、自律的な人間は爆発性の高い存在となる。彼は将来性のない自分に背を向け、プライド、つまり自尊心の爆発性代替物の追求に乗り出す』。彼にとってプライドは代替的な自尊心でしかないし、そのプライドは狂気に満ちているの」
 彼女は顔を上げた。
 血に濁った空を、物憂げな瞳で見つめている。
「真に『持てる者』とは自由や自信、そして富さえも、他人から奪わずに獲得できる人たちのことである。彼らは自らの潜在能力を開発し適用することで、これらすべてを獲得する。これに対して、真の『持たざる者』とは、他人から奪わなければ何も得ることができない人たちである。彼らは他人から自由を奪うことによって自由を感じ、他人に恐怖心と依存心を植えつけることによって自信を深め、他人を貧しくすることによって裕福になる」
「まさに、アウシュヴィッツで描かれていた『生命の算術』を彷彿とさせるね」
「ねえ、罪は一体どこにあるのかな。今はナチスに全てが集約されている血塗られた負債は、民主主義によって、彼らを支持した民衆にまで還元されるんじゃないのかな。あの時代、ワイマール憲法という史上最高の民主主義があった、あの国は」
 最高の民主主義。ナチスは民意を受けて政治の舞台に立ち、七面倒くさい法律を可決して、「合法的に」国民の主権を取り上げ、ユダヤ人を「合法的に」ガス室送りにした。
「……ひょっとして、罪は継承されるのかい?」
「それはわからない。個人間においては継承されるべきじゃなけれど。国家という主体の連続性や一貫性を考えると、簡単に清められるものじゃないと思う。ううん、……わたしにはちょっと、わからない」
 彼女はぼくに向かい合った。
 瞳が燃える夕日の光に照らされて、赤く輝いている。
「ドイツの哲学者、アドルノは言った。『アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である』。彼は、ショアーという大罪の後で詩を謳い上げることのできる神経の持ち主を非難した」
 ぼくは言葉を失った。
 ぼくは今、ここで跪いて許しを請いたい衝動に駆られた。
 ぼくはかつて彼女の部屋で、彼女に向かって「仕方がない」と言った。
 それは世界の現実ありながら、彼女にとって最も残酷で無神経だった。たとえ、古今東西に渡って、人の命が路頭の石のように無碍に扱われ続けたとしても。彼女は『生命に値する生命』だとか『生命の算術』がある現実を受け止めていながら、それを唱えることを拒んでいた。
 それは、とても『野蛮』だからだ。無神経だからだ。
 現実を自分の好き勝手に還元する世界で、彼女は無神経を直視している。それを責務だとか気取った傲慢と無知で評さず、ただ「好き」という個人的な焦点だけで照らす。
「……きみは、強いんだね」
 ぼくは彼女を見つめた。
 彼女の瞳に宿る、赤い闘志に敬意を表して。



 ぼくの流儀は迎撃だ。
 なんて言っておきながら、初めての彼女との会話はぼくからだった。
 ぼくはその意味について深く考えなければならない。
 ぼくは今まで努めてその像に焦点を合わすことはしなかった。

「写真が好きなの?」
 ある日、彼女は写真部部室に訪れるなり、ぼくに訊ねた。ぼくがいつも肩から提げたデジタル一眼レフを、彼女は指差した。
「……あのさ、他にどう見えてたの?」
「別に」
 恐らく彼女に他意はない。
 しかし、その慎ましやかな笑みは嘲笑と捉えられても弁明はできない凶悪さを滲ませている。彼女は写真小僧である僕のことを微笑ましく思っている様にも見えたし、写真小僧である僕のことをあざけ笑っているようにも見えた。
「一人で撮ってて、寂しくないの?」
 ぼくは顔を顰めた。
 普段教室の隅で、背を丸めて本を貪る超消極的かつ奥手な女子に言われる筋合いは毛頭ないはずだ。なのに、彼女にそれを指摘されること自体がすでに悲壮感が漂っていて寂しい。
「ひょっとして、寂しく見えるの?」
 彼女は頷いた。ぼくは崩れた。
「霧のように霞んでいて、足元が覚束ない感じがする」
 酷い言い様である。
 まるでぼくが周囲に上手く溶け込めず、輪郭を失った虚像で、傍で見ていて痛々しい彷徨う亡霊であるかのように表してくれる。
 しかも彼女は、真顔で言ってくれる。本当に情け容赦がなく、手加減を知らない。
「あなたは、表現に苦しむけど……捉えられない。蜃気楼みたいに、歪んだ輪郭の虚像しか見えなくて、本物の像はここではないもっと先に、立っているような気がする」
 ぼくはこくこくと頷いてみせる。そして努めて平静を装って言った。
「……それってきみの事だと思うな、ぼくは」
 彼女はきょとんとした。生まれて初めてクリオネを見た感慨に耽っているように見えた。

 ぼくが三脚の購入費を貯めようと学校には内緒で勤労に励んでいると、狙い済ましたかのように友人が現れた。
 その顔は未知との遭遇に上手く感情を表すことができない、と言わんばかりの引きつった笑みだ。その顔が、彼が普段から浮かべている表情である。
「よお、今日も張り切ってんね」
 相変わらず、彼は嫌らしいまでに元気である。
「きみも物好きだな。カメラに全然興味ないくせに」
「おれはカメラなんざ興味ねえ。だけど、おまえに興味深々だ」
 そう言って、にたにたと嫌らしい笑みを浮かべてみせる。気色悪いにも程があるが、今後の良好な人間関係のために、黙っておく思慮がぼくにはあった。
「で、伊豆見との仲は進展したのかよ?」
「……進展も何も。ぼく達はそういう仲じゃない」
 何故かその言葉に、極めて苦々しい空気が混じっているのが自分自身でもわかってしまった。
「はいはい、お互い素直じゃないねえ。おまえにはぜーんぜん興味はありませんって済ました顔しちゃってさ」
 背中に突き刺さる雇用主の視線に応えて、ぼくは粛々と仕事を始める。
 友人は不満そうに頬を膨らませると、店内の年代を重ねすぎてしまいもはや動作補償を行えない「ジャンク」と呼ばれる代物を珍しがって眺めている。
 ぼくは友人の存在を努めて忘れ、カメラの修理依頼の伝票をパソコンに打ち込む作業に没頭した。
 そうしなければ、場が持たないと思った。
「おい、店員」
「……なんだよ、お客様」
 友人が訊ねてくるので、ぼくは苛立たしさで棘々した言葉を返す。
「随分と口の悪い店員だな、おい。このデジカメプリントは、ひょっとするとお前さんが撮ったりしたの?」
 彼は店頭に並んだ現像見本を指差している。通り沿いから見えるようになった場所に、デジタルデータを現像するとこうなりますよ、という写真の見本を掲示している。
 彼はその中で、沈む夕日を写した写真を指差している。
 国際客船ターミナルから撮影したみなとみらいの高層ビル群が、写真の中でしっかりと屹立している。全体的に緑色がかった写真の中で、太陽が黄緑色に光っている。
「ああ、そうですけど。……それがどうしたでございますか、お客様」
「いや、なんか色おかしくね? なんかすげー緑色なんだけど」
「そういう技法だよ。トーンブレイクって言うんだ」
「大したもんだな」
 雇用主が額に血管を浮き上がらせて重たい腰を上げたところで、友人は「おまえには、太陽が緑に見えるのか」などとのたまいながら、素早く身を翻した。
 ぼくより二〇歳は年上の雇用主は、ぷりぷりと怒った。その姿は酷く滑稽だった。

「作家の中には、ひどく一人称の形式にこだわる人がいるけど、どうしてだと思う?」
 写真部部室にて、伊豆見はぼくに訊ねた。
「わたしは、三人称を用いて多くの人達の見地から世界観を描いた方が読者に伝わりやすいと思うんだけど。……あんまり深い意味はない、わたしの個人的な好みだけど」
「なるほど。でも、ぼくは一人称にこだわる人の理由、凄いわかる」
 伊豆見は首を傾げてみせる。
 その仕草に心を和ませながら、ぼくは肩から吊り下げていたカメラを片手で持つと、天井へ向けた。そして、ファインダーを覗かず、焦点を合わせる事なく、シャッターボタンを押し切った。
「三人称ってこういう事だと思う」
 そういって、ぼくは彼女にカメラを差し出した。
 ディスプレイに映し出されたのは、曖昧模糊の灰色の空間と、そこを走る白い光の線。
 伊豆見がその詳細を求めたので、ぼくは滔々と語り始めた。
 一人称とは、カメラで言えばファインダー越しに世界を捉えること。「わたし」や「ぼく」、「おれ」、自分を指す一人称自体はどれでも構わないけれど、そこには「わたし」という人間が確かに存在して、カメラを構えている。その「わたし」がプリズムを通して投影される像に対してシャッターを切る。そうやって、写真を撮影する。それが、小説でいう物語になる。
 そして、三人称は、複数の撮影者が存在する。彼等は各々の哲学に従って、作品を作って読者に提示していく。一人称では描き切れない死角でさえも無理矢理撮影して、世界を表現してしまう。
「でも、世界を還元すれば、個人がいて、『わたし』という主体になると思う。ぼくらにとって、描き切れない死角は、認知の限界というか、『わたし』という撮影主体からはどう頑張っても覗く事ができない壁みたなものがあることを、暗示してるんじゃないかなって、思うんだけど」
 ぼくは彼女に話しているうちに、段々と恥ずかしくなってきた。
 自分の気持ちを上手く表現できないもどかしさに、胸をかきむしりたくなる衝動を必死に堪えた。
「つまり、写真の世界では自分がカメラを通して見ている世界でしか、写真として表現できない。それと同じように、一人称を信奉する作家は、自らの目を通して描かれる文章以外に、物語として表現できない暗黙の限界がある、と考えている?」
「うん、多分そういうことだと思う」
 正直な話、彼女のまとめが、ぼくが本当に言いたかったことなのか、と訊ねられれば「違うかもしれない」などと無責任なことを言ってしまうかもしれない。
 心に漂う、表現に苦慮するもどかしい思い。
 彼女に訊ねられた時、ぼくが撮影した天井の写真だけが、端的にその思いを克明に描写していたのかもしれない。

 あなたの撮った写真が見たい。
 伊豆見の唐突な言葉に、ぼくは喜びを禁じ得ない。ぼくは普段写真をデジタル形式でしか保存していなかったけど、彼女の期待に応えたいと思った。
 ぼくは月面歩行をするような軽い足取りでその日のうちに写真屋へと向かうと、これはと思う自信作を片っ端からプリントした。
 それ故、万単位の巨額の出費となってしまったことは大いに悔やまれるものの、これも彼女たっての願いである。
 もはや、無碍に扱うことはできなかった。
 普段アルバイトをしている写真店でプリントしてもらった写真は、どれも輝きを放っている様に思えた。雇い主は、普段プリントなんてしないぼくが急に多くの写真データを持ち込んだことを怪訝な顔をして見ていた。
 ぼくは、念入りに写真を確認した。
 その中の一枚、県立図書館の脇にある森林の紅葉が目に留まった。
 赤や、とりわけ鮮やかに輝く黄色が目につく光景は、彼女の瞳に一体どのように写るのだろうか。大多数の黄色に囲まれて肩身の狭い赤を見て、彼女と共に眺めた夕日の姿が目に浮かんだ。
 クオリア、意識、脳、ホッファー、アドルノ。
 様々な単語が現実感を帯びて脳裏を飛び回った。彼女が紡ぐ言葉。
 潤む瞳。赤く輝く瞳。揺れる瞳。
「一緒に、行ければな……」
 ぼくは呟いていた。たっぷり七秒遅れて、ぼくが今何を言ったか思い至って、一人顔を赤くした。
 しかし、その言葉を店の奥に引っ込んでいたはずの雇い主が聞き逃すはずもなく、合点がいったと言わんばかりの満足そうな顔をしていて、尚更ぼくは赤くなった。まるで、二人で眺めた、深紅に燃える夕日の様に。
 ぼくが帰路につく頃には、すっかり冷たい風が横浜の街を闊歩していた。黒一色に沈む横浜の夜の中で、ランドマークタワーを始めとする高層建築物が白い光を放っている。
 夜風がまるで一人熱くなるぼくを、ムキになって冷やしてくれているようだった。

 彼女は普段通り、部室に訪れた。
 彼女は、ぼくの写真を一枚一枚味わうようにして眺めた。伊豆見の姿を見ていると、ぼくはむず痒い気分になった。
 自分の胸の中を覗かれているような、羞恥に焼かれるような感覚を味わって、すぐにでも彼女から写真を取り上げてしまいたい衝動に駆られた。彼女に感性という、決定的な弱みを握られたという被害妄想に苦しんだ。
 その一方で、彼女の顔に浮かぶ微かな笑みを目にすると、恥じ入る気持ちと共に、ぼくの渾身の作品に対する初めての評価者を得たことに、誇らしく思うのだった。
 赤面しつつも胸一杯、という相反する気持ちに板挟みになりながら、ぼくは彼女を手に汗握る思いで眺めていた。
「凄い繊細」
 それが、ぼくの作品に対する彼女の感想である。
 それが、ぼくの作品に対する彼女のたった一つの感想であり、彼女はそれ以外何も言わずに写真を返した。
 彼女は、先に一人で帰った。

 ぼくは、呼び止めることも出来ず、一人部室で佇むことしかできなかった。

 疲労困憊。
 心身ともに打ちひしがれながら、ぼくはロードレーサーを押していた。
 今は自転車に乗る気分じゃない。一度自転車に乗れば、赤信号であろうともノンブレーキで走破する恐れがあった。人間いついかなる時であろうと、自暴自棄になってはいけない。そのはずだ。
 ぼくは彼女に期待をしていた。その事実がぼくを激しく、徹底的に打ちのめした。
 彼女から浴びるような賛辞を受け、「次も見せて」などという甘い言葉を無意識にでも欲していたという打算と、彼女がそれを与えなかったという事実を前に、ぼくは風前の灯といった趣だった。
 自然と足取りが重くなった。
 周囲を見渡せば、紅葉坂に達していた。ぼくの家とは反対方向だったが、ぼくは黙々と歩いた。胸の中を渦巻く激しい情緒が、ぼくの心をこれでもかと揺さ振っていた。
 ぼくはその揺さ振りが、あたかもなかったかのように振舞おうとしていた。
 普段は慣れっこな坂も、今日は堪えた。
 赤く燃える空も、沈む夕日も、背後に広がる海も、山稜に並ぶ木々も皆、寄って集ってぼくを指差して笑っているような気がした。
 すっかり肌寒くなった風が木々を揺らし、ぼくの耳元で囁いてくる。
「……残念だったね」木々がひそひそと呟く。
「恥ずかしい奴!」
「まったく、可哀想な勘違い坊や」
「自意識過剰、自意識過剰」
 そして、風がとどめとばかりに、はっきりとぼくに告げた。
「……彼女はきみに何かを欲した訳じゃなかったんだよ」
 ぼくは慟哭した。
 坂を下る人々が一斉にぼくへと視線をよこしても、ぼくは叫び続けた。心の底から、苛立ちと絶望をぶちまけたつもりだった。
 次第にいたたまれなくなり、ぼくは右折して県立図書館へ落ち延びるように飛び込んだ。入り口には目もくれず、山際に設けられたベンチに沈み込むように座った。
 そのまま、硬いコンクリートのベンチと同化してしまいたい気分だった。今からベンチの横にでも穴を掘って、その中に引き篭もろうか、とも思った。
 目の前に広がる紅葉した木々を眺めながら、何も考えないよう努めた。
 しかし、秋の深まりと共に赤みを増した葉を見ると、頬を真っ赤にした自分の姿がよぎった。
 ぼくは身体を力の限り振って、惨めな自分の姿を必死に脳裏から追い出そうとした。大仰に動いてしまったので、肘が自転車のハンドルに当たってしまい、カーボンでできた繊細なロードレーサーの車体は傍迷惑な金属音を立てながらアスファルトの上に倒れてしまった。ハンドルに引っ掛けていた鞄もひっくり返り、大きな口から紙吹雪を吐き出した。
 大枚叩いて現像した写真が、秋風に乗って周囲を泳ぎ始めた。泣きっ面に蜂だった。アナフィラキシーショックで死に至りかねない深刻な痛みを伴った。これ以上ぼくを刺したところで、一体何がどうなるっていうんだ。情け容赦ない世界に殺されてしまう。
 ぼくは写真を回収するのを忘れてカメラを構えると、シャッターを押した。
 カメラを持って、自分の身体から意識を追い出してやりたかった。だが、ぼくは今までの経験と感性に従って構図を取る事なく、ただ闇雲にシャッターボタンを押していた。やけっぱちだった、と言っても良いかもしれない。
 背後に広がる紅葉の上から写真や紙飾りで装飾したような、どこか幻想的な写真ができた。
 ディスプレイで出来上がった写真に目を落としていると、不意に紅葉が現れた。宙を舞っていた写真が、ぼくの視界に滑り込んできたのだ。
 一年前、この場所で撮った紅葉の写真。
 眼下の情景と比べて、黄色い葉が多い。今年は寒暖の差が激しかったからか、などと思いながらぼくは写真を手に取り、しげしげと今の風景と見比べる。
「一緒に、来たかったな……」
 ぼくは目を瞑った。
 網膜に焼き付いた写真の黄色が、脳裏にぼんやりと浮かんできた。

 木々が唐突にざわめいた。
 目の前の紅葉が激しく揺れ始めた。赤く燃える木々が左右に割れると、そこから端正な少女の顔が現れた。
「……奇遇だね」
 少女はぼくを見ると、慎ましい笑みを浮かべた。嘲笑と捉えられなくもない笑顔。
 伊豆見その人だった。
 ぼくは、状況の推移をうまく把握することができずに、ただ彼女に向かって間抜け面を晒す事しかできなかった。

 紅葉の中を問答無用に突っ切ってきたからか、彼女の髪に赤い葉がくっついている。虫食いのない、炎のように赤く色付いた葉は陳腐なたとえに恥ずかしくなるけれども、まるで髪飾りのようだ。
 ぼくは思わず手を伸ばすと、彼女はその意図に気づいたのか、白い手を頭にやった。それ故、ぼくの手は図らずも彼女に触れてしまった。
 冷たい秋風に吹かれたからか、ひんやりと冷たかった。
「……あ、ごめん」
 彼女は首を左右に振った。
 自分の髪についていた葉を観察するように眺めた。
「本当は黄色い葉が見たかった、かな」
 ぼくはどうして、などという問いを発する愚を犯さなかった。
 彼女があの黄色く色付く木々の写真を眺めた後、この場所にいた。
 その事実だけで、ぼくの心は酷く和らいだ。

