哲学の道で少女は思考する故に少女あり
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「後をつけてるだけだからな。断じてストーカー行為じゃないからな」
 十字路の角に建つ民家の陰で、誰に言うともなく、ユースケは言い訳がましくつぶやいた。
「全然怪しくなんかないからな」
 しかし壁や電柱の陰に身を隠しつつ、一人の少女を尾行するその姿を第三者が目撃すれば、十人中七人は「怪しい」と言うだろう。残り三人のうち一人は「悲しい奴」と憐れむだろうし、もう一人は「キモイ」と侮蔑するだろうし、あと一人は何も言わず警察へ通報するに違いない。
「おわっと!」
 ユースケは停車中の軽トラックの裏へ、刑事ドラマさながらの前転アクションをくるりと決めながら飛び込んだ。僅差のタイミングで、前を行く少女が背後に不穏な空気を感じ取り、振り返る。
「話しかけるだけで、ここまで苦労するか?」
 話しかけることが目的の尾行。
 ユースケは少女に話しかけるチャンスを窺っていた。
 誰とでも気兼ねなく話せるユースケだが、今回はいささか事情が異なる。
 一筋縄ではいかない相手。
 当人の難易度が高いということに加え、まわりの視線まで気にしなくてはならないのだ。
 教室ではもちろん、校内、校外においても、とにかくM高校の級友たちの目が届く範囲で話しかけることは絶対回避しなければならなかった。
 もしその現場を目撃でもされたら、ユースケはクラス内で不利な立場に追い込まれることが、明々白々だったから……。
 
 + + +

『作品、拝読させていただきました。率直な意見を申しますと、あなたの小説には、物足りなさを感じます。決定的な「あるもの」が不足しているのです。そのために、物語は味気ないものとなっています。塩を入れ忘れてゆであがったスパゲティーのように』
「うわ、オレの小説、マズそうだな」
 ユースケはパソコンの画面を苦い顔でにらみながら、ひとりごちた。
 天才的なギャグ、奇抜なストーリー、予測不能のオチ、そしてお約束の萌え美少女(当然巨乳)……ウェブに公開したとたん絶賛の嵐になるはずだったユースケの創作した小説に寄せられたコメントは、予想に反して辛口だった。
『あなたの小説に不足している「あるもの」……それを埋めるために、どうか、じっくり、深く、考えてください。一時間でも、二時間でも、半日でも、一日中でも、考えて、考えて、考え抜いてください。お解りですか? そうやって時間をかけて思考することこそが、あなたの小説から抜け落ちてしまっていることなのです』
「要するに、オレの頭が悪いって、遠回しに言ってるんだよなあ」
 ユースケはふてくされてキーボードをバチンと叩き、ブラウザを閉じると、パソコンの電源を落とした。そしてイスからダイレクトに自分のベッドへ倒れ込む。
 壁に貼られた萌え美少女のポスターの笑顔が、心なしか自分に向けられた嘲笑に見えてしまう。
「考える? オレだって考えてるさ。全然考えていないわけじゃない。ていうか、何を考えるのか書いてねえじゃん。一体、何を考えるって言うんだ?」
 ベッドの上で横になったまま腕組みし、難しい顔をしてみるが、
「考えられねえっつの」
 手を伸ばして携帯ゲーム機をつかみ、仰向けになる。
「何を考えればいいのか判らないのに、考えようがないだろ」
 ゲームが始まったところで、ユースケはゲーム機を放り投げてしまう。
「判らねえ。くそ。一体何をどう考えればいい? ……っても、『何を考えればいいのか教えてください』なんてレスしたら、それこそ馬鹿丸出しだよな」
 何を考えるべきかを考えるという、このややこしい問いに、頭がこんがらがって、手に負えなくなってしまった。
 しかしこの問題が解決できない間は、いくら小説を書いても、好ましい反応は期待できない。
 そうやって焦れば焦るほど、なお一層の混乱に襲われ、ついにユースケはギブアップした。
 出した結論は、最早他人に頼るしかない、だ。
 誰かに教えてもらうより他ない、と。
「小説を書いてること自体周りにはおおっぴらにしてないのに、一体誰に訊ねりゃいいんだ?」
 目を閉じ、まずユースケにとって最も近しい存在であるM高校二年三組の級友の面々を脳内に並べてみる。
 すぐにクローズアップされた一人の女子。
 それは意識的に避けておきたかった顔だが、意識の底から、無意識によって押し上げられた。
 本当は、誰に訊ねればいいのか、という問いが発生したと同時に、答えが既に出ていたのかも知れないが。
 
 村上 澪(むらかみ みお)。
 
 短身、黒髪ショート、常にクールな視線を投げかけている決して笑わない少女。
 二年三組の教室の隅で、恒常的に、独り黙々と本を読んでいる。
 その姿は超然としていて、わたしに気安く話しかけないでくださいと、周囲に背中で訴えかけているように感じ取れた。
 或いは、レベルの段差をつくり、他人を簡単に侵入させないようにし、孤高を気取っているようにも見えた。
 そうやってクラスメイトとの一切のコミュニケーションを遮断してしまう、いわば集団で最も忌み嫌われるタイプの彼女は、至極当然にイジメの対象となった。
 豊富なイジメのメニューが毎日、飽きもせず、日替わりで繰り返される。
 定番のところでは、下駄箱や机の中に押し込まれる様々な嫌がらせの品々。
 菓子パンの空袋やコンビニ弁当の食べ残し、鼻をかんだティッシュ、悪臭を放つ汚れ下着といった廃棄物系から、トカゲ、クモ、ムカデなどの生き物系、画鋲や剣山やカミソリの刃のような下手をすれば流血しかねない物騒なものまで。
 もし二年三組で「村上澪のイジメに関する調査」と題してアンケートをとったとすれば、きっとこんな結果になるはずだ。
 
 村上澪にイジメ行為をはたらいた、もしくはイジメ行為に加担しり関係したりしたことがある……80パーセント。
 村上澪に対するイジメ行為に関与したことはないが、イジメの事実を認識しつつ、イジメられても仕方ないと黙殺している……10パーセント。
 村上澪に同情し、イジメ行為に反感を抱いてはいるが、異を唱えたときイジメられる側に転じることを案じ、何も言えないでいる……10パーセント。
 
 すなわち、クラス内に、彼女を庇う者はただの一人も存在しない。
 周囲からの絶え間ない攻撃と、完璧なまでの孤独。
 並みの精神では、ズタズタに壊れてしまうだろう。
 だから村上澪は自らに結界を張る。
 そうやって周囲を全てシャットアウトすることで、何とか学校生活を送っているのだ。
「相談するなら、一番の適役は、きっとあいつだよな。いつも本を読んでるし、いつも何かじっくり、深く考えてるみたいだし」
 本を閉じているとき、ノートを取り出しては、そこへ断片的な言葉を書き込みつつ、指先を額に当て、難しい顔で考えに耽っている……そんな村上の姿がしばしば見受けられた。
 そこで記される言葉は特殊で、「またあいつ宇宙人と交信してるよ」と、周囲は決まって馬鹿にした。
 しかしそんな嘲りの言葉に一切耳を貸さず、凡人には窺い知る事のできない難問を、彼女は解いているように見えた。
「だけどなあ……村上かあ……」
 村上澪と仲良くなることは勿論、普通に会話するだけでも、クラス全体を敵に回すことと同義だった。
 彼女に親近感をもって接するだけで異分子扱いされ、ひいては「イジメを糾弾する鼻持ちならない奴」扱いされてしまう。
 それ相当の覚悟なしには、彼女にはおいそれと近づくことはできない。
「村上が適役なのは間違いないけど。他に相談できそうな奴はいないしな……」
 もう一度頭の中で、仲のいい友達などを無理矢理人選に加えてみるが、見事に頭の悪そうな顔が並ぶ。
 その中からいい答えが返ってくるとは、到底思えない。
「村上しかいないか……」
 実はユースケと村上澪は縁あって、M高校入学以来、同じクラスに在籍して来ている。
 しかしその間、二人は会話も、挨拶も、ただの一語すら交わしたことがなかった。
「今更話しかけるなんて、しらじらしくて、気まず過ぎだろ」
 スパイに課せられたミッションのように、あらゆる障害が待ち受けている。それでも腹を括るしかないと、ユースケは思った。
 それでこの頭の上に重くたれこめる暗雲を取り去ることが出来るなら。それで皆を納得させる小説が書けるなら。
「試練か……」

