はかない少女
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学校からの帰り道

いつもの電車、オレの家は少し山の方に行くので途中からは、2車両しかない寂れた各駅停車に乗る。
大体、この時間は乗車客が特に少なく、電車の中にいるのは、紺野と俺だけだった。
ガタガタと寂れた音をたてる電車に2人はちとさみしい。

紺野とは小学校から一緒で、今行っている高校も同じだ。
だから、帰り道はよく会う。

紺野は座席に座り、カバンを抱え込む姿勢でうつむいていた。
昔から、少し人見知りで、電車など知らない人だらけのときなど、このポーズをとっている。

しかし、いつもと様子が若干おかしい・・・
二人になると、いつもなら何か話しかけてくるか、そうではなくても、もっとリラックスしている。
少し気になるので聞いてみることにした。

「紺野どうかしたのか?」
すると紺野はゆっくり顔を上げ、こちらを向いた。

「聞きたいか?」
うん、と答える。
大体人がこう言う時は聞いて欲しい時だと思っている。
紺野も悩むこともあるだろう。思春期だし。

「それならば言ってやろう・・」
うつむきながらそう言うと、紺野は急に立ち上がり息を大きく吸い言い放った。

「実は言うと今日はなんと、はいてないのだ!!」

紺野は少し震えており、鼻息もあらかった。

また違った意味でいつもと違う。
いつもはもっとぽけーとしてて、空想にふけっているようなやつだ。
何かあったに違いない、と思うぐらい活発で戸惑ってしまう。

「まぁとりあえず座れよ。」
まずは落ち着いて話を聞こうとオレは思った。

「そうだな、電車の中で立つのは・・・その、、危ないからな」
何か含みのある言い方だな。

まぁまず、さっきの言葉の中に疑問がある。はいていないとはどういうことだ?
はいてないと言うだけで、紺野があんなに興奮することがあるのか?
はいてないと言う言葉だけで色々な意味が考えられる。日本語の難しさをあらためて認識した。

と、どうのこうの考えていると紺野がかってに話始めた。

「きょうは訳あってはいてないんだ。」
「とは言っても、忘れてきたわけでも、止むを得ない事情があるわけでもないんだ。」

淡々と話す紺野だが、オレは全然、意味がわかっていない。

「ちょっと待て紺野、まず『はいてない』ってなんだ?」

すると紺野は、ハッと驚いた顔をし、すぐに目線を下にやった。
うつむきながらもじもじとしている。

言い出しにくい事なんだな、ちょっと待っておこう。
何か話しにくいデリケートなことかもしれない。
女の子の相談は慎重に対処しなければ、何気ない一言が相手をすごく傷つける事もある、と言ってた友達がいた。

「よしっ」
紺野は意を決したようだ。
少し興奮気味に顔を紅潮させ、声を張り上げた。

「今日は・・・」

「今日、履いてないんだ、パンツ!!」

はぁ? と、スカートに目をやる。
すると、すぐ紺野はスカートの裾をおさえ、こっちに厳しい目を送ってきた。
なんだ、そのこっちが悪いみたいな反応は? そりゃ、反射的に少しは想像したさ。

家にある秘密のビデオのモザイクの向こう側が広がっているのか・・・とか・・・

・・・

・・・・・

・・・・・・・

冷たい空気が流れる。まず沈黙はまずい。時間が経てば経つほど、気不味くなる。
冷たい汗をかいてきた・・・

「なんで、履いてないんだ?」

苦し紛れに、聞き返してみる。とりあえず会話をしなければ・・
窒息しそうだ。



「良くぞ聞いてくれた!!、さすがは高橋だな!!」

紺野はトンネルから出てきたように意気揚々と言った。

予想外の返答に少しうろたえる・・・

紺野は急に目を輝かせ、話を始めた。

「なぜ私が今日ノーパンなのか、朝、忙しくて履き忘れたわけでも、お漏らししてしまったわけでもない!!
 あえて履いてこなかったのだ!!」
「聞きたいか?ノーパンの理由を!!」