 肩を並べて家路に着く。
 隣にいるのが伊豆見だと、心がざわめいた。
 ぼくはあまり意識するもんじゃない、などと心の中で声高に叫ぶのだが、身体はちらちらと横にいる伊豆見の方へ動いてしまう。誠に正直な身体である。誠に遺憾である。謝罪を要求したい。
 彼女は、先程鞄が放射した写真を抱えている。彼女は何も言わずに、周囲に撒き散らされた写真を一枚一枚優しい手付きで回収すると、胸に抱いた。その姿を眺めているうちに、彼女から写真を受け取る機会を逸してしまった。
 特に会話をすることなく、黙々と歩いた。
 京浜東北線や横浜線、首都高速道路などの高架下をくぐり臨海部へ出ると、浜風がぼく達を出迎えてくれた。みなとみらいのビル街は光で着飾って、夕日が差し込む街並みの中で輝いている。
 そのまま真っ直ぐ帰るのかと思ったが、彼女は自身の住む高層マンションに背を向けた。ぼくは怪訝に思いながらも、彼女に倣った。
「わたし達は、『わたし』というファインダー越しにしか世界を捉える事ができない」
 伊豆見は不意に呟いた。
「カメラにたとえる、って面白い」
 伊豆見は笑った。
 目を細めて、その姿は非常に穏やかに見えた。そんな彼女を見ると、ぼくの胸も朗らかな気分で満たされる。力が入って頑なになった肩が、ふっと柔らかくなる。
 臨海部に沿って整備された公園を、海上保安庁や停泊している巡視船の横を、横浜開港当時の歴史を今に伝える赤レンガ倉庫を、洒落た塔を備えた横浜税関を、のんびりとした時間が流れている象の鼻公園を、ぼくらは尻目に黙々と歩いた。その沈黙は酷く心地良かった。
 次に彼女が口を開くタイミングが、ぼくにはわかっていたからだ。そこに着くまではお互い喋らない事が、暗黙の了解になっていた。
 ぼく達は、国際旅客船ターミナルの屋上部でようやく歩みを止めた。
 芝生が敷き詰められているターミナルの屋根は、一般に開放されている。休日ともなれば、観光客や家族連れ、そして男女で賑わう名所である。そこから望むみなとみらいやベイブリッジの風景は高い評価を受けている。
「あなたには、緑がかって見えるの?」
 そう言って、彼女は写真を掲げた。
 周辺の光量が落ち、四隅が黒く瞑れた写真。その中心にはみなとみらいのビル群が緑色に写し出されている。その輪郭は覚束なく、ピンボケ一歩手前、といった趣だ。
 かつて、ここで撮った写真。トイカメラの味を再現しようとして撮った写真。
「いや、赤一色に見えたよ。丁度今日みたいに、夕日に照らされて」
「……あなたの捉えた、緑がかった世界」
 彼女はぼそりと呟いた。
「でも、緑と灰色と黒だけの世界でも、わたしはこの写真に『赤』を見出せるような気がする」
 彼女は言った、気のない風を装って。
「この写真、貰ってもいい?」



 ぼくは、彼女の読んでいた本に興味があった訳じゃない事を、ここに来てようやく認めなくてはならなくなった。
 ぼくは、彼女に初めて会った時から、彼女の姿を写真に収めたかった。
 それは、混沌とする世界という現実から、彼女だけをぼくの世界へ切り取りたいという願望であり……。
 端的に言えば、告白以外の何物でもなかった。

 普段ロードレーサーで駆け抜ける景色を、ぼくは今歩いて眺めている。
 どこか色褪せていた日常の風景が、今は彩度をもってぼくを出迎えてくれる。鮮やかな世界が、ぼくの周りをぐるっと取り囲んで放さない。
「遅いんじゃねえの?」
 振り向くと、友人がいた。
 いつも偶然を装って、そこに佇んでいる友人は今日も変わらず嫌らしい。
「ずっと、待ってたんじゃねえの?」
 友人はそう言って、ぼくの鞄を指差す。
 どうして彼はぼくの鞄の中身が、彼女から借りた本であるとわかったのだろうか。しかし、すぐにその問いが酷く自明であることに気が付いた。
 岡目八目。むしろ傍観者の彼の方が、ぼく等の事をよく理解していたのかもしれない。彼は、他人の事はおろか、自分のことでさえ理解できない、などと言っていたが。
「いよいよみてえだな」
「……ああ、ぼくもようやく決心がいったよ」
 ぼくは観念したように手を掲げてみせる。
 降伏、あるいは降参。どちらにしても、ぼくはこの時ばかりは、自身の「負け」を素直に認めざるを得ない。彼は清々しく笑い飛ばした。
「まあ、精々頑張れよ」
 彼はぼくの肩に手を置いた。
「もっとも、おれにはおまえの未来の姿が、なんとなく目に浮かぶけどな」
 そう言うと、彼はぼくの肩を手加減する事なく力一杯叩いた。

「借りていた本、返すよ」
 本棚が所狭しと乱立した、機能美に富んだ彼女の部屋。
 机の上に置かれた大きなフォトボードには、ぼくが彼女に差し上げた写真がこれでもかと貼り付けられている。写真小僧冥利に尽きる光景だった。
 ぼくは鞄から二冊の本を取り出すと、床に並べた。
 彼女は眉を顰めた。
「……別にいいよ、返さなくても」
 彼女は困惑したようだった。
 不満そうに唇を尖らせている顔は、子どもっぽくて非常に愛嬌で溢れている。
 視線を泳がせる彼女を、ぼくは始めて見た様な気がする。ぼくの前では、いつも彼女は笑っている時でさえ、どこか超然とした態度を崩すことがなかった。
 ぼくは思った、この本の意味を。
 それは、ぼくの素直じゃない想いを「何読んでるの」と訊ねた時のように、彼女もまたこの本を通じて、ぼくとの繋がりを見出していたのではないか、ということだ。
 ぼく達はお互い、随分と遠回しな感情表現を続けていた。
 ぼくは、息を吐いた。
 覚悟を決めた。だから、ぼくは彼女に伝えねばならない言葉がある。
 ああ、恥ずかしいな。できれば言いたくないな。という気持ちをぐっと押さえ込んだ。いやはや、こういった言葉は紳士たる男子から言わねばならんのだ、という自分でもよくわからない意地で、精一杯の虚勢を張った。
「ぼくときみとの関係は、この本の貸し借りだけじゃないって、思うから」
 それは、ぼくなりの渾身の所信表明だった。我ながら捻くれていると思うけど、それは彼女もおあいこである。異論も反論も認めない、断じて。
 乾坤一擲の言葉は、果たして彼女に届いたのだろうか。ぼくの壮大な勘違いだったら、一体どうしてくれよう、という思いが心の中を大きく渦巻き始める前に、彼女から答えが聞きたかった。
 ぼくの予想が見当違いでないことを祈った。
 果たして、彼女は瞳を潤ませた。
 白い手を胸にやって、苦しげに唇を噛み締めている。何も言わずとも、その仕草だけで彼女から答えを受け取ったような気分に、ぼくはとらわれていた。
「ぼくは、気取った態度も嫌だけど、捻りがないのも嫌なんだ。それはぼくが捻くれているからっていうのもあるんだけど」
 ぼくは彼女の視線を受け止めた。
「……ずっと、ぼくはきみを欲していたんだ」
 言ってから、ぼくは顔を赤らめた。
 恥じらいという紅蓮の炎に焼かれて悶絶してしまいそうだった。ニーチェ先生、字面だけを使ってごめんなさい。でも、それは、その言葉は、恐らくぼくが写真に込めた想いのように、彼女から借りた本に込められていた大切な言葉だったんじゃないかと、思ってしまうのです。
「そうだね」
 彼女はそう言うと、笑った。
 泣き笑いのような、切ない笑みだった。
「……わたしも、誰かに欲してもらいたかったから」
 彼女は涙を零した。
 ぼくは彼女を抱きしめるようとして、直前になって思い留まった。
 彼女に向かって微笑むと、ぼくは伊豆見の涙をそっと拭った。



 ぼく達は、今までずっと踏み込めなかった。
 だけど、そんな時代は終わった。

「そっか」
 彼女は言った、いつもと変わらない二人だけの写真部部室で。
「タムロンって、カメラのレンズメーカーだったんだ」
 彼女の手には望遠レンズが握られている。彼女はそれを大切に抱いている。まるで、大事な本に触るような手付きで触れている。
「……ずっと気になってた」
「よく覚えていたね。訊かれるまで、きみに言ったことをすっかり忘れてたよ」
 ぼくは照れくさくなって、頭を掻いた。
 初めて彼女の部屋を訪れた時、彼女と借りていた本について話した際にぼくがうっかり零した言葉。
「調べようと思ったけど、やめた」
 彼女は丁寧な手付きで、レンズを机の上に置いた。
「何故?」
 彼女は視線を泳がせた。
 彼女らしからぬ、もったいぶった間にぼくは眉を曲げた。
 彼女は華奢な肩をぐっと縮めた。そして観念したように告げる。
「……あなたから訊こうと思ってたから」
 ぼくはその答えに、頬の筋肉を弛緩せずにはいられなかった。
 ぼくが今まで毛嫌いしてきたものの甘美さに、骨の髄まで溶かされてしまいそうな感じに戸惑った。
 つくづく、ぼくは素直じゃなかった。自分の事でさえ、よくわかっていなかった。今回の出来事を通じて、自分の事が良く分かっただなんて言わない。けれども、自分の事がよくわからない、ということがよくわかったのは、非常に勉強になったななどと思っている。
 そして、わからないから、知らないからこそ、ぼく達は自分を知ろうと、理解しようと一歩を踏み出すことができる。
「どこか行こうか?」
 ぼくは言った。
 気持ちに任せたなんの脈絡もない唐突な言葉だったけれど、彼女はぼくの予想に反して即答した。
「ランドマークタワーがいい」
 ぼくは思い切り顔を顰め、不服の意を表した。

 桜木町から見上げるランドマークタワーは高かった。
 正直なところ、ぼくは向かう前から尻込みしてしまう。そんなぼくを、彼女は笑みを浮かべながら眺めていた。
「……きみって、結構意地悪だよね?」
 彼女は、明後日の方向を見て鼻唄を歌った。
 普段超然としてどこか掴みどころのない彼女は、今は年相応の可愛らしい少女に見えた。
「でも、高い建物には慣れたんじゃない?」
 見慣れた制服姿じゃない彼女は、新鮮だった。ブレザールックの制服調の私服は、彼女の清楚さを醸し出していた。
「きみんちが高層マンションだからね」
 ぼくは、彼女を咎めるように睨んだ。
 足取りが一向に進まないぼくを見かねて、彼女はぼくの腕をしっかり掴んで、まるで引き摺る様にして歩いて行く。その背中に、情けと容赦は微塵にもない。
 変なところで我が強く、それ故ぼくはいつでも彼女に力の限り振り回されている。もっとも、それは彼女と出会ってから変わることのない、不変の法則みたいに思えてくるから悲しい。それに、ぼくが彼女を思う存分振り回す姿なんて、ちっとも想像できないけれど。
「……一体ぼくがランドマークに上る日が来るなんて、どこの誰が想像できたんだろうね」
 ぼくがせめてもの抵抗と思って歩みを止めていても、動く歩道がぼくをしっかりとタワーの入り口まで律儀に運んでくれる。
 ぼくは、いよいよ覚悟を決めなくてはならないらしい。
「上る前に、どうしてもきみに言っておきたい言葉がある」
 彼女は首を傾げた。
 疑問に思うと行うお決まりの仕草だが、ぼくは毎度の所作にも緊張と高揚を禁じえない。
 ぼくは息を大きく吸い込んだ。
 彼女は不服かもしれない。その言葉を彼女が聞いたら、もう少し場所を弁えて欲しい、だなんて言うかもしれない。でも、それは高所恐怖症のぼくを日本有数の高層ビルの展望台まで引き摺り上げようとするきみが悪い。
 ぼくは今、どうしても彼女に伝えたい。
 ぼくは、肩から提げているデジタル一眼レフカメラを手にすると、電光石火の早業で構えた。
 彼女は一瞬の出来事に、目を見張った。驚いた表情すら、酷く愛らしい。
 ファインダーから覗く不意を突かれ驚愕に満ちた彼女の顔に、ぼくは満足しながらシャッターボタンに指をかけた。

「ぼくは、きみに初めて会った時から、きみの姿を写真に収めたかった」
金椎響 8tiPoznsKE
http://kagamimono-nishiki.hatenablog.com/
2010年10月16日(土)14時39分 公開
■この作品の著作権は金椎響さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
 感謝を捧げます――私の小説を読んで下さった全ての方々に。

◆あらすじ◆
 伊豆見左近という可愛い女子がいる。友人からそんなことを言われた「ぼく」は、彼女の読んでいた本が気になって声をかけてしまう。その本がまた厄介で、「ぼく」は彼女から読みたくもない本を借りてしまう。
 強引に貸した癖に、彼女は一向に「ぼく」に対してリアクションがない。
 カメラ小僧の「ぼく」はファインダーばかり覗き、彼女は教室の隅で何やら怪しい本を読み耽る。その二人をにやにやと嫌らしい視線で眺める「友人」の三人が織りなす日常生活から哲学と萌えを追及する、気難しい恋愛小説。

◆作者からのコメント◆
 初めまして。作者の金椎響です。
 普段はこのような場に自分の作品を投稿しないので、不思議な気分です。
 根性を入れた第一作目だったのですが、結果的にかなり異端な作品になってしまいました。
 賛否両論だとは思いますが、皆さんからの感想、評価、批評、意見を心からお待ちしております。

◆哲学的なテーマ◆
「アウシュヴィッツ」、ウィトゲンシュタイン、ホッファー、アドルノ、アーレント、ヘインズ、「クオリア」、「死と罪」、「痛覚マスキング」……。
 また、随所で登場するカメラや恋愛にも、哲学的な解釈・考察ができるように気を遣ったつもりです。
 私としては、この小説では読者のみなさんに対して問題提起が行えればいいな、という目的意識の下に作ったつもりです。
 それ故、「ぼく」や「彼女」の言っていることが哲学的に正しいのか、間違っているのか、皆さんに判断して頂き、日頃意識しない哲学について、少しでも思いを馳せて頂ければ幸いです。

◆おわりに◆
 最後に、私のような初心者に、このような機会を与えて下さった飲茶様やうっぴー様をはじめとする企画運営の皆さま、そして、私の作品を読んで下さった全ての読者の方々に心から感謝致します。
 本当に、本当に、ありがとう。

最終更新日 2012年02月13日(月)


この作品の感想をお寄せください。

2011年07月13日(水)12時15分 catus 
初めましてこんにちは。catusと申します。
企画も終了して時間がたちますが感想は随時受け付けているとのことでこの機会に投下させていただくことにしました。拙文ではありますがよろしくお願い致します。

 私はこの小説を一日で読み終えました。さっそく私事で申し訳ないのですが、昔から文を読んでいて途中で分からないことがあるとどうもそこから進めなくなってしまう悪癖があるのです。この作品にも出てくる「虐殺器官」でも弾が腹に当たった描写だったかが頭の中で再現できず「本当にそうなるのか?」と気になったがために未読に終わってしまい、そのようによく本をお粗末にしてしまいます。「シャッターボタンを全押しにして」も例外ではなく、校舎自体が立ち入り制限されているのになぜ職員室は開いているのだろうかとそこから数分格闘してきました。そんな“悪癖持ち”が一日で苦とも思わず読むことができたというのは、結構功績だったりするのですが、すべては処女作をこれだけの完成度で作り上げた作者である金推響さんの“腕”のおかげでありましょう。
 
 ただの本の貸し借りが何とも言えない胸を締め付けられるものとして演出されていたことも、“腕”を感じたひとつでもあります。色とりどりの小道具によって生み出される世界観はそれ以外では成し得えません。
キャラクターの中では嫌らしい「友人」が一番好きなのですが、彼がいつ「友人」から「恋敵」に変わるのかヒヤヒヤしながら読んでいました。結局道を外れることはなかった訳ですが、伊豆見と「友人」が二人で歩いているところを「ぼく」に遭遇させるというのも見てみたかったような気がします。
ヒロインである伊豆見は名前にもビックリですが、魅力は何と言っても>微笑とも嘲笑ともつかない笑顔 に尽きるでしょう。正直影響を受けてしまいました。これは彼女の真意がわからないというのに係っていて上手いです。しかもメロンソーダとは。とてもキュート。
その伊豆見をストーキングし、借りた本を胸に押し付け、幻聴が聞こえ自己嫌悪故にロードレーサーを倒してしまう主人公の「ぼく」は素晴らしいの一言です。私はこういうものが大好物なのです。ですので紅葉から伊豆見が出てくるタイミングはもう少し遅らせても良かったのにと思ってしまいました。三人称のくだりは難しくこういう事だと思うと言ったことがどういう事なのかまだ分かっていませんが、物語が一人称でなければならない理由をキャラクターである「ぼく」に語らせていたのは興味深かったです。

 私はこの作品を「きれい」な作品だと感じました。ダイヤモンドの直接的な輝きではなく、遠くから見なくてはならないような、丁度伊豆見が「ぼく」の写真を見て言った「凄い繊細」がまさにそうであると納得してしまいました。

 読み込みが足りないと言われればそれまでなのですが、伊豆見は「ぼく」の、「ぼく」は伊豆見の、どこが良かったのでしょうか。またいつ“本格的”に好きになったのでしょうか。まったくそれがないということではないのですが、特に伊豆見が「ぼく」に惹かれるものを見出したとも思えず少なくともそこに関しては計りかねるところがありました。
夕日、カメラ、本、哲学、高所恐怖症、これらが本当に物語の中で巧みに描き出され織り込まれています。しかしそれ故に、焦点を絞りきれていなかったのではないかと思いました。本はきっかけですが2冊あること、「ぼく」が本を通して伊豆見を知っていくことと伊豆見を写真に収めることが目的であること、伊豆見が問いかけるのは貸した本の内容だけではないことなど、些細なことなのですがひとつひとつ丁寧に提示されているがために結果がブレてしまった印象を受けてしまいました。

 極端に添削などすると矯正されいっそう凡作に転じてしまうことがあります。この作品はそれでしょう。矯正も矯正、物語の1ミリでもどうかしてしまうだけで私の感じた「きれい」さは失われてしまいます。この作品は遠くから見なくてはいけません。「友人」は「恋敵」などならないからあの「友人」でありうるのです。「ぼく」はあれ以上本能をむき出してはいけないしあのタイミングで伊豆見は紅葉から出てこなくはなりません。どれもがそうであったからこそ「ぼく」が屋上で感動した夕日を私もまた同じように見ることが出来たのです。「シャッターボタンを全押しにして」はそれで良いのです。そういう作品なのです。支離滅裂でしょうか。どちらも嘘ではないしこの作品に限ったことではないかもしれません。しかし、私はこの作品でより強くそれを思ったのです。

 長々と見苦しく申し訳ございません。何かお気に障ることを申し上げていたらお詫び致します。言いたかったことは言わせていただいたと思います。では本当に、このような素敵な作品を読むことができて嬉しく楽しいひと時でございました。心から感謝致します。ありがとうございました。

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2011年03月21日(月)21時45分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 まちーさん、こんにちは。作者の金椎響です。
 最初に、返信が遅れてしまい申し訳ございませんでした。以下、応答を書き綴っていきたいと思います。

>金椎響さん、大賞受賞おめでとうございます。
→ありがとうございます。大賞を受賞できたのはまちーさんをはじめとする読者様の高い評価のお陰だと思っております。

>私が感想を書いた三十五作品中、唯一+50点をつけた「シャッターボタンを全押しにして 」が大賞受賞だと知り、パソコン画面の前で思わずガッツポーズをしました。
→ありがとうございます。皆さんの温かいご支持があってこその大賞受賞だと思います。読者の皆様に我がことにように思って頂けるというのは、本当に幸せなことだと思います。
 また、唯一の50点が頂けたこと、この企画においてまちーさんのナンバーワンになれた誇りと意味を胸に刻んで、今後の小説創作に活かしていきたいと思います。

>やはり自分の目に狂いはなかったんだぁぁ! と。
→まちーさんは投稿当初から評価して下さっていたんですよね、本当にありがとうございます。
 自分の作品なので客観的な評価がしにくいですが、皆様から多くの50点の評価を頂けたのですから、やはりまちーさんの目に狂いはなかったのだと思います。

>今後益々のご活躍を心よりお祈り申し上げまする。
>ではでは^^
→ありがとうございます。わたしもまちーさんの小説をこれからも楽しみにしております。この企画は終わってしまいましたが、これからもよろしくお願いします。お互い頑張りましょう!

pass
2011年03月21日(月)21時19分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 こんにちは、呟き尾形さん。作者の金椎響です。
 返信が遅れてしまい申し訳ありませんでした。以下、コメントについて応答していきたいと思います。

>大賞受賞、おめでとうございます。
→ありがとうございます。この作品を投稿してから「なんだかわたしの作品だけ浮いてるな」と思っていただけに、200以上の作品が集まるこの企画の大賞に選ばれたこと、本当に嬉しく思っております。
 なにより、大賞授与はわたしの作品を読んで下さった読者様の評価の賜物だと思っております。
 
>丁寧なレスポンスをいただき、お返事しようとおもっていて、遅れてしまい申し訳ありませんでした。
→いえいえ、よもやお返事をして頂けるとは思っていなかっただけに、こうしてコメントして頂けると嬉しい気持ちです。
 また、わたしの方こそ返事が遅くなってしまってすいませんでした。

>その気持ち、なんとなくですがわかります。
>私の場合は、分野は違いますが、ネットを通して、一方的に知っている人と、お話ができるというのは、なんとも気持ちが高まりますよね。
→そのお話、非常にわかります。今まで一方通行だったものが双方向になる喜びがありますよね。

 それでは、最後に丁寧なコメントが頂けて嬉しかったです。この素晴らしい企画は終わってしまいましたが、またどこかで呟き尾形さんと出会える日を楽しみにしております。

pass
2011年03月21日(月)21時02分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 romaさん、感想どうもありがとうございます。作者の金椎響です。

 最初に返信が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。コメントについてはすぐに確認させてもらったのですが、応答が大幅に遅くなってしまってごめんなさい。

>金椎さんがブログでリクエスト受け付けてくれると言っていますね。
>では(わくわく)、同じ物語を伊豆見視点で描いていただきたいです。ぼく視点と合わせて本1冊分になる感じですか。氷室冴子の「なぎさボーイ」「多恵子ガール」の例がありますしね(例が古くてすみません)。
→なるほど!
 個人的には、語り部を女の子にした恋愛小説って、読者様(特に若年層の方々)に対して受け入れてもらえるかどうか不安があり、男の子を主人公にした小説を三作書かせてもらいましたが、romaさんの意見を聞いて安心しました(笑)
 ぼく視点と合わせて一冊になる、良いですね! こういう形の作品、わたしも好きなのでやってみたいですね。
 ただ、今まで努めて伊豆見の心情描写は限りなく書かない方向だったので、上手く書く自信がちょっとないですね(滝汗) あと、基本的に小説創作は自分の欲求を満たすためにやっているところがあるので、オリジナル要素満載にならないか不安です(苦笑)
 大変な作業になりそうですが、リクエストにお応えしてまずは挑戦したいと思います。進捗についてはブログでまた追って記せたらな、なんて思っております。

 一応リクエストについては時間が経ったと思うので、とりあえずここで一区切りをつけたいと思います。
 ただ、「今度はこういうのを書いてみれば?」というご意見は気軽にブログ等のコメントで記して頂ければ、参考にさせて頂くかもしれませんので、こちらもどうぞよろしくお願いします!