 + + + 

 大通りを進んでいた村上澪は、通り沿いのコンビニに姿を消した。
 それに合わせユースケは足を止め、物陰からコンビニの方を窺いつつ、村上が店から出て来るのを待つ。これで首からカメラでも下げていれば、十分パパラッチの気分を満喫できただろう。
 村上澪の下校と同時に始まった尾行だが、既に10分が経過していた。
 話しかける最適なタイミングは、なかなか到来しない。
 この辺りでは、まだ下校途中のクラスメートに発見される可能性が高いので、迂闊に手を出せないのだ。
「もっと綿密に作戦を練るべきだったな。無計画過ぎだろ。だからお前は何も考えてないなんて言われちまうんだろうな。ダメなオレ」
 大きく溜息を吐いたところで、村上澪が買い物を終え、店から出て来た。
 その手に、小さなコンビニのビニール袋を下げている。
 尾行、再開。
 村上澪の自宅がどこにあるのか、どの地域から通学しているのか、ユースケは知らなかった。
 大通りを駅へ向かって歩いていくので、電車で通学していることは、ほぼ確実だが。
 そこでユースケは、村上と一緒に列車に乗り込み、車内で話しかけることを思いついた。
 限られたスペースで周囲も見渡せ、誰がいるか把握することができるし、二人でゆっくり会話することも可能だ。
 その案で固まりかけたとき、意に反して、村上澪は唐突に駅へ向かうコースから逸れた。
「ありゃりゃ。どこ行くんだよ」
 これといった目印になるような建物や看板など無い、目立たない角を曲がり、大通りに背を向け、住宅街に入っていく。
 過去にその路地を通ったことがなく、ユースケにとって未踏の領域だった。
 一体、彼女がどこに向かっているのか、そこに何があるのか、まったく見当がつかない。
 不安を抱きながら、その後を追った。
 村上澪は二度三度と角を折れ、住宅街を縫うようにして歩いて行く。その小さな手の先にぶら下がるコンビニ袋をふわふわと揺らしながら。
 見失わないように、かつ見つからないように後をつけるには不利とも思える、迷路のように入り組んだ路地が続く。
 もしかすると村上は尾行されていることに気づいていて、追っ手を撒くつもりで故意にこの場所を進んでいるのではないかと、ユースケは疑った。
「そのときは開き直るしかないだろうな」
 だんだん自分が滑稽に思えてきて、ふと、このまま断念する考えが頭をよぎる。引き返そうか、とも思った。
 しかしまるで慣性の法則みたいに、脚が勝手に、前へ前へと進んでいく。
 辺りは住宅が密集していていたが、前方に、視界の開けた場所が見えた。
 光が満ちあふれていて、まるで洞窟の中から出口を見つけたような感覚にとらわれる。
 そこはT字路だった。
 そして突き当たりにあるフェンスの向こうを、左から右へ小さな川が流れていることにユースケは気づいた。
 それは路面より一段低い土地を、両側に緑を配して流れる疎水だった。
「そういや校庭の裏にも流れていたな。こんなところまで続いていたのか」
 そのまま川に沿って歩を進める。少し行くと、歩行者用の小さな石橋が架かっていた。
 石橋を起点とし、その先から道は、疎水の流れを見ながら散歩が出来る遊歩道へと変化している。
 今は花をつけていない桜並木が続き、地上付近にはサツキやツツジが植えられている。
 道の中央には、線路のように二列の石畳が延びていた。
 道のところどころに据えられているのは、川を見下ろすことができる木製のベンチ。
 人通りはまったく無く、遊歩道の敷地内は至って静かで、別世界の観がある。
 村上澪はこの道を百メートルほど進んだところで、ようやく立ち止まり、ベンチに腰を下ろした。
 コンビニの袋からハーフサイズのペットボトルを取り出し、口をつけ、そっと息を吐く。
 そして緑を愛でるように周囲を眺め回してから、学生鞄を開き一冊の本を取り出した。
 彼女はもう一度ペットボトルに口をつけ、しおりをはずし、頁を開く。
 一方、ユースケは、両手でこめかみを押さえながら、植木の陰にしゃがみこんでしまっていた。
 遊歩道を見ている内、ふと、立ちくらみするほどの強い既視感に襲われたのだ。
 混乱を修めようと、脳が一片の記憶をたぐり寄せる。
 記憶が……再生される。
 胸にこみ上げて来る、抑えられない感情を伴いながら。
 
 シーンは、仲間と歩く京都の風景から始まる。
 嵐山。三十三間堂。銀閣寺。
 仲間は、中学時代の親友たち。
 その中に、ひときわ目立つ存在。
 清沢あかり(きよさわあかり)。
 世界を変えるほどの笑顔を見せる、憧れの少女。
 制服姿のあかりが、前を歩いている。
 両手を後ろに組みながら。
 スカートを楽しそうに揺らし。
 手をのばせば届くほど、すぐ目の前を。
 彼女は踊るように振り返る。
 髪をふわりとひるがえし。
「ねえ、ユースケくん」
 何?
「この道の名前、わかる? 今歩いている道」
 ちょっと待って。当ててみせる。えーと、『舞妓ロード』。
「ぶぶー」
 わかった。『八つ橋ストリート』。
「残念っ。あのね、『哲学の道』っていうんだよ」
 哲学の道?
「そう。昔、西田幾太郎っていう人が、この道を歩きながら、哲学のことを考えてたんだって」
 オレは歩きながら、スケベなこと考えてた。『スケベの道』に改名だ。
「あはは」また世界を変えた、あかりの笑顔。
「でもさ、素敵なところじゃない? 京都に住んでたら、わたし毎日でも、『哲学の道』に散歩に来ちゃうなあ」
 哲学の道。
 西田幾太郎という人が、この道を歩きながら、哲学のことを考えていた。
 ねえ、ユースケくん。
 彼女は踊るように振り返る。
 この道は。
 哲学の道っていうんだよ。
 哲学のことを考えてたんだって。
 哲学の道で……。
 ねえ、ユースケくん。
 世界を変えるほどの笑顔で。
 哲学を。ユースケくん。この道で。笑顔を。哲学の道で。哲学を……。
 
