「ぽん」と君は言う
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「じゃんけんで、あたしが勝ったら、別れて」

と君は言う。

「仕方がない」

と僕は言う。


そのとき、僕は思い出す。


「じゃんけんで、あたしが勝ったら、お風呂沸かして」

と君は言った。

「仕方がない」

と僕は言った。


僕はそれからグーを出した。

君はそれからパーを出した。


「あなたはいつもグーを出す」

と君は言った。

「なかなか直らない」

と僕は言った。


僕はそのことを思い出す。


「じゃんけん」

と君は言う。


僕はいつもならグーを出す。

君はいつもならパーを出す。


「ぽん」

と君は言う。


僕はそのときチョキを出す。


「負けちゃった」

と君は言う。


君はパーを引っ込める。

いつものパーを引っ込める。


「あなたはいつもグーを出す」

と君は言う。

「直った」

と僕は言う。


「良かった」

と僕は言う。


君は笑って。


「あなたが最初にグーを出す癖があるのは知ってたし、あなたがそれを知っていることも知っていた。だから、もし別れたくないのなら、きっとチョキを出すんだと思った。だからあたしは、パーを出そうと思った。だってこれは遊びで、あたしだって別れるつもりは無かったから。もし、別れるつもりがあれば、あたしはグーを出していた。」


だから、と君は言う。


「あなたは今日はパーを出すべきだった。あたしが本気で別れるつもりでグーを出していたら、あなたは今回負けていた。危なかった」


つまり、と君は言う。


「あなたが今回出したチョキは、あたしが別れる気が無いという、自信過剰の楽観的判断に基づいたものなの。本当ならお互いにパーを出して、あいこでアハハが一番良かったの」


ほんと、と君は言う。


「もし別れるつもりだったらどうするのよ」


これからはねえ、と君は言う。


「もっとちゃんと考えてよね」


久谷 rh.jlmdYn2

2010年11月08日(月)21時48分 公開
■この作品の著作権は久谷さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
人の考えてることは、わからないようでわかるようで。わかるようで、結局わかんない。そんな話です。


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2010年12月04日(土)03時32分 開蔵  -10点
彼女はどういうつもりでこんなことをしたのかなぁとも思いましたが、
それよりも僕があまりにも申し出を淡々と受け入れていて、おいおいそれでいいのか!?と
僕という人が考えていることがわからない、そういう風にも読みましたがそれにしてもちょっち合いませんでした。

じゃんけんを終えたあとに僕が別れようとか言いだしたら面白かったかなぁ。
ちょうど別れたいと思ってたんだ、とか。
64

pass
2010年11月27日(土)22時28分 牛髑髏タウン DN9w0wBvqc +40点
読ませていただきました。

じゃんけんのアイデアが素晴らしいと思いました。読んでいて、非日常に連れ込まれる感じのちょっと怖い雰囲気も良かったです。

ところで、もしも彼がパーを出していたら、「君が別れたいと思ってグーを出す可能性も考慮した」という意志を表明することになってしまって、なんというか、それって彼女の言うようなアハハと笑ってられる雰囲気なのか? と思ってしまいました。

それと、もう一つ思ったのは(以下、ちょっと長くなってしまいました、余計なことなので読み飛ばしていただいても構いません)、彼女の出すパーって、彼が何を出すかで都合よく意味を変えられる気がするんですよね。

まず彼女がパーを出して勝つといういつものパターンを前提とすると、彼が出す手の意味は単純に考えて「別れたくない」=チョキ、「別れたい」=グー、ということになります。

すると彼女が出す手の意味は、
(1)彼は別れたいだろうし、自分も別れたい → パー
(2)彼は別れたいだろうが、自分は別れたくない → チョキ
(3)彼は別れたくないだろうが自分は別れたい → グー
(4)彼は別れたくないだろうし自分も別れたくない → パー

彼女は、実際は(4)だったから良かったけど(3)だったらどうするの? と言っているわけですよね。でも彼がグーを出した場合、彼女は実は(1)だったと言うこともできるんですよね。「お互い別れたいと思っていたのね」って。

なんとなくこれってつまり、あれなのかなと。相手が別れたいなら別れる、別れたくないなら別れない、しかも自分の意志は相手と同じだったんだと言い張れる、という凄い作戦なんじゃないかという気がして、ちょっと怖くなったりしました。

ともあれ、色々考えられて、とても面白いと思いました。失礼いたしました。

85

pass
2010年11月12日(金)23時41分 まちー RCPb5pz4Tw +10点
ほのぼのして面白かったです。
アイディア勝負のショートショートですね。
ただ、哲学と萌え要素は極少で、さらに小説としての枚数も行スペース抜きで考えると少ないな、と感じました。
ショートショートとしては良かったですよ。
77

pass
2010年11月10日(水)21時30分 サム  -10点
彼女に萌えられなかったですし哲学的なかんじもしなかったです。
74

pass
2010年11月10日(水)02時40分 jp  +30点
とりあえず、面白かったし、好きです。

自分が主人公(僕)になっているような感覚で読めました。
75

pass
2010年11月09日(火)19時24分 某よしぞー 4XnS5OgSrI +10点
かすかに漂っている、アンニュイな雰囲気がいいですねー。萌えキャラの出ている小説かというとむずかしいのですが。笑 でも、雰囲気はいいー。
75

pass
2010年11月09日(火)19時19分 水守中也 WqqU5hdvk2 +20点
はじめまして。

独特の話でしたが面白かったです。
不必要な「と〜言う」を多用して、なんとも不思議な印象を受けました。
主人公の本心も不明のままですよね。

ただジャンケンの考察というか心理戦は、なかなか興味深かったです。

哲学要素は薄いかもしれませんが、ヒロインにはちょっぴり萌えられました。
78

pass
2010年11月09日(火)17時19分 酉野目  0点
 アイデアは良かったです。
 ただ少しわかりにくかったですね。
 二枚という枚数の中でなら、良い作品だと思いました。
78

pass
2010年11月09日(火)12時12分 しのぶ xgEo5clCMw +20点
こういう頭脳戦?好きです。
愛の駆け引きですね・・・
こんな関係って良いなと思いました。
71

pass
2010年11月09日(火)00時42分 クロードニュウスキー  +20点
萌えとか全然なかったですけど。でも私はこういう作品、すごい好きです。とても。
75

pass
2010年11月08日(月)23時38分 svaahaa I0z7AdLSAc 0点
どちらかといえば詩寄りな作品ですね。なんとなく彼の方からは狂気的なものを感じました(自分だけか)。描写がほとんどないので仕方がないのかもしれませんが。根拠のない深読みをすれば、彼は彼女のグーを期待してチョキを出したんじゃないかとも思いました。哲学も萌えも薄いですが、こういうのもありなんでしょう。
77

pass
2010年11月08日(月)22時48分 いも M8vT5jA.U. 0点
・・・「仕方がない」には突っ込まないんですかね、彼女は?

読み比べになった場合、そこにあるのは無限降下ですから、確実なことというのはなくなります。
ならば、「確実なことがなくなる」というのを防ぐというというのが、哲学的(倫理学的?)かと思います。

まぁ、アイディアとしては面白かったと思いますが。

82

pass
合計 12人 130点


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