 最後に、romaさん、わざわざリクエストして頂いてどうもありがとうございました。できないかもしれませんが、やってみないとわからないのでチャレンジしたいと思います!

>2011年2月28日追記 大賞受賞おめでとうございます!!
→ありがとうございます。この作品は賞を頂いても恥ずかしくないと自分で思えるくらい力を入れていただけに、嬉しくて嬉しくて……(号泣) 大賞受賞は一重にromaさんとはじめとする読者様のお陰です。
 作者のわたしからも、この作品を読んで下さった全ての読者様に感謝の気持ちでいっぱいです。

pass
2011年03月03日(木)20時00分 まちー RCPb5pz4Tw
金椎響さん、大賞受賞おめでとうございます。

私が感想を書いた三十五作品中、唯一+50点をつけた「シャッターボタンを全押しにして 」が大賞受賞だと知り、パソコン画面の前で思わずガッツポーズをしました。
やはり自分の目に狂いはなかったんだぁぁ! と。

今後益々のご活躍を心よりお祈り申し上げまする。
ではでは^^

147

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2011年02月28日(月)21時55分 呟き尾形 
 こんにちわ。金椎響さん。呟き尾形です。

大賞受賞、おめでとうございます。
 
 丁寧なレスポンスをいただき、お返事しようとおもっていて、遅れてしまい申し訳ありませんでした。

>作品とは直接関係はございませんが、わたしはこの企画に
>作品を投稿している投稿者様が運営しているサイトには
>度々足を運んでいて、その時呟き尾形さんのサイトを拝
>見致しておりました。
 恐縮です。

> それ故、感想欄で呟き尾形さんの名前を見た時には嬉
>しかったです。ああ、ついに呟き尾形さんから感想を頂
>けたんだ、なんて思うとパソコンの前で興奮してしまい
>ました。
 その気持ち、なんとなくですがわかります。
 私の場合は、分野は違いますが、ネットを通して、一方的に知っている人と、お話ができるというのは、なんとも気持ちが高まりますよね。

 
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2011年02月20日(日)01時02分 roma N0mWgMiihI
金椎さんがブログでリクエスト受け付けてくれると言っていますね。
では(わくわく)、同じ物語を伊豆見視点で描いていただきたいです。ぼく視点と合わせて本1冊分になる感じですか。氷室冴子の「なぎさボーイ」「多恵子ガール」の例がありますしね(例が古くてすみません)。

2011年2月28日追記 大賞受賞おめでとうございます!!
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2011年02月14日(月)01時19分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 yoshiko_sanさん、はじめまして。作者の金椎響です。
 最初に、200を超える作品が投稿されるなか、わたしの作品を読んで頂けたこと、本当に嬉しく思っております。yoshiko_sanさん、どうもありがとうございます。
 なんと、yoshiko_sanさんから頂いた50点の評価で、『シャッターボタンを全押しにして』は600点に達しました! この企画に本作を投稿した時、よもやここまで高評価を頂けるとは露とも思っていなかっただけに、皆さまから頂いた高い評価、そしてなにより暖かいお言葉、本当に嬉しいです。

>拝読しました。とても、面白かったです。
→ありがとうございます。最初にそのように評して頂けると、嬉しいです。
>自分から、読んだ小説について感じたことを書こう、
>と思った作品は「シャッターボタンを全押しにして」が初めてです(と、言っても大した感想は書けないんだがなー。
→そうでしたか、ありがとうございます。作者にとって最高の褒め言葉です。
 あと、感想に関しては、読者様の感じたこと、思ったことを率直に記して頂ければ良いと思います。的外れ、ではありませんよ。また、読者様の数だけ解釈がある、と作者は考えておりますので、むしろ、積極的に「こう思った!」と仰って頂けると、今後の創作活動にフィードバックできるので、作者にとってもありがたいです。

>夏休みの宿題とか学校の授業で書かされる感想文すらまともに提出したことがほとんどないくらいです。
>何でわざわざこんなことを言うのかといえば、それだけこの作品が「面白かったー。」と言いたかったのです。
→ありがとうございます。自分の書いた小説を読者様に「面白かった」と評価して頂けると感極まってしまって、瞳が潤みます。

>多分5回は読んだ。うち3回は主に仕事中の昼休みに1時間位で(この企画、本当に昼休みの楽しみだった)。んで、ナナメ読みながら作品の持つ雰囲気になんだか引き込まれたので普段うちでPC触ることめったに無いけど感想、書こうと思って、読んでみたです。
→そうだったんですか、ありがとうございます。自身の作品を何度も何度も読んでもらえたという幸せに感無量の思いです。あと、わたしも空いた時間を見計らってはこの企画をちょこちょこ覗いていたので、そのお気持ちよくわかります。

>この作品で書かれた後で、同じ「横浜」を舞台として全く違った主人公たちがそれぞれの世界を生きている。(そりゃ、一人称ってこういうものだけど)
>ここまで、文体で主人公の個性が書き分けられていると私自身も彼らのファインダー越しに彼らの世界を覗き見た気がして楽しかったです。
→ありがとうございます。文体については、気を遣ったつもりですのでその様なお言葉を頂けると嬉しい限りです。
 感想の文言から察するに、わたしの他の作品も読んで頂けたのですか!? ありがとうございます。
 自分が送り出した作品を読んで頂けた事、本当に嬉しく思っております。横浜という街で、彼らの言葉によって作られた彼らの世界を堪能して頂けて、わたしもまた幸せな思いです。

>「思考は言語のみで構成している訳ではない(クオリア、も感じている筈)」と思うけど感覚を言語に変換する語彙に個人差は大きいのだな。書き分けられる作者の力量をただただ、「凄いな」って思います。
→ありがとうございます。ちょっと気合を入れ過ぎてしまって取っ付きにくくなってしまった感が否めないですけれど、そのように評して頂けると救われた気分です。

> やっぱり〓〓〓さんの感想にあるように「半押し」の明確な場面があれば良かったなって思います(「ぼく」のピントが彼女に合った瞬間みたいな描写)。いやもちろん「この辺だろう」ってのは読んでる方にはなんとなく判るんだけど…。で、勝手に「この写真、貰ってもいい?」の台詞の後あたりと思って読んでいます。
→確かに、そこで「半押しだろう!」って感じですよね。ごめんなさい。ただ、そこで「半押し」にする代わりに、最後に今までお預けだった「全押し」を解禁させてあげた方がいいかな、なんて思ってしまいまして。ただ、こうして今振り返ると「半押し」の明確な場面は確かにあった方が良かったかも、なんて思います(苦笑)

>伊豆見視点でこの話妄想すると何だか泣きそうになるなぁ(うーん、伊豆見の焦点って部室に出入りしているあたりからすでに合っていた? 大事な本を貸した時点で、はまだ気づいてないんだろうな、本人。とか。あああ、もう、「萌え」ではないかな、これって)。
→そう言われると、わたしは「ぼく」視点に慣れ過ぎてしまっていました。今、指摘を受けて改めて伊豆見視点で物語を見つめたところ……胸が高まりました(笑) い、伊豆見可愛い。
>伊豆見ったら、健気ないい子だー(ごめんなさい「ミステリアス」も感じますよ、もちろん。でも、可愛いのだよ)。
>金椎響さんの作中のヒロインではいちばん好きです(えーと、二位はダーツェンさんです。間に合えば感想、是非書きたいです)。
→ありがとうございます。わたしにとって、自分の作品の登場人物は息子・娘みたいなものなので、そのように言って頂けると、嬉しい限りです。
 二位がダーツェンですか!? それは嬉しいです! 第三作目は難産で、至らなかったところが多々ある作品なので、お暇でしたら一言だけでも構いませんので感想を頂けると嬉しいです。個人的には、読んで頂けただけでも非常に嬉しいのですが、まだまだ未熟なものですから読者様からご意見が頂けると幸いです。

>写真に込めた想いと、本に込めた言葉が交錯した瞬間が美しいよっ(あー、私の語彙が貧弱で恥ずかしいですが)。
→ありがとうございます。今振り返ると、その場面を書いた時の記憶が定かじゃないくらい、神経を使ったような気がします。なので、そう評して頂けると嬉しいです。

>あ、あとやっぱり最後の「全押し」解禁! が好きです。
>途中で本当に写真撮っちゃう主人公より、好きだな私は。
→ありがとうございます。作者もその場面が気に入っております(笑)
>哲学についてはまったくもって疎いのですが、興味を持ち始めた私には十分「問題提起」になったと思います。
>自分なりにだけど、考えさせられたことがいろいろありました。
→そのように仰って頂けると、この作品を書いた甲斐があったと胸を撫で下ろすことができます(笑)
>痛覚マスキングの話は興味深かったです(あ、「虐殺器官」読みました)。「感覚」、「知覚」、「認知」にこれほど思いを馳せたことはなかったです。ただ、ロマンはあまり感じませんでした(すまぬ、伊豆見)。
→ありがとうございます。何故か、わたしは痛覚マスキングが凄いツボでして(苦笑) なんか、この作品を通じて『虐殺器官』を宣伝しているような気が……。

 誤字の連絡、どうもありがとうございます。
 指摘された箇所については、訂正致します。

>金椎響さん的にあまり嬉しくない感想かも知れんのですけど、
>清楚で知的で美しくて(ついでにいい匂いでちょっと意地悪)、なのに、まったくもうって位健気で可愛らしい伊豆見ってば…。ああもう好きだー。
→あ、わたしにとって抵抗があるのは製作者側が意図的に<萌え>を作ろうと躍起になることで、読者の皆さまが登場人物を好きになり、愛されるのはむしろ大歓迎です!
 わたしは作者側が読者の受けを狙って描く、記号的で安易な<萌え>がどうしても好きになれない……というか許せなくて。クリエイターとしての矜持はないのか、みたいに思ってしまうんですよね。
 それ故、読者様がわたしの作品に対して「萌え」を抱く分には構わない、むしろ大歓迎、というスタンスです。「萌え」はそもそも受け手側に立つ読者様が抱くものであって、作者側がそれを意図的に演出してしまう<萌え>は、商業的には必要なことかもしれませんが、かなり独善的なものだと個人的に思っているので。

>本当に面白い作品を、読ませていただいてありがとうございました。
→いえいえ。むしろ、最後までこの作品にお付き合い頂いたこと、心より感謝しております。

 最後に、yoshiko_sanさんには感謝の気持ちでいっぱいです。誠実な感想を頂けて、本当に嬉しかったです。なにより、読者の方から面白い作品と言われたこと、それがわたしにとってかけがえのない財産です。yoshiko_sanさんから頂いた言葉を胸に、これからも小説創作に臨んでいきたいと思います。
 yoshiko_sanさん、本当に、本当にありがとう。この小説を何度も何度も読んでくれる素敵な読者に巡り合えたことを、心から嬉しく思います。

pass
2011年02月13日(日)04時40分 yoshiko_san  +50点
拝読しました。とても、面白かったです。

自分から、読んだ小説について感じたことを書こう、
と思った作品は「シャッターボタンを全押しにして」が初めてです(と、言っても大した感想は書けないんだがなー。ここに書かれてる感想のレベルが高くてちょっと気後れしてたです。もしかして、的外れなことを言ってしまうかも知れません)。
夏休みの宿題とか学校の授業で書かされる感想文すらまともに提出したことがほとんどないくらいです。
何でわざわざこんなことを言うのかといえば、それだけこの作品が「面白かったー。」と言いたかったのです。
多分5回は読んだ。うち3回は主に仕事中の昼休みに1時間位で(この企画、本当に昼休みの楽しみだった)。んで、ナナメ読みながら作品の持つ雰囲気になんだか引き込まれたので普段うちでPC触ることめったに無いけど感想、書こうと思って、読んでみたです。

>一人称とは、カメラで言えばファインダー越しに世界を捉えること
>わたし達は、『わたし』というファインダー越しにしか世界を捉える事ができない
→こう、この作品で書かれた後で、同じ「横浜」を舞台として全く違った主人公たちがそれぞれの世界を生きている。
(そりゃ、一人称ってこういうものだけど)ここまで、文体で主人公の個性が書き分けられていると私自身も彼らのファインダー越しに彼らの世界を覗き見た気がして楽しかったです。
三人称は、一人称の主人公が体験しなかった場面を「無理矢理(?)」描ける、という利点(三人称ってこういうものだけど)はあるけれど、感情移入(とか、描写)に関しては一人称主人公ってやっぱり強い。「彼の世界」そのものを「彼の言葉」で描き出しているんだもの。
「思考は言語のみで構成している訳ではない(クオリア、も感じている筈)」と思うけど感覚を言語に変換する語彙に個人差は大きいのだな。書き分けられる作者の力量をただただ、「凄いな」って思います。

>ぼくは、今まで努めてその像に焦点を合わすことはしなかった。
→やっぱり〓〓〓さんの感想にあるように「半押し」の明確な場面があれば良かったなって思います(「ぼく」のピントが彼女に合った瞬間みたいな描写)。いやもちろん「この辺だろう」ってのは読んでる方にはなんとなく判るんだけど…。で、勝手に「この写真、貰ってもいい?」の台詞の後あたりと思って読んでいます。
っつか、伊豆見視点でこの話妄想すると何だか泣きそうになるなぁ(うーん、伊豆見の焦点って部室に出入りしているあたりからすでに合っていた? 大事な本を貸した時点で、はまだ気づいてないんだろうな、本人。とか。あああ、もう、「萌え」ではないかな、これって)。伊豆見ったら、健気ないい子だー(ごめんなさい「ミステリアス」も感じますよ、もちろん。でも、可愛いのだよ)。金椎響さんの作中のヒロインではいちばん好きです(えーと、二位はダーツェンさんです。間に合えば感想、是非書きたいです)。
写真に込めた想いと、本に込めた言葉が交錯した瞬間が美しいよっ(あー、私の語彙が貧弱で恥ずかしいですが)。

あ、あとやっぱり最後の「全押し」解禁! が好きです。
途中で本当に写真撮っちゃう主人公より、好きだな私は。

哲学についてはまったくもって疎いのですが、興味を持ち始めた私には十分「問題提起」になったと思います。
自分なりにだけど、考えさせられたことがいろいろありました。

痛覚マスキングの話は興味深かったです(あ、「虐殺器官」読みました)。「感覚」、「知覚」、「認知」にこれほど思いを馳せたことはなかったです。ただ、ロマンはあまり感じませんでした(すまぬ、伊豆見)。

最後に、誤字(ではなかったらごめんなさい)
ぼくは写真部部室に篭った。部室に尋ねる者は誰もいない。
→訪ねる、もしくは訪れるでは?

金椎響さん的にあまり嬉しくない感想かも知れんのですけど、
清楚で知的で美しくて(ついでにいい匂いでちょっと意地悪)、なのに、まったくもうって位健気で可愛らしい伊豆見ってば…。ああもう好きだー。

本当に面白い作品を、読ませていただいてありがとうございました。
140

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2011年01月23日(日)23時34分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 折伏ぬゐさん、こんにちは。作者の金椎響です。
 最初に、わたしの作品を読んで頂いて本当にありがとうございます。わたしとしましては、折伏ぬゐさんの作品を率直に言って、素晴らしかったと思っております。ですので、見返りに点数を期待する、といった打算があった訳ではございませんよ。
 ただ、折伏ぬゐさんのような、わたしが作者としても、そして読者としても敬意を抱く作者様から感想が頂けるのは、非常に嬉しいです。

>誠に勝手ながら言い訳させていただきますと、私生活が多忙を極めております。明日は幸い休みですが、明後日から二週間先まで(下手するともっと)休日が無い状況です(笑……えない)
→わざわざお忙しいなか、こうして感想を記して頂けて本当に嬉しいです。どうか、無理をなさらずに。健康は大切な財産ですので、お疲れのでませんように。

>まず始めに……文章力分けてください。切実に。自分の書いた何かが霞んで見えます。読書量に裏打ちされたものなのでしょうけれど、こうまで実力差を見せつけられるとかなりショックです。私ももっと本を読まねば。
→ありがとうございます。よもや折伏ぬゐさんからそのように評して頂けると、嬉しくて嬉しくて自然と笑みがこぼれます。なにより、折伏ぬゐさんが「かなりショック」と言って下さるのは、投稿者として作者冥利に尽きます。この企画にうっかり参加してしまい、他の投稿者様の作品に衝撃を受け、「わたしも誰かに衝撃を与えるような小説を書きたい」と思っていただけに、他の作者様に良い影響を与えられた、と思うと感無量です。

>内容も新鮮なものが多く、ところどころで考えさせられました。特に被害者と加害者、自己防衛の話のあたりはツボでした。アウシュビッツの回教徒、探して読んでみます。
→ありがとうございます。被害者が加害者となる、自分のために誰かを傷付ける、というテーマは普段から思うところがあったので、この作品を提起に、皆さんが関心を持って頂き、考えて下さると、わたしも嬉しいです。

>一人称と三人称の話も興味深かったです。ただ私の場合主人公君とは違って、一人称を書いていると時々「自我ってこんなに自在なものじゃないよなぁ」なんて思ってしまいます。
→そうですよね。だから、限界がある云々、と表現したかったのかもしれません。一人称にのめり込むと、自分が「ぼく」であるような錯覚があるんですよね。「ぼく」という存在は実体を持って存在しないはずなのに、こうしてキーを叩いているうちに、横浜の街のどこかでひょっこり彼と出会うんじゃないか、みたいな。
 わたしは彼を作っている張本人なのに、本当はモデルとなった人間がいて、わたしに「きみね、どうせぼくをモデルにするなら、もっと格好良く書いてくれよ」なんて囁いてきそうです。今改めて見直すと、そういう意味で、自戒を込めて限界という話をしたのかも。