「……って、哲学とか言ってる場合じゃねえ!」
 あさっての方向へ飛んでいってしまった意識が、ユースケのもとへ戻る。
「スイートな思い出に耽ってる場合じゃないっつの」
 意を決したユースケは植木の裏側から飛び出し、ベンチで読書する村上澪に向かって、石畳を踏みしめて行く。
 この遊歩道の眺めは、確かに、京都に在る「哲学の道」によく似ていた。
 少なからず「哲学の道」を意識して、或いは模して造られたであろうことは、想像に難くない。設計者は京都出身か、もしくは仏像や庭園好きの京都マニアといったところだろう。
 ユースケが接近しても、村上澪は顔を上げなかった。近寄るクラスメイトをまったく気にもかけず、黙々と活字を追っている。
 ユースケは村上の前にたどり着いた。
 しかし立ち止まらない。
 ベンチに座る彼女を横目で見下ろしながら、ユースケはその前を通り過ぎてしまった。
 臆したのか?
 否、そうではなかった。
 通過してから五歩進んだところでユースケは立ち止まり、顔を向こうへ向けたまま後退りで戻って来る。両足をずるずると地面に引きずりながら。
 マイケル・ジャクソンのムーンウォークのつもりだったが、誰も見てはくれなかった。
 ユースケの自己主張を、徹頭徹尾無視しつつ、村上澪は読書を止めない。
 自分を指差しながら片手を大きく振ってみたりするが、それでも振り向いてくれない。
 業を煮やしたユースケは、できるかできないか微妙なバク転を試みた。それがたとえ危険な賭けであったとしても。
 結果、着地でバランスを崩し、盛大に尻餅をつくこととなった。
 そこでようやく、村上澪は顔を上げる。
「よお」
 ユースケは倒れた姿勢から片手を上げ、打撲の痛みを堪えつつ、苦し紛れの笑顔を向けた。
「…………」
 あいさつを返すでもなく、ツッコムわけでもなく、黙礼さえ見せず、村上澪はユースケの目をじっと見つめる。
 見つめる。
 見つめる。
 穴のあくほど見つめる。
 好奇心に満ちた視線を一点に注ぐ赤ん坊のように。
 そこから全ての情報を引き出そうとするかのように。
 気品のある、攻撃的で、どこか憂いを含んだ、黒猫を思わせる双眸。
 一言も発することなく、大きな瞳で威圧し続ける。息苦しくなるほどに。
「…………」
「…………」
「……あ……ああ、汚れちまったな」
 照れるような表情を見せ、ユースケは起き上がりながら、制服についた砂を手で払った。
「隣、座っていいか?」
 肯定も否定もない。
 突然の闖入者に対して動じる様子もなく、彼女は口を固く閉ざしている。
 待っていても仕方がないと、構わずユースケは村上の隣に腰を下ろした。
「参ったよ。今日はちょっといつもと違うルートで帰ってみるかって思ってさ。わざとコースを外れてみたら、どこ歩いてるか、さっぱり判らなくなっちゃって。まあ、平たく言えば、迷子だな。平たく言わなくても、迷子だけど。で、行き当たりばったりで歩き回っていたら、この道に出て……そしたら、あれ? あそこにいるのは、村上じゃんって」
 誰が聞いても、あまりに不自然で、苦しい言い訳だった。
 そんな詭弁に一切耳を貸さず、村上澪は元の通り、本を読んでいる。
「その本、何読んでるんだ?」
 言いながら、ユースケは馴れ馴れしくにじり寄る。
 そして肩を寄せ、広げられた頁を大胆に覗き込んだ。
「どれどれ。えー、なになに。『小説とは一種の死である。小説は人生を運命に、記憶を有益な行為に、持続を意味のある方向づけられた時間に変える。しかし……」
 瞬時に、村上が振り向く。攻撃的にナイフを振り回すように。
 至近距離から尖鋭な眼光でユースケを睨みつけ、押しのけるように威圧する。
 気圧されたユースケは、両手を上げ、自分で自分が情けなくなるくらい大仰にのけ反った。
「おおっと……キスされるのかと思ったぜ」
 村上澪はしばし威嚇するように睨んでから、相手にしていられないと、呆れ顔で、本に戻る。
「……で、何て本なんだ?」
 ユースケはひるむことなく、村上の顔を覗き込む。
「よし、当ててみせよう。ノルウェイの森光子。北欧の大女優かよ!」
「ロラン・バルト」
 ユースケの一人ボケツッコミを軽く去なし、本を見据えたまま、村上澪は初めて言葉を発した。
 記念すべき第一声。
「あ、バトルもの?」
「ロラン・バルト」
「ロラン……ああ、人の名前か」
「零度のエクリチュール」
「それがタイトル? 何だか架空の王国とか軍隊とか魔術師とか出てきそうなタイトルだけど、ラノベじゃないよな。作者、外人だし」
「…………」
「面白いか?」
「…………」
「ストーリーはどう?」
「…………」
「キャラは?」
「…………」
「…………」
「…………」
 間が持たず、ユースケはわざとらしく咳払いを挟んだ。
 予想通り、流れるような会話はまったく望めない展開だが、とにかく、そろそろ本題に入らなければならない。
「村上、オレさ、小説書いてるんだ。それで人に作品を見てもらったんだけど……。自信作だったんだよ。それなのにさ、塩を入れ忘れた出来損ないのスパゲティーみたいだって言うんだぜ。何でも、『考える』ことが足りないって言うんだ。もっと深く考えろって言うんだけど、漠然としててさ。雲をつかむような話で、何をどう考えればいいのか、見当もつかなくてさ……。なあ、村上、オレは何を、深く考える必要があるんだと思う?」
 村上澪は本に目を落としたまま、答えを探している風でもなく、唇を開く気配さえ見えない。ユースケの言葉が耳に届いているのか、それすら怪しい。
「そんなこといきなり訊かれても、オレの小説を読んでもいないのに、解るわけないよな。ちょっと待ってくれ」
 ユースケは自分の鞄を開き、プリントアウトした原稿の束を鷲掴みにして取り出すと、膝の上にのせた。
「今から朗読するから」胸を張り、得意げに言う。「自分の小説を他人に読んで聞かせるなんて初めてだから、ちょっと恥ずかしいけど、まあ聞いてくれ。まずそうで食う気にもならないスパゲティーとか言われたけど、本当に自信作なんだ」
 言いながら村上澪の反応を窺うが、まったく無関心の様子で、振り向きさえしない。
「……まあ、とにかく聞いてくれ。林檎悟利羅作……あ、この『リンゴゴリラ』って、筆名ね。姓と名がしりとりになってて、インパクトがある、いい名前でしょ? 林檎悟利羅作、『彼女のペットはチュパカブラ』……このタイトルは正直ぜんぜん意味がないんだけどさ、目を引くかなって。チュパカブラを知らない人はチュパカブラって何だろうって思うし、チュパカブラを知ってる人は、おっ、チュパカブラじゃん、って思うだろうし、どちらにしても興味を引くだろう、とね。じゃ、前説はこれくらいにして、朗読、始めるよ」