堂々とノーパンの話をする女の子の言うことは、正直聞きたくなかった。
しかし今聞かなかったら家に帰ったあと思い出してものすごく気になりそうだ。

そんなこと、考えている間にまた話し始めた。

「わたしは毎日がただ退屈に過ぎていくことに嫌気がさしたんだ。学校へ行って勉強し、
友達とたわいの無い話で盛り上がり、家に帰ってテレビを見て、寝る毎日に」
「幸せじゃなかったわけじゃない。楽しかったし、苦痛も無かった。しかし ある日気づいたんだ。何が悪かったのかと。」

さっきまでの話しにくそうにしていたのは何処へいった。それに何の話だよ。

「ちゃんと聞け、高橋!!」

一喝される。

「日本じゃ、日本には日々の生活に緊張感が足らないと思わないか!?」

どういう質問だ・・・

と聞く前に、紺野は次々に話し始めた。

「世界には貧しい国がある。仕事もなく、飢えに苦しんでいる人々もいる。
しかしだからこそ、このような状態を変えようと頑張る若者がいるじゃないか
私はテレビで見たんだ、将来、偉くなろうと頑張る貧しい国の人達を、その輝く目を!!」

「それに比べて日本人はどうだ、豊かなはずなのに皆疲れていて暮らしにくいと嘆いている。
それにクラスメイト達も、不況の中、皆、将来を悲観しているではないか」

「だ・か・ら・私は、履かない!!」

今の論説と履かないことに対する接点が一切見当たらない。
ただただ、初めてみる紺野に戸惑うばかりだ。

「ふっふっふ、意味がわからないという顔をしているな」

ずばりその通りだ。あとなんでそんなに楽しそうなのかもわからない。

「いいだろう、教えてやろう。」

と言い、紺野はオレの前に仁王立ちをし、また語りだした。

「やはり日本は恵まれすぎている。食に困らず、平和だし、それゆえに怠けている」

「危機感が足りないんだ。不遇な環境に置かれている物ほど、その者の精神力が磨かれ、
 何事にも耐えうる根性がつくのだろう。」

「だから自分を追い込むんだ。しかし日本で普通に生活してるんじゃそれができない。
 何かを変えないといけないんだ。」

「そこでひらめいたのだ!!」

ぐっと、手を握り、紺野は力をため言い放った

「履かないことを!!」

紺野の目は爛々と輝いている。
『ノーパンの理由』という、話の低俗さとは関係なく・・・

「履かないことにより、生活は一変する」

もうこっちは置いてけぼりにして、どんどん演説は続いていく。

「まず、はいてないことがバレると私はどうなる?」
「社会的信頼を失墜させる。」
「また異常性癖者と見る者もいるだろう。今までの友人関係など壊れてしまう可能性が高い。」
「だから私は履いていない事をバレてはいけない。」
「とても気の抜けないミッションだ」

身振り手振りを加え、まるで舞台にでも立って演じているかのようだ。

「町には、スカートの中を撮影しようとする、スナイパーがいる。」
「電車の中には、強行的に侵入しようとする、突撃兵もいる。」
「また周りの罪なき一般人ですら敵と化すのだーー!!。」

「どうだ。もう生活が戦争ではないか!!」

「しかも、その中を学校指定の制服という軽装で私は戦わなければいけない。」
「強風の日や、階段などの、環境の変化で戦況は大きく変わる。」

「今日1日やっていたが、この緊張感は計り知れない。」
「大いにストレスがたまったが、それと同時に常に、集中をしていた。」

「これにより、私の精神力は強化されこれから、受験などの大イベントの時にへまをすることもないだろう。」
「また考えかたを変えてしまえばその日ははいてしまえばいいんだ。」
「劣悪な環境にさらされ続けた我が下半身も、はいてしまえばもう安住の地とかす。」
「それゆえ他の受験生より、精神的優位に立てるのではないか。!!」