>三人称というのはテレビみたいなものですから、現代ではある意味こちらのほうが現実的で、知覚(というか、錯覚)できる範囲にあるかなと思ったり。
→わたしは滅「私」というものができないと考えてしまう人間ですが、確かに、三人称をテレビと表現するのは言い得て妙、という感じがしますね。

>しかし私自身、今までに書いた作品は一人称ばかりです(笑) 現実の自分から逃げているか、もしくは変わりたいと思っているのかもしれません。私を取り巻く環境は申し分ないのですが、いかんせん私自身はどうしようもないほどのうつけ者なのです。
→そのお気持ち、よくわかります(笑) わたしも欲求不満、現実逃避、そして変身願望から小説を綴っているのかもしれません。自分を忘れるために、「わたし」という意識から逃れるために、わたしは一人称で本来の自分とは違った自分に没頭するのかも。

>私としては特に指摘することはありません。点数は現在、私のつけた中で最高得点である40点を捧げます(30点を良作とし、そこからのプラスマイナスでつけてます)。これからの人生で何度も脳裏を過ぎるであろう作品に出会えたこと、非常に嬉しく思います。
→ありがとうございます。 折伏ぬゐさんの最高得点を、わたしが頂けたということも嬉しいのですが、なにより「これからの人生で何度も脳裏を過ぎるであろう作品」と評して頂けたことが、なによりも嬉しいです。

 最後に、折伏ぬゐさん、感想本当にどうもありがとうございました。
 この企画であなたと出会えたこと、そしてあなたにわたしの作品を読んで頂けたことを感謝します。
 本当に、本当に、ありがとう。

pass
2011年01月23日(日)23時32分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 呟き尾形さん、はじめまして。作者の金椎響と申します、どうぞよろしくお願いします。

 この度は、わたしの作品をわざわざ読んで下さって、ありがとうございます。200を超える作品が投稿されるなかで、わたしの作品を読んで頂いたばかりか、こうして感想を記して頂けると嬉しいです。

>描写などの文章は上手だと思いました。
→ありがとうございます。作者は「小説家というよりは詩人」と言われているだけに、文章が上手、と評して頂けると嬉しい限りです。

>でも、萌えがありませんでした。
→ごめんなさい。呟き尾形さんのご指摘を受け止めて、今後の小説創作に活かして、読者の方に「萌えました」と言って頂けるような作品を作っていきたいと思います。

 呟き尾形さん、感想どうもありがとうございます。
 作者と致しましては、一言でも良いので読者の皆さんから感想が頂けると、本当に嬉しいです。
 これからも、呟き尾形さんのお言葉と評価を胸に抱いて、小説創作に取り組んでいきたいと思います。

 作品とは直接関係はございませんが、わたしはこの企画に作品を投稿している投稿者様が運営しているサイトには度々足を運んでいて、その時呟き尾形さんのサイトを拝見致しておりました。
 それ故、感想欄で呟き尾形さんの名前を見た時には嬉しかったです。ああ、ついに呟き尾形さんから感想を頂けたんだ、なんて思うとパソコンの前で興奮してしまいました。

 呟き尾形さん、本当に、本当に、ありがとうございます。

pass
2011年01月21日(金)21時51分 折伏ぬゐ 3zzXlUmpzE +40点
 金椎響さん、その節はどうもです。遅ればせながら、作品読ませて頂きました。それと感想返しが遅れてしまったことをここにお詫び申し上げます。誠に勝手ながら言い訳させていただきますと、私生活が多忙を極めております。明日は幸い休みですが、明後日から二週間先まで(下手するともっと)休日が無い状況です(笑……えない)


 さて、余談過ぎる余談はここまでにしておいて、感想に入りたいと思います。
 まず始めに……文章力分けてください。切実に。自分の書いた何かが霞んで見えます。読書量に裏打ちされたものなのでしょうけれど、こうまで実力差を見せつけられるとかなりショックです。私ももっと本を読まねば。

 内容も新鮮なものが多く、ところどころで考えさせられました。特に被害者と加害者、自己防衛の話のあたりはツボでした。アウシュビッツの回教徒、探して読んでみます。
 一人称と三人称の話も興味深かったです。ただ私の場合主人公君とは違って、一人称を書いていると時々「自我ってこんなに自在なものじゃないよなぁ」なんて思ってしまいます。三人称というのはテレビみたいなものですから、現代ではある意味こちらのほうが現実的で、知覚(というか、錯覚)できる範囲にあるかなと思ったり。
 しかし私自身、今までに書いた作品は一人称ばかりです(笑) 現実の自分から逃げているか、もしくは変わりたいと思っているのかもしれません。私を取り巻く環境は申し分ないのですが、いかんせん私自身はどうしようもないほどのうつけ者なのです。
 なんだか話がズレました。


 私としては特に指摘することはありません。点数は現在、私のつけた中で最高得点である40点を捧げます(30点を良作とし、そこからのプラスマイナスでつけてます)。これからの人生で何度も脳裏を過ぎるであろう作品に出会えたこと、非常に嬉しく思います。
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pass
2011年01月21日(金)00時16分 呟き尾形  +10点
こんにちわ。呟き尾形と申します

シャッターボタンを全押しにして 読ませていただきました。

 描写などの文章は上手だと思いました。
 でも、萌えがありませんでした。

 


144

pass
2011年01月18日(火)01時29分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 エキセントリクウさん、こんにちは。作者の金椎響です。
 最初に、わたしの作品を読んで頂いて本当にありがとうございます。第三作目『She said to me, ”GODSPEED”』で感想を記して頂いたばかりか、またこうして感想を記して頂けて、わたしは嬉しい気持ちで一杯です。
 この作品に感想をして下さる、と書かれていましたが、それっきりだったのでちょっと傷付いてましたけど(苦笑)

>まず得点の内訳ですが、作品評価点が20点、大賞内定前祝い、金椎響さんの将来性と人柄に20点
>計40点、となっております。
→どうもありがとうございます。
「大賞内定前祝い」ってなんですか(笑) 「将来性と人柄」っていう評価項目も良いですね。この企画のなかでは長く携わってきた方だと思いますが、よもや人柄を褒められてしまうなんて。ちょっと意外でしたが、嬉しいです。

>ここの投稿作品に対する感想ですが、力のある作者、作品には、シビアに接するというスタンスでやってきました。
→エキセントリクウさんの感想は目を通しておりましたから、そのスタンスはわたしも存じておりますよ。そして、それは、遠回しな「金椎響は力のある作者」っていう表現ですよね? どうもありがとうございます。
>おそらく大賞を手にするであろう今作品、当然厳しくいくつもりでした。
→ええっ!? そうですか。金椎響の作品はこの企画において、マイノリティー且つ異端だとばかり思っておりました。なので、そのように評して頂けると、作者としては嬉しい限りです。
>しかし……処女作だったんですか……困りました。
→そうなんです。金椎響の作品に、真剣かつ本気で感想をして頂けると、とってもありがたい一方で、「えっ!? ……一介のアマチュアに対して、要求しすぎじゃないですか」と思ってしまうものもあって、わたしとしては驚かされることが多いです。いつからこの企画は、新人賞の選考になったんだ、みたいな。
 もっとも、それだけ読者の皆さんが、作者に対して真摯に向き合って下さっている、ということなので、作者としては厳しいと思う一方で、大変喜んでおりますよ。
>ただ、金椎響さん、器の大きい人みたいだし? いいですよね? 多少シビアでも?
→作者としましては、読者の忌憚のない意見を求めております。ですので、率直な意見を頂けると、わたしにとっても有意義でありがたいです。ただ、金椎響個人は人間強度が低い、いわゆる「豆腐メンタル」なのであんまり厳しいと傷付いちゃいます。

 ちなみに、わたし自身は「小説を書こう」と思って10年くらいになります。……なんという遅咲き。今までしっかり小説というものを書いたことがなかったり。中学生の時に、こういう作家志望系サイトに出入りし始めて、それ以来、ネットや実生活ではずっと「読み」専門で関わっておりました。
 だから、今回、こうして作者として批評される立場として参加することになるとは思ってもみませんでした。 いやはや、よもやわたしが小説を書くことになろうとは……。

>「く、くどい!!」
→ごめんなさい。それは金椎響がくどい人間だからです(笑) あと、一人称の語り手別に文体を使い分けている、というのもあります。まぁ、それ故凄い読みにくくなってしまっているとは、作者自身が一番感じておりますので、手直ししたいと思っております。

>一体何ですか!このオールド感は!
→作者、精神的に年老いてますんで(笑) あと、スカイツリーの建設で「過去」となろうとしているランドマークの一抹の寂しさはちょっと意識してました。ポストモダンという言葉がもとは建設用語だったように、その時代背景に建物って関わってるんじゃないかな、なんて思いまして。普通の小説だったら、作者がこう思っても盛り込めないですけれど、「哲学的」なこの企画だったらそういうテーマも許容してくれるんじゃないか、とその当時は思っておりました。

>雰囲気づくりの古さかと思うのですが、見る人が見れば「古クサー」と一蹴されてエンド、ってことになるかと。
→そもそもこういう作品ですので、普通の読者はまずクリックしないことは自覚しておりました。もともと、この企画で大賞を取ってやろう、みたいな意気込みではなかったですし、最初の一作目でしたから、自分のやりたいようにやらせてもらった感じになります。
 まぁ、そのせいで投稿当初は見向きもされなかったのですが。ただ、100枚という負担の多い枚数であり、また、投稿当初から「この文体、語り部では誰にも読まれない」と読者様から危惧されてきましたが、結果的にこうして「王冠」を頂いておりますので……その辺りの判断は難しいですね。無論、「古クサー」と思って「戻る」ボタンをクリックする読者が大多数だとは思いますけれど。
 なにより、評価のなかでこの作品の雰囲気が良かった、と言って下さる方が多いので、これからも時代錯誤な印象と雰囲気作りの妥協点を見つけていきたいと思います。

>小説に限らず、表現された作品には今現在の空気が必ず入っているべきです。これは表現の基本です。
→今現在の空気、ですか。なるほど。確かに、表現、そしてそれが集まって綴られた小説というのはその時々を、時代を反映した言葉で構成されているのかもしれません。
 ただ、romaさんから「草食系」という言葉について、あと二・三年で風化する言葉だから変えた方が良い、という指摘を受けるなど、その点については異なる考えを持つ読者様もいるようです。なので、その点については、今後ともわたしなりに考えていきたいと思います。

>主人公はアナクロな生真面目人間です(これはイコール作者といっても、よろしいかと)。
→いくら作者の自己表現・自家発電・自己満足とはいえ、作者の独り善がりになっては元も子もないので、エキセントリクウさんのご指摘を真摯に受け止めて、至らなかったところは直していきたいと思います。

>こんないいシーン、どうしてこんなゾンザイな書き方するんですか!
→それは……作者がゾンザイな奴だからだったりします。ごめんなさい、確かに、そこは良いシーンだと思います。
>なに気取ってんすか!撮りましょうよ!
→そこで、読者様にフラストレーションを溜めさせて、最後で成就してすっきりする、という流れを意図したものだったのですが、〓〓〓さんにも指摘されましたが、やっぱり途中でも撮った方が良かったかもしれませんね……反省します。

>出過ぎたまねして申し訳ないのですが、ここ、エキセントリクウ・バージョン、いかせてください!
→良い感じだと思いますよ。エキセントリクウさんの技術、しかとこの目に焼き付けさせてもらいました。今後は、この描写を参考にして次の作品作りに活かしていきたいと思います。

>最後に、処女作でこれだけ書けたら出来過ぎ、いや、驚異的です。
>末恐ろしいです。期待してます。
→まぁ、アイディア、下書き、ボツにしたプロットなどがありますから、いきなりこの作品が書けた訳ではありませんけれど。そのように言って頂けると、わたしとしては嬉しいです。

 わたしは、いわゆる駄目な作者で、読者様からのご意見を黙って聞ける人間でなくて、ついつい過ぎた物言いになってしまい気分を害されたかもしれませんが、どうかご容赦を。至らないわたしなりに、読者に対して全力なのだと捉えて頂けると幸いです。

 頂いた感想を目に通していて、わたしの抱く小説観とエキセントリクウさんの抱いている小説観に若干のズレがあったような気がします。しかし、そうしたなかでもわざわざこの作品を読んで頂いたばかりか、感想と高い評価をして下さったエキセントリクウさんには感謝の気持ちでいっぱいです。
 今後は、エキセントリクウさんのご指摘を肝に銘じて、小説創作に打ち込んでいきたいと思います。
 それでは、エキセントリクウさん。本当に、本当に、ありがとう。

pass
2011年01月17日(月)13時12分 エキセントリクウ  +40点
こんにちは、エキセントリクウです。

まず得点の内訳ですが、
作品評価点が20点、
大賞内定前祝い、金椎響さんの将来性と人柄に20点
計40点、となっております。

ここの投稿作品に対する感想ですが、力のある作者、作品には、シビアに接するというスタンスでやってきました。
おそらく大賞を手にするであろう今作品、当然厳しくいくつもりでした。
しかし……処女作だったんですか……困りました。
ただ、金椎響さん、器の大きい人みたいだし?
いいですよね?
多少シビアでも?

ただ、処女作ゆえの粗さ、「雁首揃えてルミネの駅ビルを出る」みたいなへんちくりんな言い回しとか、そういう細かい部分はいちいち挙げていったらキリがないので、目をつむります。
ていうか……金椎響さん!ツッコミどころ満載ですよ!
ここはぐっと我慢しますが……すいません、これだけはツッコませてください。

>一体誰であろうかと尋ねるのは愚問だろう。伊豆見左近嬢以外の何者でもない。
>ぼくは彼女と遭遇した。彼女というのは、無論伊豆見左近のことである。
>ぼくに向かってまるで挑むかのように視線を注いでいる。その少女が、伊豆見左近であるのは言うまでもない。

「く、くどい!!」

そんな感じで感想、いかせていただきます。

まず……一体何ですか!このオールド感は!
左近?お前さん?
台詞や行動がアナクロチックな登場人物たち。
最初この作品は時代設定が昭和なのだろうと思いつつ読み進めていったら、ランドマークタワー出て来るし……。
雰囲気づくりの古さかと思うのですが、見る人が見れば「古クサー」と一蹴されてエンド、ってことになるかと。
小説に限らず、表現された作品には今現在の空気が必ず入っているべきです。これは表現の基本です。
昔の言葉を使っても構わないのですが、表現されたものの全体像は新しくなければいけません。


>自転車は道路交通法上、軽車両という扱いである。それ故、本来的には車道の端を走るべきだ。ぼくはその基本的原則に則って、黙々と車道を走った。
>歩道と歩道の継ぎ目で車体を左に切って、道交法の原則をないがしろにすると、ぼくはベルを鳴らした。
>歩道では自転車から降りるのがぼくの流儀である。

主人公はアナクロな生真面目人間です(これはイコール作者といっても、よろしいかと)。
それによって、作品全体がガチガチに固まって、身動きとれない状態です。
この生真面目さは、小説には足枷になると心得るべきです。
この足枷によって、作品は飛翔することができません。
大きく羽ばたいて自由に飛び回ってこそ、小説です。
ときには毒も必要です。
外道になるべきときも、あるでしょう。
それが小説というものです。
第一ぼくらが小説を読むとき、それを期待しているはずじゃありませんか。


処女作ということで、全体的にかなり粗いのですが……
>彼女は、ぼくの姿に気付く事無く、本棚や平積みにされているハードカバーをじっくり見聞している。そういう姿は実に様になっていて、非常に「伊豆見左近」っぽい所作のように見えた。

こんないいシーン、どうしてこんなゾンザイな書き方するんですか!

>悩む時に小首を傾げて、顎に手をやる姿なんて様になり過ぎていて、ぼくはカメラを構えたい衝動を必死に抑えた。ぼくはフェアな精神を持っている。他人の肖像権を侵害するような男じゃない。

なに気取ってんすか!撮りましょうよ!

出過ぎたまねして申し訳ないのですが、ここ、エキセントリクウ・バージョン、いかせてください!
本当にすいませんけど、お願いします。

彼女はぼくに気付くことなく、本を選んでいる。
書棚の陰に身を隠したぼくは、胸のたかまりを抑えながら、その美しい光景を観察した。
まるで高価なジュエリーを眺めているかのような、うっとりした横顔。
背表紙に視点を合わせるだけで、彼女はすでに活字のあふれる空間に没入している。
意を決したように伸びる細い指先。
その繊細な指と裏腹に、ゴツゴツした重厚なハードカバーが絡めとられ、ゆっくりと引き出される。
愛おしむように彼女は大きな書物を引き寄せ、そっと息を吹きかけた。
そして髪をかきあげ、至福の表情を浮かべて、ページを開く。
咄嗟にぼくは愛機、ニコンの一眼レフを取り出した。
シャッター音で、彼女に気付かれるかもしれない。
他の客に、白い目で見られるかもしれない。
防犯カメラに、不審人物として捕らえられるかもしれない。
店内を見回っている私服警備員に、取り押さえられるかもしれない。
しかしどんなリスクも障害も、今のぼくには無意味だった。
この千載一遇のシャッターチャンスこそが、世界のすべてだった。
後悔したくない。撮り逃がす失態を演じたくない。
幸い、装着されているのは、焦点距離28ー300mmの汎用ズームレンズだ。
この位置からでも、十分狙える。
床に膝をつき、ぼくはカメラを構えた。

……エロくて、すいません。


最後に、処女作でこれだけ書けたら出来過ぎ、いや、驚異的です。
末恐ろしいです。期待してます。

140

pass
2011年01月13日(木)01時57分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 tabibitoさん、初めまして。作者の金椎響です。返信が遅れてしまって、本当に申し訳ございませんでした。
 遅ればせながら、以下作者からの返信を綴っていきたいとおもいます。

 最初に、感想どうもありがとうございます。
 皆さんの温かいお言葉と、高い評価点、作者としてこれほどまでに幸せなことは他にはないでしょう。

 特に、100枚というただでさえ読者が少なくなってしまう枚数なのに、こうして読んで頂いたばかりか、感想まで記して頂けると、作者としましては嬉しい限りです。

>カメラを覗き込むように、横浜の景色を楽しむことができました。
>色彩も味わえました。
→ありがとうございます。
 横浜はわたしにとって、こころの故郷なので、その横浜の風景を読者の方に楽しんで頂けると、本当に嬉しいです。

>お母さんのキャラクターが現実的で、しおりのようで好きです。
→伊豆見のお母さん、地味に人気がありますよね。きっと、伊豆見も大人になった良いお母さんになるんじゃないかな、なんて思います。

 tabibitoさん、感想どうもありがとうございます。
 作者と致しましては、一言でも良いので読者の皆さんから感想が頂けると、本当に嬉しいです。また、高い評価も純粋に嬉しい限りです。これからも、tabibitoさんのお言葉と評価を胸に抱いて、小説創作に取り組んでいきたいと思います。

 tabibitoさん、本当に、本当に、ありがとうございます。

pass
2011年01月13日(木)01時54分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 nさん、はじめまして。作者の金椎響です。どうぞ、よろしくお願いします。

 最初に、ついに二百を超える投稿作品を誇る当企画において、わたしの作品を読んで頂いたこと、本当に感謝しております。
そして、こうして感想を記して頂けるだけでなく、50点という高い評価を頂けたこと、非常に嬉しく思っております。nさん、本当にありがとうございます。

>素晴らしい!
>枚数に押され、長いな〜と思ってなかなか読まなかったのですが、
>読むうちに「もう半分?」「終わらないで!」と意識が変化していきました。
→ありがとうございます。高い評価を頂けることも嬉しいですが、読者の方から率直に「素晴らしい!」と言って頂けると、励みになります。
 処女作ということもあり、色々と思い入れが深いだけに、nさんの意識の変化を見て、わたしもそういえばこの作品を綴っている時に同じ事を思っておりました。書いていて「ああ、ずっとこの時間が続けばいいな」なんて思ってました。