 林檎悟利羅作
『彼女のペットはチュパカブラ』
 
「ダァメェ〜。そこじゃないぃ〜。もっと上ぇ」
「悩ましい声で言うな!」
 明日は文化祭。
 俺、光一平(ひかりいっぺい)は台に上り、教室の壁に飾り付けをしていた。
 クラスメイトの明日花きらり(あすかきらり)が、下から指示を出す。
「一平くん、下手過ぎぃ〜」
 明日花きらりは、大きく、豊かで、立派な胸を、左右に揺らしながら言った。
 上から見下ろすと、きらりの胸の谷間が、晴れ上がった空のようにクッキリ見えた。
 俺はそこから容易に目を離すことができない。
 胸の谷間は、揚げたてのカレーパンと同じくらい魅力的だった。
 見た目はフワフワして、中は(多分)モチモチしているに違いない。
「もう交代ぃ〜。今度はきらりが上になって、やってあげるぅ」
「紛らわしい言い方するな!」
 俺は胸の谷間に向かって怒鳴った。
 もう明日花きらりと話しているのか、胸の谷間と話しているのか、だんだん判らなくなってきた。
「よし。バトンタッチだ」
 俺は台から飛び降り、代わりに明日花きらりが台に上った。
「一平くん、台押さえててぇ。きらり、怖いからぁ」
 しゃがんで、台の脚を押さえる。
 もちろんその角度から顔を上げれば、明日花きらりの下着を、心ゆくまで鑑賞できるはずだ。
 期待がバキバキ高まった。
「ねえ一平くぅん。この辺で、どぉお? もう少し右かなぁ?」
 明日花きらりに訊ねられ、俺は顔を上げた。
 すると、どうだろう。
 昼間で、教室の中だというのに、そこには、満天の星空が広がっていた。
 その小さな可愛らしい星たちは、明日花きらりのパンティーの柄だった。
「ファンタスティック……」俺はつぶやいた。
 オリオン座。北斗七星。しし座流星群。天の川。アンドロメダ大星雲。
 明日花きらりのパンティーを眺めながら、宇宙のロマンに想いを巡らせる。
 そして地球の青さを想い、環境破壊による地球温暖化のことを考えた。
 二酸化炭素の排出量を減らし、もっと地球にやさしくしようと、俺は明日花きらりのパンティーに誓った。
 そのとき、飾り付けをする明日花きらりのもとへ、壁を這って近づく黒い影があった。
 それは、出来ればあまり詳しく描写したくない、黒くてカサカサ動く嫌われ者のアイツだった。 
 その姿に気づいた明日花きらりは、猫が間違えて電気ウナギをくわえてしまったかのような悲鳴をあげた。
「ギィィィィィヤアアアアアアアアアア!!」
 きらりは後ろにバランスを崩し、台を踏み外して、お尻から落下。
 お尻の下には、見上げたままの俺の顔がある。
 顔面に向かって、星空に覆われたお尻がぐんぐん接近してくる。
 野球で、好調なバッターは、投手の投げたボールの縫い目が見えるという。
 俺は、向かって来るパンティーの縫い目まではっきりと見ることが出来た。
 そして次の瞬間はじめて、大変デンジャラスな状況が、今まさに迫って来ていることを認識した。
 このままいけば、お尻の下敷きになり、窒息してしまうかもしれない!
 明日花きらりの大きなお尻は、崖を転がり落ちる巨石のように、俺の顔を押しつぶさんと迫る!
 危うし!!
 絶体絶命!!
 もうダメだ!!
 ジ、エンド!!
「うわあああああああああああああ!!!」

「うるさい」
「うるさい……よね……」
 村上澪に一蹴され、ユースケの朗読は終了した。
「もう何も言いません。黙ります。沈黙」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「あ…………」
「…………」
「えー…………」
「…………」
「その…………何だ」
「…………」
「うーん…………と」
「…………」
「わかった。オレも本を読むとしよう」
 ユースケは自分の鞄を探り、一冊の文庫本を取り出した。
「これこれ。面白いんだよ、これ。美少女ばかり集めて組織された生徒会に、主人公の男が潜り込んでハーレム気分を味わう、っていうストーリーなんだけどさ。読み終わったら、村上にも貸してやるよ」
 ちらっと村上の顔を窺うが、相変わらず無反応を決め込んでいる。
「遠慮は無用だぜ。えーと、どこまで読んだっけ……うん。ここからだな」
 ユースケは本を膝にのせ、両手を合わせた。
「では、いただきます」
 桜の木の下で、ベンチに腰掛け、二人並んで本を読む。
 一方は、真剣な表情で、批評を。
 一方は、時折ニヤニヤしながら、ライトノベルを。
 人影は見えず、車の往来もない。
 風の流れは、微かだ。
 しんとした静寂が、二人を日常から引き離し、活字の世界に誘う。
 この裏道の目立たない場所にあって、ここに偶然迷い込みでもしなければ、その存在すら気づかれることがないかもしれない道。
 きっと桜の花が満開になる時期だけ人が集まり、ひとたび花が散り落ちてしまえば、すぐに忘れられてしまうのだろう。
 そして静けさを取り戻した遊歩道は、落ち着いた読書室へと姿を変える。
 思考し、想像するための場を、二人に供与する。
「んんんん!」
 一時間近く活字に浸っていたユースケは、本を閉じ、大きく伸びをした。
「ああ、面白かった。もう読み終わったから、これ、村上に貸してあげるよ。遠慮しなくていいからさ」
 返事を聞かず一方的に、彼女の鞄の中へ文庫本を押し込む。
 本を押し込みながら、ふと、村上澪の横顔に目線が向いた。
 一瞬、その横顔が少年の顔に映る。
 すぐに少年の顔は、少女のあどけない表情に変化した。凝視すると、また少年の横顔が現れ、あっという間に少女へ戻る。
 少年の側と少女の側を行ったり来たりする。まるで、どちらでもあるような。
 不意に、村上澪は読んでいる本を閉じた。
 ユースケは慌てて視線を外し、何も見ていなかった風を装う。
 閉じた本を鞄に納め、村上澪は入れ替わりにノートとボールペンを取り出した。そして開いたノートを膝にのせ、ボールペンを右手に構える。
 その様子を眺めながら、ユースケは嬉々として声を上げた。
「来たー!」
 まず、村上澪はノートに直径5センチほどの円を描いた。
 続けて、その円の中心に、直径1センチの小さな丸を書き込む。
「ドーナツ?」
 ユースケの横槍を聞き流しつつ、村上はドーナツの穴(小さな丸)の下に「自分」、外側の大きな円の下に「システム」と記入した。
 次に二重円の上方に、もうひとつ小さな丸を書き加え、そこに「自我」と記した。
 更に「自我」の右横に、「思考=存在」と書き加えた。
「何の図だ、こりゃ?」
 村上澪は尚もペンを走らせ、図の下に、こう記す。
 
 自我こそ本当の私。存在するのは本当の私。
 
「待ってくれ」ユースケはタイムを要求する。「ちょっと整理させてくれ。えーと、まずシステムに囲まれた『自分』と、その外にいる『自我』。で、『本当の私』は『自分』じゃなくて『自我』だっていうわけだ。そうすると、『本当の私』じゃない、システム内の『自分』って、何だ?」
 質問に、村上澪は筆談で回答する。

 自分は、機械。
 
「機械い?」ユースケの声が裏返る。「確かに、オレ、中学で『エロマシーン』って呼ばれてたこともある。だけど、機械はないんじゃないか? あと、自分はいいとして、他人はどうなるんだ?」