「どうだ!!高橋!!」

少し、納得しかけたが、リスクがあまりにも高すぎるじゃないか。
また紺野のミッションがバレた際オレも友達をやめないといけないとも思う。

「紺野、いいから今日でやめとけ」
オレは優しく諭した。

「嫌だ。」
固い決意のもと、あとずさりしそうななほど、強い目で反論された。

「嫌だ!嫌だ!嫌だ!」
なんでこんな事に頑ななんだ。こいつは。


そんな事を言いつつ、電車は自宅の最寄り駅のホームへ着いた。

「ていうか、なんで俺に言うんだよ、黙ってないと意味ないんじゃないか?」
オレ達は席を立ち、電車を降りながらオレは紺野に言った。

「お前が聞いたんだろ!!」
「それに・・・」

「それにどうした?」

言葉に詰まる紺野に対し、聞き返してやった。

「それに、同志がほしいんだ。お前にも、はかない同盟に入ってほしいんだ。」

こっこの、これは、今日一番のショックだ。 何を人に強要してくるんだこいつは。
それにそんな同盟いつ出来たんだ。

「そんなのオレは絶対嫌だ。そもそも、ズボンなら意味ないじゃないか。」
「そうだ!!だから、私のスカートを貸してやる!!」

今まで、友人として付き合ってきたが、
紺野が男の子にノーパンでスカートを履くことをすすめてくる奴とは知らなかった。

「スカートはいた時点でオレはもうアウトだろ!!」
「大丈夫だ。最近では、スカート男子たるものが流行ってるそうだ、すぐ皆、慣れるさ。」

「そんなわけないあるか!!」

そんなとてもゲスな討論をホームで繰り広げていた。

周りに誰も居なくて良かった。
かなりシュールな状況だ。

「一緒にこの平和ボケの日常から抜け出そうじゃないか!!」

・・・

・・紺野が熱弁を繰り広げているさなか、急に駅のホームに突風が吹いた。

  紺野は油断していた・・・

  オレとの同盟締結に全力を注いでおり、下半身の守りを甘くししていたのだ。

  風はいたずらにも、紺野のスカートをまくりあげていった。

  戦いの終わりはいつも突然訪れる・・・儚いものだ。

  オレの目の前にモザイクの向こう側が広がり

  紺野はうつむき、小さくしゃがみこんだ。

  ・・・
ジョージ高津 jjkvN224V6

2010年12月08日(水)00時09分 公開
■この作品の著作権はジョージ高津さんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
この前の作品よんで頂いた方ありがとうございました。2作目が完成いたしました。

今回はインパクト重視です!!

哲学っぽいのがわからなくてそこが一番苦労します。

萌えは若干あるかな?と思えました。

まだまだ、駆け出したばかりの物書きなので、みなさんご意見ください。

ジョージ高津


この作品の感想をお寄せください。

2010年12月20日(月)00時16分 開蔵  +30点
ぐっじょぶ!こういうの大好きw紺野ちゃん好いわ〜。

日常に亀裂をもたらすにあたって禁止を侵犯することは重要ですね。
なぜ履かないことが興奮と結びつくのか。禁止の侵犯が興奮と結びつくのか。
紺野のエロティシズムを聞きたかったなぁ。

うん、労働と禁止は切り離せませんよね。生産ラインにしろ営業にしろ、決まり事やマナーは不可欠。
経済の豊かさと貧しさの如何が労働における禁止の軽重によるならば、
貧しい国が生き生きとしているのは当然と言えば当然かも。
そこらへんも語れそうですね。過剰というか超過というか。過食症なんですよね。今時の人間って。
あるいは労働がもはや一種の日常的機械的なオナニーと化してる。
禁止のなかで得られるカタルシスなど、高が知れている……ッ!強くなりたくばry

萌えに関しては最後の最後で強気な面がぶっ壊れたのが良かったです!
恥のせいで?高橋との話がわけのわからんところに転がっていったり……w
で、興奮が極まったところで一気に恥いる!恥女!この恥女っぷり!