>「一目惚れからの恋心を綴った文学作品」として、
>私の中で心に残るものの一つになりました。
→そう言って頂けると、作者冥利に尽きます。こころを奮い立たせてこの企画に小説を投稿した甲斐があったと思います。
 個人的には、この企画で大賞を取ってやろう、という野心よりも、誰かのこころを響かせるような、そんな作品にしたい、と思っていただけに、nさんにそう評して下さると、嬉しくて嬉しくて、なんだか泣いてしまいそうです。

>一目惚れを描くのに、カメラ小僧はピッタリですね。
>軽い感じや下世話な感じにならないために、哲学的な要素が大いに貢献していて、
>それぞれの要素が相乗効果をもたらしているなぁと感心します。
→ありがとうございます。
 この作品を投稿した当初は、かなり浮いていて凄く傷付いていただけに、そのように言って頂けるとなんだかホッとします。

>二人の恋が、丁寧に大切に綴られ、それに非常に好感がもてます。
>壊したくない美しいものを見ている感じで恍惚としました。
>若い子にはこういう恋愛小説を読んでもらいたい!
→嬉しいです、わたしが表現したかったものを純粋に評価して頂けると。
 そうですね、草食系男子の方々も、女の子にがっつく必要はありませんけど、そんなに恋愛に対して幻滅しないでほしいですね。わたしの小説を読んで、とは言いませんけど、たまには恋愛小説を読んで、「よしっ、恋愛するぞ!」と思って頂けると、わたしも嬉しいです。

>ただ、あまりに地元の人間ですので、「老松中?」とか途中で思ってしまい・・・(笑)
→そうでしたか!? 今ちょっと所用で横浜を離れていますけれど、普段は横浜の街で生活しているので。早く横浜に帰りたいです。
 四年間横浜を離れたことがありまして、その時の望郷の念が、横浜を舞台にするきっかけになりました。都会ってよく味気ないと言われますけれど、それでもわたしにとっては立派な故郷なんですよね。
>親しみやすく、情景が浮かびやすかったという利点もありましたが。
→そう言って頂けると助かります。本当はもっと細かい描写があったのですが、100枚という枚数制限がありまして、そこで大幅に削ってしまったんですよね。
>「歩く歩道」ではなく「動く歩道」です。この間違いはダメ!笑っちゃいます。
→nさんの御指摘を受けて、早速訂正させて頂きました。ご報告、本当にありがとうございました。
 なんなんでしょうね、「歩く歩道」って。歩いちゃ駄目でしょう、歩道さん……。

>これまで、いくつかの作品に50点を付けてしまいましたので、
>60点を付けたいところですが、無いので仕方なく・・・
→いえ、nさんの「60点をつけたい」というお言葉だけで十分その気持ちは伝わりました。凄く嬉しいです。

 最後に、nさん、ご感想本当にありがとうございました。
 50点という高い評価点も嬉しいのですが、なにより嬉しかったのは、長い小説なのにこうして読んで頂き、読者の方から嬉しいお言葉を頂いたことです。
 また、nさんのお名前は、他の作者様の感想欄で度々目にしておりました。この度、こうしてnさんから感想を頂けたこと、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。

 nさん、本当に、本当にありがとう。この企画で、あなたに出会えたこと、感謝したいと思います。

pass
2011年01月13日(木)01時49分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 真柴竹門さん、はじめまして。作者の金椎響です。
 最初に、200を超える作品の中からわたしの作品を読んで下さって、本当にありがとうございます。これだけの数の作品が投稿されると、わたしの作品はすぐに埋もれてしまいますので。こうして光を当てて下さると嬉しいです。
 そして、返信が遅れてしまい大変申し訳ございませんでした。以下、遅ればせながら、返信を綴っていきたいと思います。

 実は、真柴竹門さんの得点によって、ついにこの作品に「王冠」がつきました!
 わたしの作品に「王冠」が授与されたこと、それは一重に皆さんから頂いた点数の積み重ねに他なりません。
 わたしの作品を読み、そして点数を入れて頂いた読者の皆さま、本当に、本当にありがとうございました!

>元日の再放送「ハーバード白熱教室」を聴きながら書いてます。
→昨年の一年間は、サンデル先生で持ち切りでしたね(笑) リーマンショックと百年に一度の大恐慌。かつて『ソフィーの世界』が席巻した時を思い出しますね。
>実は十二月初旬に、この作品を読んだのですが色々とあったので、今頃になって感想を投稿します。
→ありがとうございます。読者からなんのレスポンスもなかったので、てっきり誰も読んでいなかったのかと思っていました。こうして誰かに読んで頂けること、それだけで作者は嬉しい気持ちです。

>鉛色のような世界観がたまりませんね。文体の硬さともフィットしています。
→そのように言って頂けると、作者としては嬉しい限りです。
 わたしはどちらかというと、小説家というよりも詩人なので、単純な面白さよりも世界観や雰囲気・読後感を重視しておりますので、それを読者の方に評価して頂けると凄い嬉しいです。

>立ち入り禁止の屋上の校舎で夕日を見ながら、伊豆見左近の哲学が最も炸裂するシーンがありますよね。
>野蛮な無神経に対する批判は「ライアーゲーム」(四巻)の『無関心』を彷彿させられました(あれは「疑い」の話ですけど)。
→ごめんなさい。『ライアーゲーム』は題名しか耳にしたことがなくて。
>逆に、主人公が嫌々ながらも伊豆見左近が気になり(つまり神経を費やし)、一方の伊豆見左近も主人公に興味を持つ。それにより互いが大切な存在にゆっくりながら成っていく、相手が気になるから『生命の算術』以上に明確な価値基準(?)が形成される。その過程を描いた作品だと捉えました。
→読者の方の感想を聞いていると、作者なのにうきうきしてしまいます。

>だから逆にクオリアネタが余計な気がするんです。
>もし繋げるのなら「クオリアは究極的に個人的体験なのに、親しい人が傷つくと痛むし、自分の痛みを自分以上に感じてるような人がいる。どうしてかな?」……的な展開をしたら、無神経の話と繋げられる気がします。
→感想の欄でちらっと書いてしまったんですが、伊豆見の心情についてはギリギリまでぼかす方針だったので、そのような展開には思い至りませんでした。なるほど、確かに良い繋ぎ方かもしれませんね。
 伊豆見にしては凄い踏み込んだ発言ですけど、そんな風に問われるとドキっとしますね。
 また、当初は本作を書いた後は純粋な読者に徹しようと思っていたので、自分の思っている事をとにかく詰め込んでしまったところはあると思います。

>ただ、話題自体が難しいから前もって知識のある私のような読者ならともかく、初めて知る読者には堅苦しすぎる説明です(笑)。
>これじゃあ理解できる人は少ないでしょうから「日頃はあまり意識することのない「哲学」について、少しでも想いを馳せて頂ければ」が果たせてないかと。
→ですよね(笑)
 でも、いいんです。そもそも百枚という枚数の時点で、多くの方はクリックすらしないので。わたしは読者の方全員に理解してもらったり、楽しんでもらわなくても良い、という考えの人間です。
 わたしと同じような感性の人に共感して頂いたり、世界観や読後感、あるいは「ぼく」や伊豆見の物語を読み説いて頂ければ、作者は満足です。
 というか、そういう意識じゃないと、アウシュヴィッツの哲学とか書けなかったです(笑)
>硬い文体や世界観のまま、なおかつ分かり易い説明。……私では解決案を思いつけられません(笑)。結局、いきつく先はテクニックですかな?
→個人的に、それができる人が職業作家になるのだと思います。

>さて「upa・R・upa」さんが……ただ、ラストの展開は哲学的なものと絡めて欲しかったなとも思えます。なんか恋愛的感情に押されて、哲学的な要素を押し流して(ニーチェはちらっと出てきましたが)ゴールしてしまった感があったかなと感じるのです。途中まで出てきた哲学的な論理と展開はどうなってしまったのか。
>という批判をしています。しかしそれを打開する案があるかと思うのですよ。それもアウシュヴィッツネタです。フランクルの「夜と霧」でこんな話があった記憶があります。簡単に言えば……「あの極限の状況でどんな人が生き残るか? それは、生きたいという願望を支えにしてる人ではない。誰かから「生きて欲しい」と望まれていることを支えにしてる人だ」……でしたっけ?(間違っては、いないと思うのですが)。
>このネタを利用すれば、何とか恋愛要素と結べるんじゃないですかね?
→フランクルの『夜と霧』をご存じとは!? ただ、アウシュヴィッツ関連の人間は程度の差であれ、『生命の算術』にとらわれているんですよね。フランクルの言葉は「誰かから望まれる命でなかったら、生き残るに値しない」と言っていることと同義だとわたしは思っちゃって。
 わたし達は、彼らを安易に非難してはいけないけれど、「仕方がなかった」の一言で済ませてはいけないと思います。だから、少なくとも伊豆見の口から言わせちゃいけないかな、なんてその時は思ったんです。
 とはいえ……いやはや、まさかこれを言うことになるとは思いませんでした。真柴竹門さんは、本当に哲学に対して造詣が深いんですね。

>ただ「ぼく」のおかげで昔よりも生きたいという願望が強くなった、という展開にすれば良い感じになるかと思います。
→確かに、そういう展開をもうちょっと上手く読者の皆さんに掲示できれば、もっと良くなりそうですね。これは素直に反省しております。

>長々と説明しましたが、面白く読めたことをここで明言しておきます。
>アピーさんの言うとおり純文学のような面白さでした。まあ、これもまたアピーさんと同じく「疲れたー」となりましたが(笑)。
→それはどうもありがとうございます。わたしは、金椎響の作風は中間小説だと思います。純文学ほど難解でなく、かといって大衆小説のようなエンターテイメント性はない、みたいな。もっとも、多くの方が少なくともライトノベルじゃない、と仰ってますけど。
 ともかく、読者の方から「面白く読めた」と言って頂けると、作者として本当に幸せです。
>萌えは全然ないのですが、哲学面はしっかりしています。
→記号的な「萌え」は鼻から想定していなかったりします。伊豆見左近という人間を、100枚という枚数で書き綴った、という感じです。
 哲学面がしっかりしているというお言葉、ありがとうございます。ちなみに、この小説は学部生時代に書いた論文の一つをもとにして書いたものです。十分の一も、論文の内容は書いていませんけど。
>金椎響さんの作品はこれしか読んでません。
→この調子で、わたしの他の著作にも感想をつけて頂けると、個人的には凄く嬉しかったりします(笑)
>四冊もの百ページ作品をこんな短期間でポコポコ作り出せる体力には驚かされます。私は体力がありませんからね。何かを成すのには体力が重要になってきます。ホント羨ましいッス!
→100枚という枚数に、皆さん結構驚かれるんですが、わたし的には20枚とかで収める方がよっぽど凄いと思います。わたしは普通に制限枚数100枚をオーバーしてしまう人間なので。構成能力に難あり、なのでしょうか。
 体力は、普通だと思いますよ。どちらかというと、「欠くなら書け」という感じで、欠けている・不足していると思うから、その穴埋めとして自己表現に時間を費やしているという感じです。
 
>大塚英志の「世界観は細部に宿る」も同意です。というか金椎響さんですから可能な気がしました。
→ありがとうございます。
 わたしはエンタメ小説で読者を楽しませる、ということよりも、雰囲気、世界観、登場人物、そして問題提起といった、単純な娯楽以外のものを読者に提供したいと思っておりました。
 一つ一つの言葉が積み重なって、世界観って築かれるものだと思うんです。だから、一見すると無駄、無意味と思われる単語が連なって、物語を形作る。だから、小説に無駄だとか無意味だと呼ばれるものは、本当は一つもないんじゃないかなって、わたしは思います。
 真柴竹門さんにそう評価して頂けると、わたしとしても鼻が高いです。

>点数は五十点です。どうか体力を過信して体を壊さぬようお気をつけて。
>濃厚な作品を読ませて頂き、ありがとうございました。
→ありがとうございます。わたしの小説を高く評価して下さる読者がいることを、胸に刻んでこれからも小説創作に臨みたいと思います。

 あと、先日メールを頂きました。『She said to me, ”GODSPEED”』の方に感想を記して頂けたみたいなのに、返信ができずに申し訳ありませんでした。感想が頂けずとも、少なくとも誰かが読んで下さったということ、本当に感謝しております。

 作者として、改めてお礼を申し上げたいと思います。
 真柴竹門さん、本当に、本当に、ありがとうございます。あなたのような素敵な方に感想を記して頂けたこと、本当に感謝しております。

pass
2011年01月13日(木)01時38分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 110K1さん、感想どうもありがとうございます。
 傍観者という態度を破り、わざわざ書きこんで頂けたこと、感謝しております。
 なによりも、わたしの書いた作品全てに感想を記して頂けたこと、本当に嬉しいです。

>著者は生命の算術の詳細を語りながら、決して作品の中で死を描かなかった。(……)それは、リアリズムだ。現代社会が脱臭した死だ。まだ死を目の当たりにしていない高校生が捉える死の限界だ。作者は生命の算術という最大のテーマを、死の描写を抜きにして語る。
→ありがとうございます。第一作目は現実派路線だったので、そのように評して頂けると幸いです。

>著者は妥協しない。多感な高校生を語り部に、徹底的に「ぼく」を、そして伊豆見を描き出す。そこにはドラマティックなイベントは存在しない。横浜を舞台にした現実がただ描かれている。作者はエンターテイメントを読者に差し出さない。「ぼく」という物語を、「ぼく」という生き様を書き記す。(……)きっとそこに金椎響の哲学がある。どこまでも現実的で、徹底的なものがある。私達の生きる世界の延長線に、この物語はある。
→ここまでしっかりと解説されてしまいますと、作者として申し上げることはもうないですね。

>この物語で描かれる恋愛は、恐らく読者を楽しませるエンターテイメントではない。人が生きる場所に愛がある、という淡々とした現実があるだけで、そこにばかり焦点を当てるのは恐らく適当ではない。(……)この作品で味わうべきは、雰囲気や余韻と言ったものなのだろう。あるいは無味乾燥とした現実感か。もしくは身も蓋もない現実の延長線か。
→なんということでしょう。わたしがしゃしゃり出て解説する必要性が皆無です。

>伊豆見が引き合いに出す哲学者の意見は、恐らくミスリードだ。哲学的な要素を全てそこに還元しようとするならば、それは読者の落ち度だ。これはリアル、現実の哲学だ。私達が哲学書を嗜み思考し得る哲学を、日々の生活の中で見出される人生哲学だ。伊豆見から滔々と語られる哲学に満足しているようでは理解が足りない。その先にある、彼と彼女の現実の中に真の哲学が宿っている。
→実は、金椎響は人生哲学についてはかなりシビアに考えています。それこそ、ホッファー並に勉強していないと認めない、みたいな原理主義的なものがあります。そう考えると、現実の哲学なのかな、なんて作者は思ってしまいますが。110K1さんがそう仰るからには、それなりの現実感を持った哲学を有しているのでしょう。

>感想の中で気になる文章を見つけた。小説に対してだからどうした、で終わるのは作者の責任ではない。文章の羅列に、綴られる物語に対して誠実に、真剣になり切れない読者の落ち度だ。作者が提示する主題に向き合っていない読者の到らない未熟さだ。
→いえ、こればかりは作者にも問題があると思います。やっぱり、作者は読者の期待にある程度は答えなくちゃいけないと思うので。
>作者にあれもこれも求めるなど、笑止千万な行為だ。作者が読者が求めているものを全て与える、なんて聞いたことがない。百人中百人が満足する小説。全ての人間の効用を満たす物語。そんなものは現実の世界に存在しない。夢見がちなロマンチストの戯言だ。例えそんなものがあったとしても、それは既に小説ではない。文化や信仰と言った、別の次元のものだ。
→それは同感です。だから、全ての方から50点満点を頂ける小説を書こうと思っちゃいけないんですよね。それはもう小説じゃない。なので、わたしはキーを叩く時、いつも自分を見つめ直しています。わたしが本当に表現したいものはなんだろう、と。それが見つかったら、あとはひたすらキーを叩きまくる。
 そして、そうしてできあがった小説が、誰かのこころに響いてくれたら、これ以上の幸せはありません。

>そもそも、他人に哲学の教えを請う行為自体が愚かな所業だ。自分の頭で考えろ、そう作者だってはっきり言っているではないか。他人から与えられる哲学を、今か今かと待ち望むなど賢明な人間のする行いではない。それとも権威が書き出した「高尚な哲学」を、有り難や有り難やと言って無批判に受け入れるとでも言うのか、まったく馬鹿馬鹿しい話だ。
→えっと、問題提起になればいいな、と考えております。「自分の頭で考えろ」は、ちょっと言い過ぎですね。
 結局のところ、ただ哲学を手っ取り早く学びたいのであれば、市販のハウツー本で事足りるんですよね。それこそ、十代二十代の若年層が手に取りやすそうな「萌え」な絵がついた入門者も、普通に書店の本棚にありましたし。
 わたしがやりたいことは、やっぱり「小説」を書く、ということだったんだと思います。

>同じ次元で、この作品にライトノベルズを求めるのは間違っている。筋違いだ。それは百枚という枚数からも、文体からも、そこで描かれている物語からもわかる。金椎響はそんな軽くて薄っぺらいものを書きたいだなんて皆目毛頭思っていない。そんな作者にライトノベルズが何たるかを滔々と語ったところで失笑されるだけだ。
→いえいえ、わたしは読者の方の感想は真摯に受け止めますので、失笑なんてしませんよ。
 ただ、確かにライトノベルを書いている意識はあんまりなかったですね。処女作だったものですから、色々と気合が入ってました。

>私の個人的な拡大解釈など、お呼びでなかったのだろう。私は非常に恥ずかしい気持ちだ。作者や他の読者は私を笑うのだろう。馬鹿な奴だ、と。買い被りも甚だしい、と。しかし、書かずにはいられなかったのだ。こうしてしたり顔で、恥も外聞もなくこの作品を語ることを、どうか許してもらいたい。
→いや、違います。作者は読者の率直な意見を求めています。それが、あなたが「個人的な拡大解釈」であろうとなんであろうと、わたしはあなたの言葉を、感想が欲しいです。
 だから、本当に嬉しいです。110K1さんが欲していた小説を提供できたという喜び、わたしの小説を読んで頂けた幸せ、そして、開設の様な素晴らしい感想と50点という高い評価。作者冥利に尽きます。本当に、わたしは嬉しくて嬉しくて……。

 最後に、110K1さんが御自身の信念を曲げてまで書いて下さった感想、わたしのこころに響きました。
 110K1さん。本当に、本当に、ありがとう。

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2011年01月07日(金)18時48分 tabibito  +40点
カメラを覗き込むように、横浜の景色を楽しむことができました。
色彩も味わえました。

お母さんのキャラクターが現実的で、しおりのようで好きです。
138

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2011年01月06日(木)01時57分 n  +50点
素晴らしい!
枚数に押され、長いな〜と思ってなかなか読まなかったのですが、
読むうちに「もう半分?」「終わらないで!」と意識が変化していきました。

「一目惚れからの恋心を綴った文学作品」として、
私の中で心に残るものの一つになりました。
一目惚れを描くのに、カメラ小僧はピッタリですね。
軽い感じや下世話な感じにならないために、哲学的な要素が大いに貢献していて、
それぞれの要素が相乗効果をもたらしているなぁと感心します。

二人の恋が、丁寧に大切に綴られ、それに非常に好感がもてます。
壊したくない美しいものを見ている感じで恍惚としました。
若い子にはこういう恋愛小説を読んでもらいたい!