 他人の自我はわからない。他人も機械。
 
「おいおい」ユースケは冷静にツッコミを入れた。「それじゃマトモに存在するのは『本当の私』だけってことになっちゃうぞ。待ってろ。オレが今、修正するから」
 ユースケは腕を組み、両目を閉じ、思考の巨大な穴の底へダイブする。
 動きが追えないほどの超高速で、頭脳が回転し始める。
 全身の筋肉が震えだし、血液はめまぐるしく巡り、神経細胞は次から次へと情報を伝達しまくる。
 熟考に熟考を重ね、考えて、考えて、考え抜いて、ユースケは吐き出すように言った。
「わからね」
 一旦、熟考を中断し、もう一度、村上澪が描いた謎の図を見返してみる。
 すると、考える前と考えた後で、図がはっきりと違って見えることに、ユースケは気づいた。
 そして大きく目を見張る。
 天啓。
 それはとてもクリアに現前した。
「見えた!」まるで上空に忽然と現れた円盤を見つけたかのように。
 ユースケは村上のノートに向けて唐突に手を伸ばし、記された「自我」の小さな丸の上に指を置いて、それを隠してみせる。
「何が見える?」
 村上澪はハッと顔を上げ、問いかけるユースケの顔を、おどろいたような目で見る。
 事件の真相を語りだす探偵よろしく、ユースケの解説が始まった。
「どうしてもこの『自分』を囲む直径5センチの円に目がいっちゃうけど、そうじゃなくて、その外側を見るんだ。円の外側は、円のすぐ周りの余白だけじゃない。本当はノートの外にはみ出て、遊歩道の外、日本の外、世界の外、地球の外まで、無限に広がっているんだ。ほら、今、『自我』の小さな丸を隠してるけど、これはつまり……」
 そこで大きく息を吸い込んだ。
「バババーン」口で効果音を鳴らしてから、ユースケは言った。「『自我』は『すべて』ってことなのである!」
 村上澪は唖然とした表情で、ユースケの顔を見つめる。ここで初めて、この奇妙なクラスメイトに関心を示したみたいに。
「『すべて』っていうのは、もう本当にすべて。何もかも。もちろん、他人だって含まれる。『自我』は『他人』。私はあなた。ぼくは君。俺はお前。『他人』は確かに存在している。だって『自我』が存在してるんだから」
 ユースケの鼻息が荒くなる。
「すげえ。オレ、すげえな。これじゃまるで、哲学者じゃねえか。哲学の道でオレは考える、ゆえにオレあり。……って、あッ!」
 大事な用件を思い出し、あんぐりと口を開きつつ、ユースケはベンチからすっと起立した。
「あッ、あッ、あッ、あッ!」更に続けて四回。「これじゃねえか? 深く考えるっていうのは? オレがずっと探し求めていた答えって、まさにこれなんじゃねえのか?」
 まるで逆転サヨナラ満塁ホームランを放ったかのようなガッツポーズ。
「ヨシャ! オケー! これで最高の小説が書けるぜ。もう出来損ないのスパゲティーなんて言わせねえ。本場イタリア人もビックリの、スペシャルボンゴレビアンコだ!」
 ぽかんとユースケを見上げる村上澪に、ユースケは向き直り、握手を求めた。
 意外にも、素直に応じる村上。
 華奢で繊細な彼女の掌が、力強く握りしめられる。
 つながった二人の手を、村上澪はとまどいながら見つめた。
「こうしちゃいられねえぞ。早く帰って、プロット書かなきゃ。村上、ありがとう。スペシャルサンクス。まいどおおきに。また明日、教室で会おう。それまで、ごきげんよう、さようなら!」
 そう言葉を残し、ユースケは走り去った。
 
 + + +  
 
 登校して、下駄箱の扉を開くと、一匹のサソリが上履きの間を歩き回っていた。
「サソリかよ!」
 ユースケはサソリにつっこみを入れながら、盛大に尻餅をついた。
「サソリが自分から下駄箱に入ることはないよな。てことは、人為的な嫌がらせってわけだ。ていうか、下手したら死ぬだろ。嫌がらせを通り越して、殺人未遂じゃねえか。いや、それ以前にこのサソリ、どこから持ってきたんだ? かえって感心するぜ」
 こんな嫌がらせを受ける理由はひとつしかない。
 あれほど注意していたにも関わらず、ユースケと村上澪の接触現場を誰かに目撃されたらしい。
 状況は暗転したようだ。
「構うものか。いずれこうなると思ってたんだ。嫌われ者で結構。こうなりゃ開き直って、真の悪役になってやるぜ」
 二年三組の教室に一歩踏み込んだ途端、駄弁っていた級友たちの声が一斉に静まった。
 冷ややかなクラス中の視線を一身に浴びながら、ユースケは大股で自分の席に向かう。
「ウガアアア!」
 肩を怒らせ、野獣のように吠え、皆を威嚇しながら、ユースケは席に着いた。
「ホワチャア!」
 席に座ったと同時に飛び上がった。まったく同時と言っていいくらいの、神業的な上下運動だった。
 しかも世紀末格闘アニメのような奇声を発しながら。
「ガオオオオオ!」
 猛り狂ったライオンのごとく吠え、ユースケは周囲をぐるりと睨みつけた。
 そのお尻には金色の画鋲がグサリと突き刺さっていて、痛々しい。
 教室内に、冷たい忍び笑いが広がる。
「ガルルル。グルルル。ウウウウウ」
 すっかり野性化し、自分の席で低く唸り続けるユースケに、その後近寄る者はなかった。
 そして一方の村上澪は、この日、体調不良を理由に学校を休んだ。
 翌日も欠席し、学校に現れることはなかった。
 そして、その次の日も。
 村上澪の欠席が四日続いたところで、にわかに二年三組の教室がざわつき始めた。
「もうこ来ねえだろ。不登校ひきこもり決定」「失踪とか。事件に巻き込まれたとか」「ていうか、死んでんじゃね?」「どうでもいいけどな」
 ユースケの頭を、漆黒の不安のかたまりが押し包む。
 ユースケが村上澪に話しかけた、まさにあの日を境に、彼女は姿を現さなくなった。
 欠席理由は一応体調不良ということだが、どうにも怪しい。もし心理的に登校を拒んでいるのなら、その原因にユースケが関与している可能性は十分あるし、そう考える方が自然だろう。
「オレ、何かマズイこと言ったか? 村上を傷つけるようなこと言ったか? 『女の子と話すとき、してはいけない! タブー十か条』に触れたとか?」
 ユースケは、あの日のことを順に思い起こし、検証してみることにした。
 
 バク転をした……関係なさそうだ。
 強引に隣に腰かけた……しかし立ち話っていうのもな。
 道に迷って云々の弁明……たぶん聞いていなかっただろう。
 村上の本をのぞき込んだ……これは確かに怒らせたようだったが……。
 本題の相談の件……たぶん聞いていなかっただろう。
 自作小説の朗読……うるさいと言われた。
 一緒に読書……いいでしょ。読書くらい。
 哲学の話をした……うーん……。
 握手した……これが原因だったらマジへこむ。
 