哲学にもっていけるとこは多くあり、この企画でも独特でありうるだけにもったいない気もしますが、
読後感の良さを鑑みると今作はこれが一番いい形かもと思うのでし、た。
79

pass
2010年12月16日(木)00時36分 大助 1r1IKTFG/I -10点
はじめまして。大助です。以下に感想を。

一部文章の終わりに句点がなかったり、かぎかっこの終わりにも句点が残ったり、「!」のあとに空きがなかったりといったところがありました。こういったところがなくなるといいと思います。
それと文章がとびとびで読みにくい印象が目立ちました。読点が多めで行間が空いているので、次に次に進もうとするエネルギーがそがれるような気がします。文の内容以外のところに意識が向けられるのはもったいないと思います。

紺野さんが女性であることが序盤で説明されていないので途中まで女性であると誤解していました。哲学的な彼女がテーマであるのでもちろん女性があらわれるとは思うのですが、説明があったほうがいいと思います。

登場人物の後半のかけあいは面白いと思うのですが、そこにたどり着くまでが長い気がします。男性の語り口も、簡潔というよりは味気ないような。オチももうひとひねりほしいところでしょうか。

テンポがあればもっといい作品になると思います。はいてない、というところから紺野さんの思考があらぬ方向にいくのも面白いところです。

いろいろとネガティブな意見を書いてしまって申し訳ありません。素人の意見ですので、取捨選択は作者様にお任せします。それでは失礼します。


84

pass
2010年12月11日(土)03時52分 いも M8vT5jA.U. 0点
最後の展開がやりたかっただけでしょ、これw と思ってしまいました。
先の展開が読みやすかったです。
はいてないと言った時点で、おそらくこういう論理展開をしてくるんだろうということと、最後の展開まで浮かびますから。
個人的には、その予想を裏切って欲しかったですが、そうでなかったのでちょっと残念です。
81

pass
2010年12月10日(金)01時52分 ジョージ高津 jjkvN224V6 作者レス
野々宮さん感想ありがとうございました。

内容が内容なので、正直褒めてくださる方はいないのでは・・・と心配しておりました。
哲学的な部分は勉強不足でなかなか難しいです。
いやらしさの方も少し恥じらいがあり、あえて書かなかった部分もあります・・・

前々から、小説を書いてみたいと思っており、この企画は初心者でも入りやすくとても良いキッカケになりました。

感想をいただきとうれしく、読んでいただく喜びも味わえました。
小説書く楽しさをしれ、とてもよかったです。



pass
2010年12月08日(水)17時00分 野々宮真司 H4HIQlHxIA +10点
 ジョージ高津さん、初めまして。野々宮と申します。
 アイディアの勝利ってやつですね。ノーパンと哲学の融合――これは、史上誰もがなしえなかった偉業と申せましょう。基本的な小説作法がなっていないとか、そんなことは些細な問題です。そういうのはこれから勉強していけばいいのです。こういうバカバカしい話を考えつくセンスこそが才能だと私は思います。
 小説作法のことは置いておいて、話の中身で難点を言うなら、いやらしさが足りないってことでしょうか。せっかくのノーパンが生かしきれていない。「ノーパン」と「哲学」の組み合わせの面白さはそのギャップにあるので、「ノーパン」のいやらしさと「哲学」のマジメさをもっと強調すべきだと思います。
 いやらしさを増す簡単な方法は、紺野のキャラにもっと「恥じらい要素」を加えることです。もう少し女の子らしいキャラにした上で、赤面させたりどもらせたりすると、それだけでいやらしさがアップすることでしょう。それから、哲学要素ももっと高度に、高尚なものにしたほうがいいと思います。ノーパンとのギャップを高めるために。
 ギャグに関してはいいセンスをお持ちだと思いますので、あとは初心を忘れず、基本的な小説作法を身につけていけばいいと思います。これからもがんばってください。
73

pass
合計 4人 30点


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