ただ、あまりに地元の人間ですので、「老松中?」とか途中で思ってしまい・・・(笑)
親しみやすく、情景が浮かびやすかったという利点もありましたが。
「歩く歩道」ではなく「動く歩道」です。この間違いはダメ!笑っちゃいます。

これまで、いくつかの作品に50点を付けてしまいましたので、
60点を付けたいところですが、無いので仕方なく・・・
145

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2011年01月02日(日)01時33分 真柴竹門  +50点
はじめまして、真柴竹門です。元日の再放送「ハーバード白熱教室」を聴きながら書いてます。
実は十二月初旬に、この作品を読んだのですが色々とあったので、今頃になって感想を投稿します。
鉛色のような世界観がたまりませんね。文体の硬さともフィットしています。
立ち入り禁止の屋上の校舎で夕日を見ながら、伊豆見左近の哲学が最も炸裂するシーンがありますよね。
野蛮な無神経に対する批判は「ライアーゲーム」(四巻)の『無関心』を彷彿させられました(あれは「疑い」の話ですけど)。
逆に、主人公が嫌々ながらも伊豆見左近が気になり(つまり神経を費やし)、一方の伊豆見左近も主人公に興味を持つ。
それにより互いが大切な存在にゆっくりながら成っていく、相手が気になるから『生命の算術』以上に明確な価値基準(?)が形成される。
その過程を描いた作品だと捉えました。だから逆にクオリアネタが余計な気がするんです。
もし繋げるのなら「クオリアは究極的に個人的体験なのに、親しい人が傷つくと痛むし、自分の痛みを自分以上に感じてるような人がいる。どうしてかな?」
……的な展開をしたら、無神経の話と繋げられる気がします。また、無神経の話を「ハーバード」の「フリーライダー」の話と繋げるのもアリかも。出すぎた主張ですが。
ただ、話題自体が難しいから前もって知識のある私のような読者ならともかく、初めて知る読者には堅苦しすぎる説明です(笑)。
これじゃあ理解できる人は少ないでしょうから「日頃はあまり意識することのない「哲学」について、少しでも想いを馳せて頂ければ」が果たせてないかと。
硬い文体や世界観のまま、なおかつ分かり易い説明。……私では解決案を思いつけられません(笑)。結局、いきつく先はテクニックですかな?

さて「upa・R・upa」さんが……

>ただ、ラストの展開は哲学的なものと絡めて欲しかったなとも思えます。なんか恋愛的感情に押されて、哲学的な要素を押し流して(ニーチェはちらっと
>出てきましたが)ゴールしてしまった感があったかなと感じるのです。途中まで出てきた哲学的な論理と展開はどうなってしまったのか。

という批判をしています。しかしそれを打開する案があるかと思うのですよ。
それもアウシュヴィッツネタです。フランクルの「夜と霧」でこんな話があった記憶があります。簡単に言えば……
「あの極限の状況でどんな人が生き残るか? それは、生きたいという願望を支えにしてる人ではない。誰かから「生きて欲しい」と望まれていることを支えにしてる人だ」
……でしたっけ?(間違っては、いないと思うのですが)。
このネタを利用すれば、何とか恋愛要素と結べるんじゃないですかね?
別に伊豆見左近が自殺願望の持ち主じゃなくてもいいんです。ただ「ぼく」のおかげで昔よりも生きたいという願望が強くなった、という展開にすれば良い感じになるかと思います。

長々と説明しましたが、面白く読めたことをここで明言しておきます。
アピーさんの言うとおり純文学のような面白さでした。まあ、これもまたアピーさんと同じく「疲れたー」となりましたが(笑)。
萌えは全然ないのですが、哲学面はしっかりしています。
金椎響さんの作品はこれしか読んでません。四冊もの百ページ作品をこんな短期間でポコポコ作り出せる体力には驚かされます。
私は体力がありませんからね。何かを成すのには体力が重要になってきます。ホント羨ましいッス!
大塚英志の「世界観は細部に宿る」も同意です。というか金椎響さんですから可能な気がしました。

点数は五十点です。どうか体力を過信して体を壊さぬようお気をつけて。
濃厚な作品を読ませて頂き、ありがとうございました。

141

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2010年12月25日(土)13時13分 110K1 KI8qrx8iDI +50点
 今まで傍観者として沈黙を守ってきた。しかし、ついに耐えかねて不本意ながらも書き込むことにした。読者の数だけ解釈がある。その言葉に甘えて感想を送る。

 著者は生命の算術の詳細を語りながら、決して作品の中で死を描かなかった。それは読者がそれを求めていない、という作者なりの自制心だったのかもしれない。しかし、私はそう考えない。
 それは、リアリズムだ。現代社会が脱臭した死だ。まだ死を目の当たりにしていない高校生が捉える死の限界だ。作者は生命の算術という最大のテーマを、死の描写を抜きにして語る。それを説得力がない、というのは筋違い、見当違いも甚だしい。
 むしろ、死を描かなかったからこそ、読者は瑣末な事象に囚われず生命の算術に対して、考えを巡らすことができる。作者は後に、四作目『死の季節』にて脱臭された死について深く語っている。そこでは対照的に、重々しい雰囲気を存分に醸し出している。
 著者は妥協しない。多感な高校生を語り部に、徹底的に「ぼく」を、そして伊豆見を描き出す。そこにはドラマティックなイベント、ひいてはエンターテイメントは存在しない。横浜を舞台にした現実がただ描かれている。作者はエンターテイメントを読者に差し出さない。「ぼく」という物語を、「ぼく」という生き様を書き記す。
 私には作者の意図がはっきりと見える訳ではないが、きっとそこに金椎響の哲学がある。どこまでも現実的で、徹底的なものがある。私達の生きる世界の延長線に、この物語はある。
 この物語で描かれる恋愛は、恐らく読者を楽しませるエンターテイメントではない。人が生きる場所に愛がある、という淡々とした現実があるだけで、そこにばかり焦点を当てるのは恐らく適当ではない。いや、読者にはそれぞれの楽しみ方があるのだから、それでも良いと思うが。この作品で味わうべきは、雰囲気や余韻と言ったものなのだろう。あるいは無味乾燥とした現実感か。もしくは身も蓋もない現実の延長線か。
 伊豆見が引き合いに出す哲学者の意見は、恐らくミスリードだ。哲学的な要素を全てそこに還元しようとするならば、それは読者の落ち度だ。これはリアル、現実の哲学だ。私達が哲学書を嗜み思考し得る哲学を、日々の生活の中で見出される人生哲学の有様と限界を記している。
 伊豆見から滔々と語られる哲学に満足しているようでは理解が足りない。その先にある、彼と彼女の現実の中にに、真の哲学が宿っている。それがこの作品の真の狙いのように、私は思う。

 感想の中で気になる文章を見つけた。小説に対してだからどうした、で終わるのは作者の責任ではない。文章の羅列に、綴られる物語に対して誠実に、真剣になり切れない読者の落ち度だ。作者が提示する主題に向き合っていない読者の到らない未熟さだ。
 作者にあれもこれも求めるなど、笑止千万な行為だ。作者が読者の求めているものを全て与える、なんて聞いたことがない。百人中百人が満足する小説。全ての人間の効用を満たす物語。そんなものは現実の世界に存在しない。夢見がちなロマンチストの戯言だ。例えそんなものがあったとしても、それは既に小説ではない。文化や信仰と言った、別の次元のものだ。欲しかったものが与えられないのを訴えて恥を晒すのは、賢明な行為ではない。
 そもそも、他人に哲学の教えを請う行為自体が愚かな所業だ。自分の頭で考えろ、そう作者だってはっきり言っているではないか。他人から与えられる哲学を、今か今かと待ち望むなど賢明な人間のする行いではない。それとも権威が書き出した「高尚な哲学」を、有り難や有り難やと言って無批判に受け入れるとでも言うのか、まったく馬鹿馬鹿しい話だ。
 同じ次元で、この作品にライトノベルズを求めるのは間違っている。筋違いだ。それは百枚という枚数からも、文体からも、そこで描かれている物語からもわかる。金椎響はそんな軽くて薄っぺらいものを書きたいだなんて皆目毛頭思っていない。そんな作者にライトノベルズが何たるかを滔々と語ったところで失笑されるだけだ。

 私の個人的な拡大解釈など、お呼びでなかったのだろう。私は非常に恥ずかしい気持ちだ。作者や他の読者は私を笑うのだろう。馬鹿な奴だ、と。買い被りも甚だしい、と。しかし、書かずにはいられなかったのだ。こうしてしたり顔で、恥も外聞もなくこの作品を語ることを、どうか許してもらいたい。
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2010年12月09日(木)22時57分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 牛髑髏タウンさん、こんにちは。作者の金椎響です。返信が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
 最初に、わたしの作品を読んで頂き、感想を頂けたことに感謝したいと思います。
 牛髑髏タウンさん、本当にありがとうございます。

>金椎響さんの作品はいずれもほぼ上限の100枚近いので、遅読の私としては覚悟のいる(笑)ところだったのですが、もっとも高評価となっているこちらの作品を読ませていただきました。
→ごめんなさい。
 最初に断っておきたいのですが、牛髑髏タウンさんの作品は本当に素晴らしかったです。
 それ故、感想を頂きたかったから牛髑髏タウンさんの作品に感想をした訳ではないことを、まず最初に記しておきたいと思います。我ながら褒めちぎってしまいましたが、あの感想がわたしの偽らざる心境なのです。
 この企画において、プリントアウトまでしてしまった作品は、牛髑髏タウンさんの作品だけです。それくらい、わたしは気に入っております(笑)

>率直に言って、面白かったです。
>最後まで読むのに苦痛は感じませんでした。長いのですが、けして「無駄に長い」ということはないと思います。
→ありがとうございます。
 読者の方にそう言って頂けると、作者として本当に嬉しい限りです。
 作者と致しましては、99枚という枚数だったので読者の方に負担を強いているような気がしてしまうのです。なので、そのように言って頂けるとなんだか凄く救われた気分になります(笑)

→たしかにテンポはゆっくりで、ちょっとじれったいところもあるのですが、話のテーマの重さにもあっているし、どっぷりと雰囲気に浸れるので読後感が良いです。
→そう言って頂けると、作者冥利に尽きます。
 話のテーマの重さと雰囲気については賛否両論ありましたので、今後はデメリットをなるべく少なくしてメリットを最大限生かすような小説創作に繋げていきたいと思います。

>この話、私は彼女よりも主人公の話だと思いました。
>前半は、ちょっと被害妄想気味で頭の中では周りを見下しているけど何も行動できない「ぼく」のヘタレっぷりにイライラさせられましたが、最後はすっかり彼を応援していました(笑)。
→実は、わたしがこの作品で一番描きたかったのは「ぼく」だったりします。
 ウザがられるのを承知で「ぼく」を語り手にした一人称の形式にしたのも、そのためです。
 そういう意味では、「彼女」の話というよりも、「ぼく」の物語だと言う牛髑髏タウンさんの御指摘は当たっていると思います。

>正直、彼女のほうは何を考えているのかいまいちわからない感じもあったのですが、主人公の変化がこの作品の魅力だと思いました。
→ありがとうございます。
「彼女」に関して言えば、何を考えているのかいまいちわからない感じで描写致しました。
 それは哲学的なテーマをその描写に込めたから、というのもありますし、「彼女」のミステリアスな雰囲気を醸成したかったからでもあります。
 主人公の変化については当初からわたしが描きたかった部分だったので、魅力と言って頂けると、本当に嬉しいです。

>ちょっと、言い回しが軽すぎて作品の雰囲気にあわないかなと思いました。好みの問題かもしれませんが。
→確かに軽いですね(苦笑)
 一応、「ぼく」は気難しい奴なんですが、無感動な奴ではないですのでそのような表現にした経緯があります。

>「耳障り」は意味が逆かなと思います。
→御指摘の通りです。早速、訂正させて頂きます。
 わざわざご報告して頂いて、ありがとうございます。

>それから、話の本筋にあまり関係ない固有名(「京浜東北線や横浜線」とか「東芝エレベーター」とか)が出てくると、一瞬現実に引き戻される感じがします。逆にタムロンは良かったですが。
→固有名詞に関しては、当初迷ったのですが「ぼく」や「彼女」がさも横浜の街にいるかのような、現実感を出したくて固有名詞を出したのですが……逆効果だったかもしれません。

>哲学的な部分では、もう降参です。問題提起をしたいという金椎響さんの意図に見事にひっかかったようで、とても考えさせられました。
→そう言って頂けると、この作品を書いた甲斐がありました。
 この作品を通じて、作者の方々に日頃はあまり意識することのない「哲学」について、少しでも想いを馳せて頂ければ、作者としてこれ以上の幸いなことはないです。

>読み応えのある作品をどうもありがとうございました。
→いえいえ。こちらこそ、読んで頂いてどうもありがとうございました。

 最後に、99枚という枚数と気難しい文体のなか、わざわざこの作品を読んで頂いたばかりか、感想まで頂いたこと、本当に感謝しております。
 また、この企画を通じて不覚にも「惚れて」しまった作品の作者である牛髑髏タウンさんから、このたび感想を頂けたことは、わたしにとって非常に励みになりました。
 最後に。牛髑髏タウンさん、本当にありがとう。

pass
2010年12月04日(土)17時37分 牛髑髏タウン DN9w0wBvqc +30点
金椎響さんの作品はいずれもほぼ上限の100枚近いので、
遅読の私としては覚悟のいる(笑)ところだったのですが、
もっとも高評価となっているこちらの作品を読ませていただきました。

率直に言って、面白かったです。
最後まで読むのに苦痛は感じませんでした。長いのですが、けして「無駄に長い」ということはないと思います。

たしかにテンポはゆっくりで、ちょっとじれったいところもあるのですが、
話のテーマの重さにもあっているし、どっぷりと雰囲気に浸れるので読後感が良いです。

この話、私は彼女よりも主人公の話だと思いました。
前半は、ちょっと被害妄想気味で頭の中では周りを見下しているけど何も行動できない「ぼく」のヘタレっぷりにイライラさせられましたが、最後はすっかり彼を応援していました(笑)。正直、彼女のほうは何を考えているのかいまいちわからない感じもあったのですが、主人公の変化がこの作品の魅力だと思いました。

あと全体として完成度が高いだけに、ちょっとだけ文章表現で気になったところを挙げさせて下さい。

>「それ笑って言っちゃいますか!?」
>「分かれとか言われてもね。……あと、ストーキング言うな!」
ちょっと、言い回しが軽すぎて作品の雰囲気にあわないかなと思いました。好みの問題かもしれませんが。

>皆口では耳障りなことを言って、
「耳障り」は意味が逆かなと思います。

それから、話の本筋にあまり関係ない固有名(「京浜東北線や横浜線」とか「東芝エレベーター」とか)が出てくると、一瞬現実に引き戻される感じがします。逆にタムロンは良かったですが。

哲学的な部分では、もう降参です。問題提起をしたいという金椎響さんの意図に見事にひっかかったようで、とても考えさせられました。

読み応えのある作品をどうもありがとうございました。

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2010年11月18日(木)03時13分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 ジューダスさん、まずは感想を頂いたこと、誠に感謝しております。
 百を超える作品が集まるこの企画において、わたしの小説をわざわざ読んで頂いたこと、本当に嬉しく思います。

>>彼女というエフェクトはセピア色に褪せた現実を、高いコントラストにしてくれるのではないか、
>ここで吹きました。読み進めようかどうか迷いました。
→皆さんから不適切な表現として上げてもらっている個所です。
 この点に関して言えば、前の感想ですで記しておりますが、写真部である「ぼく」なりの表現としていれました。
 今回の指摘も含めて、作者の独り善がりはいけないな、と猛省しております。今後は読者に読み進めてもらえるよう、表現の一つ一つに気を配って、嘲笑われるのではなく微笑まれる文章を記していきたいと思います。

>全体的に比喩表現が不自然でかえって心象や情景が曇っていると思います。
 確かに、比喩表現の多様で本来の心象や情景が曇ってしまったかもしれません。作者としましては、高校生の「ぼく」ならではの世界の捉え方を表現したつもりでしたが、この点についても他の読者の方から「冗長である」と御指摘を度々受けているところでした。
 ジューダスさんの感想を真摯に受け止め、今後は心象や情景が晴れた、自然な比喩表現の使用に努めていきたいと思います。

>哲学的なやりとりも頑張っているのはわかるのですがそれらしい単語を使ってそれっぽく見せられている感は拭えませんでした。
 そのように言われるとぐうの音も出せません。
 ただ、わたしは今回、この作品を「読者が哲学を学ぶ上で問題提起となれば」と思い執筆致しました。その上で、作中でわたしの言いたいことや主張、あるいは過去の哲学者の思想を粒さに語るのではなく、読者の方に疑問や非難を喚起する様な表現を意図的に用いた個所がございますので、その点についてはご了承のほど、よろしくお願いします。

>ニーチェだろうがホッファーだろうが哲学なんてだいたいが「それがどうした」で終わるものだと思うので巧く見せないとただのじれったい文章になるだけです。
 じれったい文章の羅列で読者の方々には大変不快な気分にさせてしまったことを、この場で謝罪したいと思います。
 また、上手く見せられず、「それがどうした」レベルで終わってしまったのは、一重に作者の技量不足であります。その点につきましては、今後努力を重ねて、精進していきたいと思います。
 ただ、わたくし個人の意見としまして、ジューダスさんの仰られるような<哲学なんてだいたいが「それがどうした」で終わるもの>だとはわたしは考えておりません。わたしは「それがどうした」で終わるのはただの思考停止だと考えております。
 哲学で重要なのは、ニーチェがどう言った、ホッファーがこう言った、をただ唯々諾々と受け入れるのではなく、それを種に考えねばならないものだと常々思っております。現に、哲学はそうやって先人の築いた哲学を時に痛烈に批判することで発展した学問分野の一つであると、わたしは思っております。

>以上で感想を終わりたいと思います。
>不適切でしたら削除申請して下さい。

 正直な作者の心境を申しますと、凄く悲しいです。
 その時のわたしの全力がむざむざと否定されたようで、思わず胸をかきむしりたくなりました。
 ジューダスさんの率直な感想は確かに作者としましては、本当にありがたい限りです。 ですが、正直、かなり堪えました。キーを打つ手が震えてしまいました。
 得点に関して言えば、あまり気にしておりませんでした。しかし、他の読者の方々から頂いた貴重な点数を取り上げられた様な気がして、空しい気分です。
 また、<不適切でしたら削除申請して下さい>というのも、気に障ります。わたしとて、下手ですがそれなりの熱意を持って作品作りに取り組んだつもりです。ジューダスさんも、わたしにはそれが何かはわかりませんが、何かの信念に則って、この感想を書いて頂いたのだとお察しします。
 それなのに、自分からそのように書くのはやめて下さい。むしろ、御自身で不適切だと思うくらいなら、感想など記して頂けなかったはずだと、思いますので。どうか、御自身の意見に胸を張って下さい。
 金椎響とかいう無名のアマチュアに−30点をあげたことが、ジューダスさんの誇りになるか、と問われれば、ちょっと疑問ですけれど。

 ですが、自分にとって「良い助言」とは耳が痛く、総じて受け入れがたいものだとも思っております。また、「叱ってもらえるうちが花だ」とも言います。作品が百を超えた今、作品を読んで頂けること自体、感謝しておりますし、こうして叱って頂けるのもまた、嬉しく思います。
 その点では、小説の技術だけでなく、わたし自身のメンタルの弱さも痛感いたしました。今後は、小説の技術だけではなく、精神面でもタフになりたいと思います。
 そういう意味で、ジューダスさんの手厳しいながらも率直な感想を真摯に受け止めて、次の作品作りにしっかりといかしていきたいと思っております。
 至らないところが多々あって、気分を害されたと思います、本当に作者として至らなかったと反省しております。
 ジューダスさん、感想を頂けたこと、本当に感謝しております。

pass
2010年11月15日(月)23時58分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 こんにちは、作者の金椎響です。どうぞよろしくお願いします。
 〓〓〓さん、まずはこの作品を読んで頂き、本当にありがとうございます。
 99枚とこの企画では長い小説であるにも関わらず、読んで頂き、そして感想と評価を頂けたこと、誠に感謝しております。 