 結局、本人に直接訊くのが一番早いだろう、という結論に達した。
 担任から、村上澪の自宅住所と電話番号が書かれたメモを入手した。
 放課後、ユースケは駅前のコンビニに立ち寄る。
 そこで板チョコを買い、店先の駐車場に腰を下ろした。
 チョコレートをかじりながら、メモと携帯を取り出し、メモを足下に広げ、書かれた番号に電話する。
 ……呼び出し音が延々繰り返される。電話を取る気配はない。
 一旦切って、もう一度かけ直す。
 ……返事はない。
 切って、やめようかと思ったが、もう一度だけ試してみることにする。
『はい』
 三度めの、十回くらいのコールの後。
 今にも消失してしまいそうな低い声で、村上澪は応えた。
「身体の調子、悪いのか?」
 探るように、ユースケは訊ねた。
 返答はない。
 それはつまり、否ということだと、ユースケは解釈した。
「村上、構わないから正直に言ってくれ。オレ、何か気に障るようなこと言ったか? 村上を傷つけるようなことしたか? 詳しく言えないなら、イエスかノーかだけでもいい。答えてくれ。学校に来ないのは、オレのせいか?」
 無言。待っても、待っても、答えは出ない。
 電話の向こうの空気感のみ伝わってくる。人の声も、テレビの音も、車が通る音も、一切聞こえない。
 一体どこへ電話をかけているのか?
 村上澪は本当に存在しているのか?
 自分は本当に存在しているのか?
 長い沈黙の中で、全てがぼやけてくる。
 ユースケは霞を振り払うように首を振った。
 もう一度訊ねる。
「オレのせいか?」
『違う』
 ようやく、低く呟くような村上の声が、こぼれた。
「違う? 違わなくないだろ?」
『関係ない』
 ユースケは大きく息を吸い込んだ。
「いや、きっとオレが悪いんだ。そうに決まってる。今までだって、村上がいじめられているのを、見て見ぬ振りしてきた。最低だ。でも、もう心を入れ替えた。オレは村上の味方だ。たとえクラス中を敵に回したとしても、オレだけは、村上の味方になるから。なあ、何かオレ、カッコイイこと言ってないか?」
 ユースケは悪戯っぽく笑う。
「とにかくオレは村上に謝りたいんだ。電話じゃなくて、直接に。今からそっち……村上の家に行きたいと思う。いいだろ?」
『意味が無い』
 村上澪の声のトーンは、暗く、重く、沈んでいる。
「意味がないことなんて、ないさ。いろいろ話したいことだってあるんだ。だから、いいだろ?」
 例によって、村上澪は口を閉ざしてしまった。
 ここからまた、気の遠くなるような、長い沈黙が始まる。
 沈黙の時間が長引けば長引くほど、二人の間隔が広がっていくように感じ、ユースケは苛立った。
 黙っていたら、何も前進しないじゃないか。
 とにかく、言葉を。
 しかし先に沈黙を破ったのは、意外にも、村上澪の方だった。
 ちょうどユースケが何か言おうとしたとき、それを制するように、彼女は言った。
『太宰治は馬鹿だ』
「えっ?」
 唐突で、何の脈絡もない言葉に、ユースケは面食らう。
『芥川龍之介は馬鹿だ』
「はい?」
『三島由紀夫は馬鹿だ』
「太宰、芥川、三島……さて、この三人から連想することは何でしょう? …………って、おい! 何か馬鹿なこと考えてねえか?」
『わたしは馬鹿だ』
 シャットアウト。
 電話が切られ、穏やかでない余韻を残し、通話は終了した。
「おいおい。冗談だろ」
 残りの板チョコを口に放り込み、ユースケはタクシー乗り場に向かって全力疾走で駆け出す。
 そして息を切らしながら、停車していたタクシーに乗り込み、運転手にメモを差し出した。村上澪の自宅住所が書かれたメモだ。
「ここへ」
 頬を紅潮させ、荒い呼吸をするユースケに対し、眼鏡をかけた中年の運転手はイライラするほど落ち着いている。
「最速で」ユースケは呼吸を整えつつ言った。「タクシー史上、最高のスピードで走って」
「特急料金いただきますよ」運転手が小さく笑う。
「高校生にそういうこと言うかねえ? 人が一人、死ぬか生きるかの瀬戸際なんだっつの!」
 走り出したタクシーの後部座席で、ユースケは頭を抱える。
 自問自答、そして、自己嫌悪。
 自分はとてつもなく重大な間違いを犯してしまったんじゃないか?
 大変なミスを仕出かしてしまったんじゃないか?
 自分にとってそれは、何でもないことだったかもしれない。
 しかし相手にとってみれば、何もかもが一切崩壊してしまうような一大事だった。
 村上澪が自分を守るために築いていた壁。
 傍目には生意気なくらい超然としていて、何に対しても動じていないように見えた。
 だけど彼女もまた、傷つきやすい心を持った一人の女の子だった。
 だから堅牢な防御壁をつくって、どんなに他人から攻撃されようとも、凌いできたはずだ。
「オレが壁に穴を開けちまったんだ。馬鹿か。くそっ」
 ドアを開けてもらえたんじゃない。こっちから、無理矢理こじあけたんだ。
 彼女はそれを望んでいなかった。
「今まで通りでよかったんじゃないか? 村上は村上で、よかったんじゃないか?」
 壁に開けてしまった穴がまだ修復可能なのか、もう取り返しがつかないのか、ユースケには判らない。
 どれだけ悔やんでも。どれだけ懺悔しても。
『意味が無い』
 ユースケの頭に、村上の言葉がヘビーに、のしかかる。
 最悪の結果だけは免れたい。
 両手を組み、頭を下げ、ただ祈る。
 結局タクシーは至って標準的な速度で走り、およそ二十分後に目的地で停車した。
 車から飛び出ると、ユースケのすぐ前に、主婦らしき二人の姿があった。
 両人とも、不安な面持ちで、一方向を見上げている。
「あの子、飛び降りるんじゃないかしら」
 二人が見ている方向に、ユースケも目を向ける。
 道路の向かいに立つ六階建てのマンション。その頂の縁(へり)に立つ、制服姿の少女。
 彼女の前を遮るものは一切ない。ただ虚空が広がるのみ。
 自由、且つ死に直結した虚空が。
 咄嗟にユースケは携帯を取り出すと、それを目の前の主婦に押し付けた。
「えっ? 何?」
 訝しむ主婦に、ユースケは早口でまくしたてる。
「それで警察でも消防隊でも自衛隊でもレスキュー隊でもウルトラマンでもガンダムでも何でもいいから呼んで!」
「……あなたは?」
「都合良く登場した通りすがりのライフセイバーです!」
 ユースケは主婦に敬礼し、もう次の瞬間には、マンションに飛び込んでいた。 
 エレベーターには目もくれず、人間離れした脚力で、階段を一気に駆け上がる。
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃあああああああ!」
 あっという間に屋上、到達。
 辺りはコンクリートに防水処理しただけの、無機質な空間が広がっている。
 四方を囲むのは、大人の胸の高さほどの壁で、厚さはおよそ30センチ。
 その30センチというわずかな幅の上に、少女は立っていた。
 背を向けて立つ、M高校の制服をまとった村上澪の後ろ姿。
 ユースケは歩み寄り、5メートルほどの間隔をあけて立ち止まった。
 その場所から村上の背に向かって、声をかける。
「村上、お前まだオレの新作を読んでないだろう」
 両の拳を強く握りしめ、力を込め、振り絞るように言う。
「今死んじまったら、オレの新作が読めねえぞ!」
 時折吹く風が、村上澪の小さな身体を、わずかに、危うく揺らす。
 その華奢な身体は、今にも脆く崩れてしまいそうに見える。
 次の瞬間にはあっけなくその存在が掻き消えてしまいそうなほど、儚い後ろ姿。
「オレの新作はすげえぞ」ユースケは声を張り上げる。「まだプロットしか出来てねえけど、大傑作間違いなしだ! どういうストーリーかっていうとな、今までオレたちが宇宙だと思っていたのが実は地球で、地球だと思っていたのが宇宙で、肉体だと思っていたのが心で、心だと思っていたのが肉体で、時間だと思っていたのが空間で、空間だと思っていたのが時間で、無が有で、有が無で、0が1で、1が0で、男が女で、女が男でっていう、人類の価値観を根底から覆す、他に類を見ない破天荒で奇想天外で荒唐無稽な一大スペクタクル巨編なんだ!」
 一気にしゃべって、苦しそうにハアハアと息をつく。
「これを読まなきゃ、死んでも死にきれねえ……っていうか……」ユースケは吠えた。「オレの小説を読まなきゃ……死んでも成仏できねえぞ!」
 そのとき、屋上を突風が横切った。
 嫌らしい悪魔が吹きかけた一陣の風が。
 村上澪の小さな背中が、後ろから見えない力に押される。
 谷底で待ち構える魔物へ、獲物を供するかのように。
 更に悪戯な悪魔の風は、村上澪の制服のスカートを、後ろに大きく捲り上げた。
 