>平均点の高さに引き寄せられて読みました。期待が高い&完成度が高いせいか、逆に短所が目につきました。
→高い期待、そして完成度が高いと評して頂き、ありがとうございます。
 処女作、そしてこのような企画にはじめて投稿した作品だったので、とにかく思い入れが強い作品が本作品です。それ故、そのように評して頂けると、作者としては嬉しい限りです。
 逆に短所については、真摯に受け止め、今後の創作活動の教訓と糧にしたいと思います。

>彼女というエフェクトはセピア色に褪せた現実を、高いコントラストにしてくれるのではないか、
>意味不明なため、初回はここで読むのを止めてしまいました。
 すいませんでした。エフェクトというのは、写真の元データにかける処理を指す言葉です。後半で、夕日の写真を緑がかった写真に変える、というのもこのエフェクトに該当するのですが、説明不足でした。コントラストは彩度で、写真の鮮やかさ、みたいなものです。
 一応、カメラ用語は極力省いたつもりでしたし、カメラ好きな「ぼく」らしい表現をしたつもりでしたが、読者の皆様に対する配慮が欠けていたところがありました。申し訳ありませんでした。

>「ぼくは、気取った態度も嫌だけど、捻りがないのも嫌なんだ。それはぼくが捻くれているからっていうのもあるんだけど」
>二度目に通読し、終盤のこの台詞に凄く同意しました! 分かる、今なら君のことがよく分かるよ!!
→ありがとうございます。
 そのように言って頂けると、作者であるわたしは瞳が潤んでしまいます。鼻がツーンとなってきました。 

>タムロン伏線が回収されたところは爽快でした! そこで逆に「全押し」に対する「半押し」描写を期待してしまい、裏切られました。残念。
→ありがとうございます。
 期待を裏切ってしまって、申し訳ないです。確かにそこで「半押しだろう!」というご指摘、わかります。
 ただ、そこで「半押し」にする代わりに、最後に今までお預けだった「全押し」を解禁させてあげた方がいいかな、なんて思ってしまって。

>全体としては彼女もぼくも繊細で優しそうで好感が持てました。
→ありがとうございます。
「ぼく」も「彼女」も作者のわたしにとっては、自らの子どもみたいなものなので、そうやって好感を持って頂けると、作者冥利に尽きます。
>お母さんの描写が彼女をリアルに見せています。このまま大人になり、いちばん安心できるからなんて理由で結婚し、清潔でシンプルな生活を送りそうです。
→そう言われると、自分でこの作品を作っておきながらなんですが、「ああ、何か凄いほっこりする」とか思ってしまいました。
「ぼく」と「彼女」の物語は、ひとまずここで終わりですが、それでも横浜という街のどこかで、今日も彼らが仲良く生きていそうな気がすると、無性に嬉しくなります。

 〓〓〓さん、この度はご感想を頂けたこと、心から感謝しております。
 わたくしもこの作品を読んで下さったばかりか、このような形で〓〓〓さんと交流できた事を嬉しく思っております。
 わたし自身、これからも時間が許す限り、この企画に付き合っていきたいと思っておりますので、どうか、その時もまたどうぞよろしくお願いします。
 〓〓〓さん、本当にありがとうございます。

pass
2010年11月15日(月)19時24分 〓〓〓  +20点
こんにちは! 
平均点の高さに引き寄せられて読みました。期待が高い&完成度が高いせいか、逆に短所が目につきました。

>彼女というエフェクトはセピア色に褪せた現実を、高いコントラストにしてくれるのではないか、
意味不明なため、初回はここで読むのを止めてしまいました。

>「ぼくは、気取った態度も嫌だけど、捻りがないのも嫌なんだ。それはぼくが捻くれているからっていうのもあるんだけど」
二度目に通読し、終盤のこの台詞に凄く同意しました! 分かる、今なら君のことがよく分かるよ!! 

タムロン伏線が回収されたところは爽快でした! そこで逆に「全押し」に対する「半押し」描写を期待してしまい、裏切られました。残念。全体としては彼女もぼくも繊細で優しそうで好感が持てました。お母さんの描写が彼女をリアルに見せています。このまま大人になり、いちばん安心できるからなんて理由で結婚し、清潔でシンプルな生活を送りそうです。
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2010年11月14日(日)20時08分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 こんにちは、まちーさん。作者の金椎響です、どうぞよろしくお願いします。
 このたびは、99枚にも及ぶ長い小説を読んで頂いただけでなく、感想まで頂けたことを本当に感謝しております。
 まちーさん、本当にどうもありがとうございます。
 この企画で一、二を争う高得点・閲覧数を誇る作品の投稿者であるまちーさんからこのたび感想を頂けたことを、大変名誉なことに思います。

>+50点の評価をつけるのはこのサイトで初めてです。
>商業化レベルに近い、と個人的には感じました。
 ありがとうございます。
 そう言われると無性にディスプレイの前で微笑んで、明日顔面が筋肉痛になってしまいまそうです。
 目先の数字に一喜一憂することなく、まちーさんから頂いた得点の意味や込められた思いまでしっかり噛み締めながら、今後の創作活動にいかしていきたいと思います。

>ラノベ特有の「わかりやすさ」「面白おかしさ」「女の子の可愛らしさ」「刺激的な物語展開」を求める読者は冒頭の数ページで読むのをやめてしまう作品、とも私は感じました。
 まちーさんの仰る通りです。
 わたし自身もまた、その辺りのさじ加減が上手くできなかったな、と反省しております。
 特に、読者の求めているものを作者が提供できないというのは、致命的な点だとわたしも感じております。
 今後はまちーさんの御指摘を肝に銘じて、読者本位で小説を書いていきたいと思います。
 
>でも、この枚数でこのクオリティは評価したい。ぶっちぎりでクオリティが高い。それゆえにこの評価をつけました。実力がある作者さんだな、と。
 ありがとうございます。
 わたしとしてははじめての短編小説、投稿作品でまさに試行錯誤、といった感じでした。
 それ故「小説の質」というものがいまいちよくわからなくて、それ故加減ができなかったかも、と心配しておりました。
 
>文章ですが、読みやすかったです。特に引っかかるようなところも無く、流れるように読み進められました。かなりの創作センスとスキルをお持ちの方で、安定した筆力のある方だな、と思いながら読みました。
 まちーさんにそう言って頂けると、本当に嬉しいです。
 何分無駄に長いので、上手く流れを作ることができたか、作者としては不安でした。そのように言って頂けると、ホッとします。

>展開やドラマといった横軸のスピードが遅く、刺激や楽しさは少ないように感じました。実際に私は地の文の多いところは飛ばし読み、とまではいきませんがわりと速読し、物語の展開を早めました。
 小説としては刺激や楽しさがないと辛いですよね。
 その辺りを、今回の小説で上手く扱うことができなかったのは、作者ながら残念な思いで一杯です。

>哲学的要素ですが溢れていたと思います。主人公がカメラ好きという設定も、哲学的要素をUPさせる上ではかなり効果的に機能していたと思います。
 この企画では処女作ということもあり、哲学的要素についてはかなり頑張ったつもりなので、そのようなお言葉が頂けると、作者冥利に尽きます。

>萌え的要素ですがこれはあまり感じませんでした。ただ、読者に媚びるような人工的な可愛らしさ、人工的な萌えではなく、静寂に包まれたどこか世の中の無常さを帯びた物憂げな彼女の雰囲気やたたずまいに「知を愛する者の孤高さ、気高さ、美しさ」のようなものを感じました。いいですね。萌え、とは違いますが。
 まさに彼女を端的に表す言葉に、何だか凄い感動してしまいました。
 そうそう、わたしが追い求めていた「哲学的な彼女」はまさに伊豆見左近という彼女だ、とまちーさんの言葉を見て、改めて思いました。

>この作品の減点材料を思い浮かべると、萌え的要素の少なさ、真っ直ぐ過ぎる展開、冗長気味の地の文でしょうか? 
 凄い致命的な減点要素が並んでいて、ともすれば砕け散りそうです。
 ですが、まちーさんのご意見は正鵠を射ていると思います。
 真っ直ぐ過ぎる展開は、何と言いますか……そういうものが書きたいな、と思いまして。ただ、それが作者の独り善がりで終わってしまっては元も子もないですよね、すいません。
 今回、作者の意図と読者に対する誠意との均衡が上手く取れなかったことを痛感しております。そこは今後、精力的に取り組んでいって、改善するよう努力していきたいです。
 冗長気味の地の文は、捻くれた「ぼく」をそこで表したいな、という意図です。「ぼく」は外見等の描写はことごとく省いたので、せめて性格はどこかに書きたいな、なんて思いました。
 ですが、他の読者の方からも「読みにくい」と再三指摘を受けており、今後は直さなくてはいけない点ですね。

>でも、それらを踏まえてもなお、この作品には+50点をつけたい。
>そういう作品に感じました。
>何かの参考になれば嬉しい限りです。
 まちーさんの稀に見る素晴らしい感想、本当にありがたいです。
 ここまで丁寧に分析して頂けると、もう何と言って良いのかわからないくらいに助けになります。
 作者として小説を書いていると、どうしても視野狭窄に陥ってしまって、客観視しようと思っても客体になり切れないところがありまして。そういう時に、まちーさんの感想が道標のようにわたしを導いてくれるようで、本当に助かります。
 正直なところ、至らなかったところが多々あったにも関わらず、励ましのお言葉や高い評価を頂けたことを、本当に嬉しく思います。
 まちーさん、本当にありがとうございます。
 この企画を通じて、わたしの小説を読んで頂けたこと、そしてまちーさんに出会え、こうして交流できたことに心から感謝しております。

pass
2010年11月13日(土)04時33分 まちー RCPb5pz4Tw +50点
作品を最後まで読ませていただきました。
+50点の評価をつけるのはこのサイトで初めてです。
商業化レベルに近い、と個人的には感じました。

あえて難癖をつけるならば、この作品はあきらかにラノベとは違うちゃんと「文学している作品」というところでしょうか。それゆえに主人公ぼくの一人語りの地の文量が多くなり、物語の中で起きるドラマで魅せるのではなく、ぼくの心模様や認識を深める過程を読ませる作品となっているかと思います。なので、ラノベ特有の「わかりやすさ」「面白おかしさ」「女の子の可愛らしさ」「刺激的な物語展開」を求める読者は冒頭の数ページで読むのをやめてしまう作品、とも私は感じました。でも、この枚数でこのクオリティは評価したい。ぶっちぎりでクオリティが高い。それゆえにこの評価をつけました。実力がある作者さんだな、と。

さて、もうかなり感想を書いてしまったんですが(汗)、改めて各要素に分けて感想を書きます。

文章ですが、読みやすかったです。特に引っかかるようなところも無く、流れるように読み進められました。かなりの創作センスとスキルをお持ちの方で、安定した筆力のある方だな、と思いながら読みました。

ストーリーですが、この物語は、主人公の心模様や感性の感じ方、自分の認識を深める過程といった、どちらかというと物語の縦軸で読ませる作品であり、展開やドラマといった横軸のスピードが遅く、刺激や楽しさは少ないように感じました。実際に私は地の文の多いところは飛ばし読み、とまではいきませんがわりと速読し、物語の展開を早めました。

哲学的要素ですが溢れていたと思います。主人公がカメラ好きという設定も、哲学的要素をUPさせる上ではかなり効果的に機能していたと思います。

萌え的要素ですがこれはあまり感じませんでした。ただ、読者に媚びるような人工的な可愛らしさ、人工的な萌えではなく、静寂に包まれたどこか世の中の無常さを帯びた物憂げな彼女の雰囲気やたたずまいに「知を愛する者の孤高さ、気高さ、美しさ」のようなものを感じました。いいですね。萌え、とは違いますが。

この作品の減点材料を思い浮かべると、萌え的要素の少なさ、真っ直ぐ過ぎる展開、冗長気味の地の文でしょうか? 
でも、それらを踏まえてもなお、この作品には+50点をつけたい。
そういう作品に感じました。
何かの参考になれば嬉しい限りです。
ではでは。
147

pass
2010年11月12日(金)21時21分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 どうも、こんにちはsvaahaaさん。作者の金椎響です。
 まず最初に、この作品を読んで頂き、素晴らしい感想と評価を頂いたことに対して、お礼と感謝の言葉を記したいと思います。
 svaahaaさん、本当にありがとうございます。

>感想と作者レスまで含めると本当に文字数多いですよね、この作品(笑)。
 すいません、作者であるわたしがお喋りなもので(笑)
 普段こういう場がないもので、ついつい張り切ってしまいました。正直、読者からすれば「うわ、引くわー」って感じだと思いますけど。

>前半の「さながら」や「塗りたくる」といった表現が前後の文で連続している箇所が目につきました。
 確かに独特の世界観を築き上げたいという意図はありましたがそれよりも、作者の語彙の少なさがその一因です。わたしなりに気をつけたつもりでしたが、ついつい同じ表現を多用してしまう悪い癖がありました。
>重要でないと思われる部分は、簡略な表現ですませてしまってもいいかと思います。読者に一番読ませたい部分を際立たせるためでもありますし、単純に読者が読んでいて疲れるからでもあります。
 そうですよね、こんな長い小説にただでさえ付き合わされるというのに、読者に無用の負担を強いるのは、著者が不誠実だったと言わざるをえませんね。本当に申し訳ないです。

 誤字報告、ありがとうございます。
 一応投稿前にも確認し、指摘される度に自分でも確認しておりましたが、やはり見逃している箇所がありました。
 ご報告、本当にありがとうございます。
 指摘された箇所につきましては、手を加えさせて頂きました。

>企画の意図としても、主眼はどちらかというと「哲学」よりも「萌え」にあると私は考えています。なので、ここで期待されている作風は、投稿されている多くの作品がそうであるように「ライトノベル」ではないかと思います。そして、ライトノベルが基本的に十代の少年少女を対象にしたものである以上、本作品の雰囲気は彼らには理解しがたいのではないかとも思います。
 そうですね、svaahaaさんの仰るとおりだと思います。カテゴリーエラーな感が否めないですね。
 一応恋愛小説を貫いたのは、この作品の「哲学的」な要素を犠牲にしてでも、「ぼく」と伊豆見の恋愛で読者に訴えかけられればな、という意図があったのですが。
 築いた世界観による「重たさ」のせいで、プラマイゼロになってしまったような気がします。そこは結果的に私の技術の不足があったと思います。
>また、前半で「ぼく」がかもしだす思春期特有の空気に寛容な態度でいられる人は最後まで読み通せるかもしれませんが、そこに同族嫌悪的な感情を抱いて読むのをやめてしまう人もいるのかもしれないと思いました。
 もう、ぐうの音も出ませんね。わたしもあの頃は恋愛小説を唾棄すべきものだと思っておりましたから(苦笑)
 ただ、何といえばいいのでしょうか……『生命の算術』というテーマを扱った時から、ラノベ独特な「軽さ」で語ってはいけないような気がしたのです。哲学を題材とした萌え小説ですから、やはりそれはラノベであってしかるべきなのですが、そのテーマとの平衡を保った結果、意図していた以上に凄い「重たく」なってしまいました。やはり、その点については、わたし自身も多少の覚悟はしておりましたが今後も尾を引きそうですね。

>さて、散々悪口いっといて何ですが、私は本作品を高く評価したいと思います。ある一定以上の精神年齢を持つ読者であれば、上述した点はまったく問題にならないからです。本作品は確かに「ライトノベル」ではありませんが、立派に読み応えのある「小説」です(お世辞じゃないですよ?)。
 いえいえ、悪口などとんでもない! 作者として、読者の立場での意見、非常に参考になりました。
 そう言って頂けると凄い嬉しいです。嬉し過ぎて歓声を上げたくなる衝動に駆られます。
 わたしも高校時代を振り返ると、やり残した感がどうも否めないだけに、今からでもあの時をやりなおしたいです(笑) だからこういう小説を今になっても書き続けているのかもしれません。

>私は伊豆見には「萌え」ませんでした。それはつまり、記号化された安易なキャラとしてではなく、肉感のある一人の少女として彼女を捉えることができたという意味です。
>同様に、私は「ぼく」にも強く感情移入することができました。自分が同年代にはこういうこと考えてたんだろうなあと若干の恥ずかしさを覚えつつ、終盤にいくにつれて徐々に彼の行動を応援したくなっていきました。
 凄い嬉しい言葉を頂きました。そう言って頂けると、涙が出そうなくらいです。

>しかし、一番感情移入したのは、もしかしたら「友人」の方かもしれません。なにせ私もああいう斜に構えた灰色の青春を送った身ですので。「ぼく」が「傍観者」といったときには、自分のことかと思ってちょっとハートブレイク。がんばれ、名もなき「友人」よ!
 そう言われてみると、一番「高校生高校生」していたのは、もしかすると「友人」だったかもしれませんね。わたしもあの頃は斜に構えてましたから(笑)

>ところどころ気になる表現はあるものの、全体的にうらやましくなるほどの文章力・表現力をお持ちです。企画内でも指折りといっていいのではないでしょうか。これだけ長い作品を最後まで読み通せたのも、ひとえにこの文章力と内容のおもしろさあってのことです。
 もう本当に……幸せすぎて死にそうです(爆) 願ってもないお言葉の数々に満足死してしまいそうです。
 その御言葉、本当に作者の糧になります。チキンな心を奮い立たせて今回この企画に参加した甲斐がありました。

>ただ、哲学の教説を解説するのではなく、問題提起をして考えるきっかけにしてもらいたい、という姿勢には強く共感します。
>それでも、哲学の理想はやはりそうあるべきではないかと思います。
 共感、ありがとうございます。
 ソクラテスじゃありませんけど、わたし達はただ唯々諾々と知識として受け取るのではなく、それを種に、色々と考えたり感情を喚起せねばならないんじゃないかなと思いまして。それができたかどうかは、作者としていまいち自信が持てませんけども。

>えー、まとまりがない上に茶々ばっかりの長すぎる感想ですいません。多分、作者さんにつられて長くなってしまったのだと思います。感想は一言でいえば「おもしろかった!」につきます。よい作品をありがとうございました。
 いえいえ、お気遣いなく! わたしも何かと長々とやってしまうきらいがありますので。

 最後に、感想を下さったsvaahaaさんに、改めて感謝の意を表したいと思います。
 無駄に長く、ヘビーな雰囲気という二重の苦しみに満ち満ちたこの作品を読んで頂けたばかりか、心温まる感想と優しいお言葉、そして高い評価を頂いたこと、本当に嬉しく思います。

 多くの作品が読まれる中、一人ぽつねんと取り残された感があったこの作品と私に、こうして光を当てて下さって、本当に感謝しております。

 svaahaaさん、本当に、本当にありがとうございます。


pass
2010年11月12日(金)16時27分 svaahaa I0z7AdLSAc +50点
その群を抜く長さゆえに失礼ながら長らく敬遠してきた本作品ですが、いよいよ避けられぬだろうと思い立ち、なんとか読み上げた次第です。感想と作者レスまで含めると本当に文字数多いですよね、この作品(笑)。何かしら参考になってくれることを願いつつ、感想を書かせていただきます。以下、超長文注意。

まず、気になったことをいくつか。
細かいことですみませんが、前半の「さながら」や「塗りたくる」といった表現が前後の文で連続している箇所が目につきました。何か意図があってのことなのかもしれませんが、個人的には重複する表現は短い文の間隔では使わない方が好みです。また、「社会に経済面から奉仕」って、要はアルバイトのことですよね? 文体や表現の様式を統一することで雰囲気を壊さないように気をつけているのでしょう。しかし、さすがにこれは分かりにくかった(笑)。他の部分でもそういえると思うのですが、重要でないと思われる部分は、簡略な表現ですませてしまってもいいかと思います。読者に一番読ませたい部分を際立たせるためでもありますし、単純に読者が読んでいて疲れるからでもあります。

次に、誤字かと思われる部分がいくつかあったので、報告しておきます。
>だが、それ自体は非情に瑣末な問題であるように思えた。
>彼等は口々にナチスの蛮行を非難し、その口で下も乾かぬうちに
ここは「非常に」と「舌も」の誤字でしょうか。
>机の上には、彼女から本が並んで置かれている。
「彼女からの」あるいは「彼女から借りた」が抜けているかと。
>次彼女が口を開くタイミングがぼくにはわかっていたからだ。
「次に」が抜けているかと。
以上です。他にもあるか、チェックしてみてください。もし元々意図した表現だった場合には無視してください。

内容について。
作者さんのコメントにもありますが、この雰囲気はやはり「異端」だと思いました。企画の意図としても、主眼はどちらかというと「哲学」よりも「萌え」にあると私は考えています。なので、ここで期待されている作風は、投稿されている多くの作品がそうであるように「ライトノベル」ではないかと思います。そして、ライトノベルが基本的に十代の少年少女を対象にしたものである以上、本作品の雰囲気は彼らには理解しがたいのではないかとも思います。確かに最近はライトノベルの年齢層も広がっていると思いますが、本来のターゲットである彼らが本作品にライトノベルを感じてくれるかどうかは疑問です。また、前半で「ぼく」がかもしだす思春期特有の空気に寛容な態度でいられる人は最後まで読み通せるかもしれませんが、そこに同族嫌悪的な感情を抱いて読むのをやめてしまう人もいるのかもしれないと思いました。まあ、これに関しては読者側の趣味嗜好の問題ですので、仕方がないかと思います。

さて、散々悪口いっといて何ですが、私は本作品を高く評価したいと思います。ある一定以上の精神年齢を持つ読者であれば、上述した点はまったく問題にならないからです。本作品は確かに「ライトノベル」ではありませんが、立派に読み応えのある「小説」です(お世辞じゃないですよ?)。語彙が貧弱なので安いことばを使わせてもらうなら、正当派青春小説といいたくなります。読んでいくうちに彼らに混ざって青春時代を送りたくなってきたぐらいですから(とはいえ、私もまだまだ若輩者なんですけどね)。
私は伊豆見には「萌え」ませんでした。それはつまり、記号化された安易なキャラとしてではなく、肉感のある一人の少女として彼女を捉えることができたという意味です(肉感って、そっちの意味じゃないですよ、もちろん……ええ)。これは作者さんの力量かと思われます。同様に、私は「ぼく」にも強く感情移入することができました。自分が同年代にはこういうこと考えてたんだろうなあと若干の恥ずかしさを覚えつつ、終盤にいくにつれて徐々に彼の行動を応援したくなっていきました。しかし、一番感情移入したのは、もしかしたら「友人」の方かもしれません。なにせ私もああいう斜に構えた灰色の青春を送った身ですので。「ぼく」が「傍観者」といったときには、自分のことかと思ってちょっとハートブレイク。がんばれ、名もなき「友人」よ!