 その姿は、
 今まさに大空へ飛び立たんと、翼を広げる燕。
 
「村上!」
 ユースケはコンクリートを蹴り、弾のように飛び出した。
 跳ねるかのごとく大股で駆け、最後に大きく跳躍する。
 空中で伸ばした両手が捕まえたのは、翻ったスカートの裾。
 同時に、宙を飛びながら膝を曲げ、両足を垂直に立つ壁へ押し付ける。
 そして壁に貼り付いた足を踏ん張り、後ろへ倒れ込みながら、掴んだスカートの裾を力の限り引き寄せる。
 スカートが大きく捲れ、まるで舞台の幕が上がったように、村上澪の下着が現前した。
 無地で、赤子の頬を思わせる、やわらかな桜色の。
(桜色…………桜…………)
 ユースケの脳内は淡い春の色に染まり、やがて穏やかな光に包まれ、何も見えなくなり、何も聞こえなくなり、意識がだんだん虚ろになっていく。
 桜色…………。
 桜…………。
 桜……並木…………。
 …………ねえ、ユースケくん。
 この道の名前、わかる? …………
 …………あのね、「哲学の道」っていうんだよ。
 西田幾太郎っていう人が、この道を歩きながら、哲学のことを考えてたんだって。
 哲学の道…………。
 桜の咲き誇る、哲学の道。
 さらさらと舞う、桜の花吹雪。
 ショートヘアの黒髪に、桜の花びらが降り注ぐ。
 開いた本のページに、桜がふわりと降り立つ。
 少女は、そっと、ページをめくる。
 花びらの積もったベンチに腰掛けて。
 桜の花を身にまとい、少女は本を読む。
 静かで、やさしい日差しに包まれ。
 ユースケ……。
 顔を上げ、少女がかすかに語りかける。
 一緒に本を読もう……。
 今にも消えそうな声で。
 哲学を話そう……。
 そっと微笑む。
 愛らしい頬に、桜の花が飾られる。
 桜は、花びらを雨のように散らす。
 辺りは、すべて、桜色で覆われていく。
 淡い、おぼろな少女の顔は、桜の花吹雪に掻き消える……。
 ユースケ……。
 
 村上澪の身体は後ろへ強引に引き抜かれ、屋上の縁から両足が離れた。
 あとは重力にしたがって、落下していくのみ。
 ただし、危険な縁の外側ではなく、安全な縁の内側へ。
 後ろへ身体が引かれるにつれ、すぐ目の前にあった死から、どんどん遠ざかっていく。
 スカートを掴むユースケと共に落下しながら、村上澪は安堵の表情を浮かべた。
 ユースケは桜色の下着に心を奪われ、まったく無防備に、屋上のコンクリートに向かって背中から落ちていく。
 自分の身を案じる余裕など、彼にはこれっぽっちもなかったのだ。
 ユースケはコンクリートの上に肩から激突した。
 人命に関わる急所ともいうべき後頭部も、同時に強く打ち付ける。
 更に追い打ちをかけるように、村上澪のこぶりなヒップが、ユースケの顔面に浴びせられた。
 屋上のコンクリートと村上の下半身とで、ユースケの頭部は圧搾され、つぶされる。
 すさまじい衝撃に、起き上がることも、手足を動かすことも、目蓋を開くことも、声を出すことも、一切出来ない。
 途絶える意識。
 なす術も無く、ユースケの呼吸は止まり、心臓が止まった。 
 その表情に苦痛の跡はなく、むしろ天国に召され神と共に暮らす歓びに溢れているような、満ち足りた顔をしていた。
 
 + + +
 
 観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時 照見五蘊皆空 
 度一切苦厄 舎利子 色不異空 空不異色 色即是空 
 空即是色 受想行識亦復如是 舎利子 是諸法空相 
 
「死んでねえっつの!」
 ユースケは保健室のベッドから跳ね起きた。
 その顔は、内出血で無惨に腫れ上がっている。
「般若心経のテープを止めろ!」
 カセットを止め、くるりと椅子を回転させながら振り向いたのは、養護教諭の里衿まち子(さとえりまちこ)。
「あら? もう葬儀の手配も済ませたのよ? もちろん友引の日は避けて」
 指先の電子タバコをくるくる動かし、冷たく言い放つ。
「戒名だって決まってるんだから。『傍若無人信士』っていうの」
「オレの性格を四字熟語で表しただけじゃねえか!」
 保健室に不似合いの電子タバコをくわえ、やくざな保険の先生は不満げに目を細めた。
「いい戒名だと思うんだけど」
「オレはまだ生きてるよ!」
「生きてる?」
「ああ」
「生ける屍?」
「だから死んでねえ!」
 
 あの日。
 コンクリートと村上澪の下半身に頭部を挟まれ、心肺停止に陥ったユースケだったが、村上の冷静な対処と、主婦の通報で駆けつけた救急隊員の処置により、奇跡的に蘇生した。
 自殺が未遂に終わり、命を失わずに済んだ村上澪も、再びM高校に姿を見せるようになった。
 ただ彼女が登校を再開すると同時に、それが決まり事であるかのように、律儀に、イジメも再開した。
 村上が自殺を図ったという事実は、みんな認識している。
 しかしそんなことお構いなしに、心ないイジメは終わることがなかった。
 相手にしない方がいいと、ユースケは無視を決め込んでいたが、村上の机に「死にぞこない」と落書きされている現場を見たとき、さすがにキレた。
 落書きした男子をユースケは追いかけ、振り返ったその横っ面に、あざやかな右フックをぶち込んだ。
 ……までは良かったのだが、男子の返り討ちに遭い、ばかりか男子の仲間まで加勢し、二人分の憎しみと怒りのエネルギーが、床に倒れたユースケの上に容赦なく降り注いだ。
 そこで記憶が途切れ、目が覚めたときは、般若心経が不気味に鳴り響く保健室のベッドの上だった……。
 
 里衿まち子は偽タバコの先端をユースケの顔に向ける。
「あんたって、いっつも『カッコイイ』と『カッコワルイ』の境界線を行くわね。それで必ず『カッコワルイ』側に滑り落ちるのよね」
「どうせオレはいつまで経っても、ヒーローになんかなれないさ。構うもんか。オレは悪役に徹するって決めたんだ。みんなに嫌われて、嫌われて、嫌われまくってやる」
「まあ、素直ね」
「うるせえ!」
「だけど……」里衿まち子はひと呼吸おいて、意味深に言う。「カッコワルイ嫌われ者さんを頼っている子も、案外、いたりするかもよ?」
 そう言って、意地の悪い含み笑いをして見せた。そして銃口を向けるように、再び偽タバコを突きつけて、
「それだけ元気なら、もう大丈夫でしょ。さっさとベッドから降りてちょうだい。男子の体臭が移るから」
「言われなくても立ち去るさ! こんなとこ、もう金輪際来るもんか!」
「だったら、もうケンカはしないことね。どうせ負けるから」
 大股で出口に向かうユースケの背中に忠告が飛ぶ。
「今度は相手を病院送りにしてやるさ!」
 叩き付けるように引き戸を閉め、ユースケは保健室を後にした。
 