表現について。
ところどころ気になる表現はあるものの、全体的にうらやましくなるほどの文章力・表現力をお持ちです。企画内でも指折りといっていいのではないでしょうか(私も全作品に目を通したわけではありませんし、本作の文体が私の好みに合った、ということもありますが)。これだけ長い作品を最後まで読み通せたのも、ひとえにこの文章力と内容のおもしろさあってのことです。さすがにもっと長い場合には私の気力が持つ自信がありませんけど。こういう丁寧な描写が私にもできればよかったと思いますよ。いや、本当に。

哲学について。
これについては、不勉強な私にいえることはありません(大陸系はさっぱりですし、作者さんほど読書家でもありませんので)。ただ、哲学の教説を解説するのではなく、問題提起をして考えるきっかけにしてもらいたい、という姿勢には強く共感します。自分で実践できているかといわれれば、首肯するのが難しい体たらくなのですが。それでも、哲学の理想はやはりそうあるべきではないかと思います。

えー、まとまりがない上に茶々ばっかりの長すぎる感想ですいません。多分、作者さんにつられて長くなってしまったのだと思います。感想は一言でいえば「おもしろかった!」につきます。よい作品をありがとうございました。
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pass
2010年11月03日(水)22時42分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 どうも、作者の金椎響です。
 アピーさん、まず最初に、百を超える投稿作品の中から私の無駄に長い小説をわざわざ読んで頂いて、しかも温かい感想と評価を頂き、誠にありがとうございます。

>読み終わった直後は深くため息が出ました。「疲れたー」って。
>その疲労感はつまるところ大作を読んだものに似ていました。純文学的なものです。
 お疲れ様でした。大作でしかも純文学と言われると何だか嬉しいですね。おいおい、ラノベとはてんで畑違いだぞ、と突っ込まれそうですけど。
>それだけ内容があったように感じましたが、やはりテーマの難解さがあって読み切り、かつ内容について具体的な感想が書けるほどまで内容を理解できる人は……10代には少ないかなー、なんて思いました。(他の作品もそうなのかな?)
 多くの方はまず99枚という枚数で引いちゃうと思います。しかも、色々とむつかしく書いてしまったところがあるな、と私自身も思っております。その点は、読者の皆さんにわかりやすく丁寧に伝える必要があった、と反省しています。

>upa・R・upa さんは「前半が中だるみしていた」と言われていましたが、私はそう感じませんでした。むしろ程よい間と状況説明で読みやすかったです。
 アピーさんにそう言って頂けるとありがたいです。
>逆に中盤、アウシュビッツやクオリアが出てくる件は
>「え? その言い方で理解できたの!? あんたら頭良いなぁ」
>って思う位二人の理解度、補完度が高くて私にはついていけませんでした。
 すいません。私もあの辺りをもう少し上手く説明できれば良かったんですけど。何分初めての投稿作で配慮に欠けておりました。
 また、当初から彼女にあんまり哲学を語らせたくないな、と思っておりました。彼女の口から飛び出す哲学は必要最小限度に抑えておきたいという作り手の意図が、言葉足らずを生み出してしまいました。

>そして後半は……「ぼく」と「左近」さんの身体、感情も通り越した「感覚的」な触れ合いで起きる気持ちの掛け合いは読んでて微笑ましかったです。
 ありがとうございます。前半で押さえていた愛着が爆発したところだったので、作者としては「独り善がりになっていたらどうしよう」などと思っておりました。

>最後に、この小説を読む前に自分の小説を完成させておいてよかったと思います。確実に金椎響の書き方を反映してしまうでしょうから。
 そのようにアピーさんに言って頂けると作者冥利に尽きます。例えお世辞でも嬉しくて嬉しくて涙が出そうです。

>辞書を片手に二日かけて読んだ甲斐がありました。ありがとうございました。
 二日間という貴重な御時間を頂いて読んでくださって、こちらこそ、本当にありがとうございます!

 今回、アピーさんの感想を頂けたことを光栄に、そして誇りに思います。枚数や気難しい文体、濫りにむつかしい内容と読者が嫌う要素をこれでもか、と詰め込んだ本作品を読んで頂けた、そして感想を頂けたこと、本当に感謝しております。
 アピーさんの感想を励みに、今後とも小説創作に精進していきたいと思います。本当に、本当に、ありがとう、アピーさん。

pass
2010年11月03日(水)16時53分 アピー o.2YuWFDJw +40点
 こんにちは。アピーです(HNダブってないかな?)。
「Lebensborn」はここにきて初めて拝読させていただいた小説です。

 読み終わった直後は深くため息が出ました。「疲れたー」って。
 その疲労感はつまるところ大作を読んだものに似ていました。純文学的なものです。
 それだけ内容があったように感じましたが、やはりテーマの難解さがあって読み切り、かつ内容について具体的な感想が書けるほどまで内容を理解できる人は……10代には少ないかなー、なんて思いました。(他の作品もそうなのかな?)

 upa・R・upa さんは「前半が中だるみしていた」と言われていましたが、私はそう感じませんでした。むしろ程よい間と状況説明で読みやすかったです。
 逆に中盤、アウシュビッツやクオリアが出てくる件は
「え? その言い方で理解できたの!? あんたら頭良いなぁ」
って思う位二人の理解度、補完度が高くて私にはついていけませんでした。
……まぁ、そこが学術書を読んでいるようで楽しかった部分でもありますが。
 そして後半は……「ぼく」と「左近」さんの身体、感情も通り越した「感覚的」な触れ合いで起きる気持ちの掛け合いは読んでて微笑ましかったです。

 最後に、この小説を読む前に自分の小説を完成させておいてよかったと思います。確実に金椎響の書き方を反映してしまうでしょうから。
 辞書を片手に二日かけて読んだ甲斐がありました。ありがとうございました。
125

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2010年10月29日(金)00時06分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 あるとさん、はじめまして。作者の金椎響です。
 まず最初に、感想ありがとうございます。この作品を発表してから日数が経ったというのに、私の小説を読んで頂き、高い評価を与えて頂いたばかりか、感想まで書いて下さったことを、本当に嬉しく思います。

>この作品はもっと評価されてもいい、と思いました。
 そう言って頂けると、本当に嬉しいです。私自身の些細な自己満足で小説を綴っているとはいえ、その心の底では誰かに私の小説を読んでもらいたい、そして評価して頂けたら……などと分相応にも思っておりました。そんな私にとって、あるとさんのその言葉はどれほど嬉しかったことか! 端的に記せない自分の語彙の少なさが悔しいです。
>全作品読んだわけではないですが、読んだ中では一番面白かったので
 ありがとうございます! 「面白かった」と言って頂けるだけで幸せだというのに、「読んだ中では一番」などと言われると、本当に嬉しくて涙が出てしまいます。私の描いた世界を、面白いと思ってくれる人がいるだ、と思うと感極まってディスプレイを前にして袖を濡らしそうです。
>バナー絵のヒロインがこの作品にぴったり、には同意です。
 同意して頂けるなんて! 本当に嬉しいです。この企画をやろうと思ったきっかけが、まさにあのバナー絵のヒロインで、見た瞬間から一目惚れしてしまった経緯があります(笑)
>この話の雰囲気が好きです。
 嬉しいお言葉です。私自身、この作品の雰囲気を大事に作ったつもりです。しかし、その雰囲気が読者の皆様に不快な思いを与えているんじゃないかと、不安にも思っておりました。あるとさんにそう言って頂けると、その不安が和らぎます。
>大した感想はかけませんが、まあほかの人のハードルが下がればよいかなと思ったので、短いですが書かせていただきました。
 とんでもないです! あるとさんの感想はしっかりと私の胸に響きました。何より、無駄に枚数の多い私の小説を読んで頂けたこと、そしてあるとさんの感想に私の心は大いに勇気づけられました。
 また、私の小説の事を思って、わざわざ感想を書いて頂いたんだ、と思うと、あるとさんのその心遣いに感極まる思いです。

 正直な心境を申し上げますと、かなり心が折れていました。
 初めて投稿したものだから、こんなもんだ、と自分に言い聞かせていましたが、それでも誰かに読んで頂きたい、とずっと思っておりました。
 自分の描きたい世界と皆さんの求めている世界との差に愕然として、投稿するべきじゃなかったのかも、とまで思いました。
 そんな小説を面白かったと言って下さったあるとさんの言葉に私自身、強く感動しています。拙い小説で後で読み返すと恥ずかしい気持ちで一杯ですが、それでも面白かった、と言って頂けると、「ああ、書いて本当に良かった」と思います。
 
 今回、あるとさんから感想を頂いた事は、私が小説を書くこと以上に、非常に有意義なものでした。ともすれば最初で最後の小説になるかもしれない、なんて思っていた私に対して、あるとさんの感想はまさに希望です。あるとさんには、こんな私に希望を与えて頂けて、本当に感謝しております。
 何より、あるとさんから面白いと言って頂けたこと、それが私にとってかけがえのない財産になりました。
 あるとさん、どうもありがとうございました。

pass
2010年10月28日(木)15時54分 あると  +50点
この作品はもっと評価されてもいい、と思いました。
全作品読んだわけではないですが、読んだ中では一番面白かったので

バナー絵のヒロインがこの作品にぴったり、には同意です。
この話の雰囲気が好きです。

大した感想はかけませんが、まあほかの人のハードルが下がればよいかなと思ったので、短いですが書かせていただきました。
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2010年10月21日(木)20時34分 金椎響 8tiPoznsKE 作者レス
 upa・R・upaさん、はじめまして。
 感想どうもありがとうございます。私の小説を読んでくださり、そして感想まで頂けたという事実に、私の心は幸せ一杯です。
 全体的に、丁寧な読解と感想で、読んでいる私はうんうんと頷きながら目を通させて頂きました。

>バナー絵のヒロインがこの作品にぴったりだなと思いました。
 バナー絵を描いた絵師さんのサイトに飛んで網膜に焼き付けておりました。そう言っていただけると、どんな場面でも脳裏に「彼女」の姿を想像して書いた甲斐がありました。
>ワードで書いてそのままコピーアンドペーストしたのでしょうか。
 その通りです。ワードの左下に文字カウントが表示されるので使っていたのですが、お陰で段落の先頭が開けられていませんでした。一応確認できる範囲で対応させていただいているのですが、まだまだ見逃しが多く、お見苦しいと思います。申し訳ないです。今後とも手直ししていきたいと思います。
 また、誤字の御指摘、誠にありがとうございます。投稿前に確認していたのですが、見落としておりました。
>紺色のセーラー服に白いタイ。
 確かに学校で制服を着ているのは極めて普通で、あえて触れるまでもないですが、ご指摘の通り、最後の私服姿の「彼女」との対比です。よもや気付いて貰えるとは! 嬉しいです。
>彼女はきょとんとした。生まれて初めてクリオネを見た感慨に耽っているように見えた。
 クリオネという生き物がおります(笑) 一時期ブームになった奴です。べつにクリオネじゃなくても良かったんですが、クオリアと似ているなと思って安易に使ってしまいました。説明が無かったので不親切だったと思います。ただ、ここで「クオリア」に表現を変えると「じゃあ、今までの『彼女』は何だったんだ、哲学的ゾンビだったのか」となってしまいますので。
 確かに、前半部の展開が単調で読者にとっては辛かったと思います。著者としましては、最後恋愛が成就することを踏まえると、「ぼく」(と読んでいる読者)を焦らす必要があったかな、と思いまして。ある種伏線として、悶々と事態を打開できない困難を描き、その後に状況が変わるよ、とアナウンスする必要がありました。
 とはいえ前半部の中だるみが弱点となっている点については、著者の拙さが一番の要因ですので、今後手を加える、また今後の作品で改善するよう努力していく所存です。頑張ります。
>三人称にしてしまうと、そこには「ぼく」の感情が抹殺されて、味気なくなってしまうでしょう。
>「ぼく」という一人称を通じて彼女の魅力、萌えは伝わってると思いました。
 私が意図しこだわったのは、まさにそこなんです。そこを評価して頂けるなんて、作者冥利に尽きます。
>ただ、ラストの展開は哲学的なものと絡めて欲しかったなとも思えます。
 そうですね。upa・R・upaさんのご指摘の通りだと思います。私としては、語り部の「ぼく」が捻くれていただけに、最後だけは正直に、素直に心境を吐露しなければならないかも、と思って最後に関しては二人に焦点を当てて、直接的な哲学についての言及は避けました。
>途中まで出てきた哲学的な論理と展開はどうなってしまったのか。
 確かに、期待をしていた読者には謝るしかないですよね、申し訳ありません。その辺りで私の力が足りていなかったかな、と思います。今まで出し惜しんできた恋愛を炸裂させたので、自分でも上手く描くことができなかったと思います。ただ、地の文などで今まで「含ませていた」ところを、せっせと回収していたりもするので、その辺も見ていただければと思います。

 企画的には「彼女」が「ぼく」にわかりやすく「ニーチェはね、デカルトはね」と説明してあげた方がよっぽど親切だったのかもしれません。ですが、私はそうやって哲学の知識がつくのは良いけれど、それだけで終わってしまうんだったら、わざわざ小説にしなくてもいいんじゃない、もっとわかりやすいハウツー本でいいじゃない、と生意気ながらに思っておりました。
 それ故、哲学に興味ある人達に、小説を通して哲学的な問題提起を行いたいな、と思って書いたつもりです。この小説を通じて「え、本当にそうなのかな」と思った読者が哲学に興味をもって頂いて、賛同して頂いたり、批評して頂いたりして哲学というものに関心を持っていただければ、と。それ故、中途半端になった感は否めませんが。
 何より、読んで頂いた方の「こころ」に何か訴えかけられればいいな、なんて不相応にも思って書きました。ぼくの言葉に始まり、ぼくの言葉で終わったのも、「何の事は無い、ただの恋愛小説だった」というのもそこへ集約されます。大塚英志氏的に言わせて貰えば「世界観は細部に宿る」と言ったところでしょうか。皆さんに魅力的な世界を提示できたかどうかは、いまいち、自信がありませんけど。

 今回、upa・R・upaさんから感想を頂いて、良い点・悪い点を端的にご指摘して頂いた事は、私が小説を書くことにおいて非常に有益で有意義だったと思います。誠実な感想を頂けて、本当に感謝しております。
 何より、読者の方から面白い作品でした、と言われたこと、それが私にとってかけがえのない財産です。
 upa・R・upaさん、どうもありがとうございました。

pass
2010年10月20日(水)17時02分 upa・R・upa adavoR6tGU +30点
 こんにちは、upa・R・upaと申します。「lebensborn」を拝読しましたので、感想を投下させていただきます。
 まさに哲学的な少女ですね。トップページに書かれているバナー絵のヒロインを想像しながら読み進めてました。というか、そのバナー絵のヒロインがこの作品にぴったりだなと思いました。
 ワードで書いてそのままコピーアンドペーストしたのでしょうか。ところどころ段落の行頭開けがされていませんでした。あとで確認してみてください。
 写真部に所属している主人公ながら、比喩は秀逸だったと思います。写真やカメラに喩えて統一的に比喩を運用できていたと思います。
 リアルタイムでちらほらと感じたことといえば、
> 後に、ネットの熱帯であらすじを確認したところ、
 もしかしてアマゾンですかw
> 紺色のセーラー服に白いタイ。
 伊豆見の特徴としてあげたのでしょうが、ちょっと違和感がありました。このセーラー服は舞台となる学校におけるどの女子も制服として着ていると思われるからです。伊豆見の外見的特徴としてあげるのは不自然かと。改案を考えるなら、「この学校では女子は紺色のセーラー服を着て、白いタイを身につけてる。彼女ももちろんそうである。」などと書いたほうがいいんじゃないかなと思いました。まぁ、最後の私服姿の彼女を強調したくてこのように書いたのだと思いますが。
> そして、容姿や雰囲気とは印象が異なる以外な言葉。
「以外」ではなく「意外」だと思います。
> 彼女はきょとんとした。生まれて初めてクリオネを見た感慨に耽っているように見えた。
 クリオネ? 喩えがよくわかりません。もしかして、クオリアと書こうとしたんですしょうか? それだったら通じなくもないんですが。
 まぁ、そんなところです。
 この作品の弱点を上げるとすれば、前半部の中だるみでしょうか。ともかく、伊豆見の口数が少なく、またコミュニケーションも少ない。最初のあたりで主人公はあまり積極的に伊豆見と関わろうとしない。それが響いていると思います。
 この作品のテーマカラーは「赤」といってもいいでしょうね。主人公「ぼく」を通して出てくる赤が、色鮮やかなイメージとして読者に伝わっていると思います。三人称にしてしまうと、そこには「ぼく」の感情が抹殺されて、味気なくなってしまうでしょう。
「ぼくは、君に初めて会った時から、君の姿を写真に収めたかった」といったように、「ぼく」という一人称を通じて彼女の魅力、萌えは伝わってると思いました。難を言えば哲学的な会話のときに彼女は堅い印象があったのですが、私服姿の彼女を見せることでギャップを生じさせ、そこに彼女の魅力を出したことには成功していると思います。
 ただ、ラストの展開は哲学的なものと絡めて欲しかったなとも思えます。なんか恋愛的感情に押されて、哲学的な要素を押し流して(ニーチェはちらっと出てきましたが)ゴールしてしまった感があったかなと感じるのです。途中まで出てきた哲学的な論理と展開はどうなってしまったのか。
 ともあれ、面白い作品でありました。素敵なお時間ありがとうございました。以上を鑑みて30点の評価をつけさせていただきます。
146

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合計 17人 540点


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