 下校時間は過ぎている。
 戻った教室に、クラスメイトの姿は無かった。
 自分の怪我を心配してくれている仲間は、そこに誰一人いない。
 村上澪が待っていることを心の片隅で期待していたが、それも叶わなかった。
「くそっ」
 村上の机を見ると、不快な落書きがそのまま残っていた。
 ユースケは洗剤やスポンジなどを持ち出し、落書きの清掃に取りかかる。
 油性マジックで大きく書かれた文字を消すのは、容易ではない。
 一人黙々と拭き取る作業を続け、机がもとの姿を取り戻した頃には、日が暮れかけていた。
 仕事を終え、ユースケは大きく息を吐いた。
「帰るか」
 校庭に面した教室の窓の端から端まで、黄金色の夕焼け空が広がっている。
 まるで教会の天井画を仰ぎ見ているかのように、ユースケはその光景に心を奪われる。
 燃え上がる日の光が視界を覆い、ユースケは時間の感覚を失った。
 全身の力が抜け、身体がゆらゆら揺れながら浮かび上がっていく錯覚に捕われる。
「いけね」
 ユースケはかぶりを振り、気を取り直して、学生鞄を肩に掛ける。
 振り返り、一歩踏み出したユースケの前に、少女が現れた。
「村上……」
 横顔を夕焼けに紅く染め、情熱的なまなざしで、村上澪はユースケを見る。
 ユースケはまぶしそうに目を細め、彼女を眺める。
 二人の間に言葉はない。
 いつも通りのことだ。
 黙ったまま向き合い、周囲には窺い知れない、無言のやりとりを交わしている。
 視線を外し、村上澪は鞄から一冊の文庫本を取り出した。
「これ返す」
 それは遊歩道のベンチで、ユースケが彼女に無理矢理持たせたライトノベルだった。
「面白かったか?」
 ユースケの問いに村上は答えない。
 その代わり、ほんの微かに、村上澪は微笑んでみせた。
 それはともすると見逃してしまいそうな、今にも消えてなくなりそうなほど、わずかな微笑だった。 
 わずかではあったが、いつもの頑な彼女から想像できないくらい、優しく、やわらかい表情に見えた。
 ユースケは満足げに、顔をほころばせる。
 そして鞄を持ち直し、明るく声をかけた。
「じゃあ、またな」
 立ち尽くす村上澪の肩をぽんと軽くたたき、彼女の横を通り過ぎる。
 肩にユースケの手が触れた瞬間、村上は少しだけ、身体を震わせた。
 その微弱な振動は、瞬間的に増幅し、彼女の心まで揺り動かす。
 この瞬間を逃してしまわないよう慌てて振り返り、自然に、彼女の口から出た言葉。
「ユースケ」
 不意打ち。
 まったく不意に、何の準備もなしに、背後から、射抜かれた感覚。
 衝撃にユースケの足は止まり、全身が固まる。
 オレは名前を呼ばれたのか?
 あの村上澪に?
 恐る恐る首を後ろに回しながら振り返り、驚愕のあまり引きつった顔を、背後に向ける。
 そこには、両足を開き、拳を握りしめ、神々しいまでに力強く立つ村上澪の姿があった。
 大きな瞳は、黄金色の日の光を反射し、透き通った宝石のように輝いている。
 別人のような、今まで聞いた事の無い、気合いの入った村上の声が教室に響く。
「哲学の道へ行こう」
 途端、ユースケの緊張は一気に解け、破顔する。
 ユースケは大きくうなずいてから、ビシッと、右手でサムズアップを突き出した。
「イエッサー!」
 突然、タレントのように、即興の振り付けで踊りだすユースケ。
 バシッとフィニッシュを決め、笑顔で言った。
「哲学、サイコー」


 終わり
 


エキセントリクウ 

2010年12月13日(月)18時34分 公開
■この作品の著作権はエキセントリクウさんにあります。無断転載は禁止です。

■作者からのメッセージ
尾行、哲学、イジメ、パンチラ、劇中劇、ケンカ、ツンデレ、と、いろいろてんこ盛りでお送りしました学園ドラマ、お楽しみいただけましたか?

ユースケと村上澪という、この正反対の二人が、かみ合ってるようなかみ合ってないような、でもやっぱり無茶苦茶チグハグな、その辺りをドキドキハラハラしながら読んでいただければ幸いです。

哲学はいろいろ調べましたが、最終的に、池田晶子著「14歳からの哲学」という本を参考にさせていただきました。

皆様のご意見、ご感想、心よりお待ちしております!


12月31日追記

感想で、野々宮真司さんと牛髑髏タウンさんの両名から
いただいた指摘を受け、作品に若干手を加えました。
具体的には、前半の村上澪の説明のところで、しばしばノートに書き込みをしながら考えに耽る、という設定を新たに書き加えています。
この修正の目的は、

1 ユースケとの哲学議論の場面への伏線とすることで、哲学シーンの違和感の緩和を図る。
2 村上澪を相談相手に選ぶ理由の付加。

という二点です。

また、この修正に伴い、哲学シーンも数行削るなど、書き直しました。

最後に野々宮真司さん、牛髑髏タウンさん、貴重なご意見、本当に有り難うございました。重ねて御礼申し上げます。


2月5日追記

真柴竹門さんの指摘を受け、哲学シーンの表記に若干の修正を加えました。

また、本文を読み返していたところ、一部に視点のブレ(神の視点になっている)を発見し、書き直しました。

真柴竹門さん、ご教示いただき、有り難うございました。


この作品の感想をお寄せください。

2011年02月09日(水)22時22分 真柴竹門  +40点
<追記その2>


どうもどうも〜、真柴竹門です。最近ではアニソンの「Daydream Syndrome」(藤原鞠菜)を聴きながら感想を書くことが多いですね。何となくですが近年のアニソンはロック系が意外と多くて、こっちとしてはたまんないッス!
もうも〜ど〜れ〜は、しな〜〜いの〜? あの日ー々♪ あのゆーめ♪ あのキーボーウーはっ♪
このそ〜ら〜は、ホ〜ン〜〜モノ〜? 気まっぐーれ♪ 突っ然♪ 色っをー変ーえーてーくーーー♪
しつこい、といえば二回連続で追記レスをするエキセントリクウさんのほうがしつこいような気がします。
……なんて嘘ですよ。私なんかのために良さげなサイトを教えてくれてありがとうございます。「哲学の道で〜」のあと、私は「背後霊タイプ 三人称視点」でググって出てきた……
>「小説を書くとき、視点は三人称なんですが、「〜は、○ ○ と思った。」と書くとおかしいでしょうか?」
>「視点の問題」
……での人称解説しか読んでなかったので、これまた勉強になりました。前者の「Yahoo!知恵袋」で詳しく書かれてあるんで、読んでみてはどうでしょうか?
というか私もロクに理解してなかったから『あれ?』と思いつつも「あと「背後霊タイプの三人称視点」は本当に勉強となりました」と書いたクチでして(笑)。ちゃんとした理解って大変です。
そうそう、無理にとは言いませんが、この先を読むにあたって「Daydream Syndrome」を聴いてから続きに取り掛かってくれたら嬉しかったりします。

さて、「office babel」での解説を読んでいて思ったのですが、結局の所、人称問題は「情報提供の問題」に変えられるんですよね。
小説のイロハを知らない人間からの視点ではなく、ミステリー野郎の視点からちょっと意見を述べてみたいのですが、ミステリーの世界では他のジャンルと比べてみても情報提供に関して作者側も読者側も敏感です。
何てったって「フェアプレイ」という言葉があるくらいですから、問題編のうちに情報を隠蔽しすぎると「事件解決するための手がかりが無かったぞ、反則だ!」となるし、逆に開示しすぎると「バレバレだった、つまんない」となってしまうのです。
ですからあくまで想像ですけど、ミステリー野郎共って人称問題なんかでグズグズするよりも情報提供問題のほうにシビアじゃないかなー、と。前にも書きましたが「視点移動はタブー視」と指摘されて、本音を言えば『何でそんな些細なことが問題になるんだろ?』と思いもよらなかった点からビックリしました。
もし宜しければ新本格ムーブメントを巻き起こした名作「十角館の殺人」(綾辻行人)が情報提供問題の参考になるかもしれないんでオススメします。
また、私の愛読書でもある「バイバイ、エンジェル」(笠井潔)も人称視点問題に関してちょびっとだけですけどタメになるかもしれないんで、読んでみてはいかがでしょうか? とは言っても一人称と三人称が殺人事件ごとにコロコロ変わるだけ、なんですがね(笑)。
でも、上手く言えませんがこういうのは実際に肌で触れたほうが身に付くのかもしれませんから。

>それにしても真柴竹門さんの感想文における熱意とエネルギーには、ただただ圧倒されます。
>今度はぜひ、真柴竹門さんご自身の創作に、そのエネルギーを向けてください。そして作品で圧倒してください。期待してます!

ああ〜、いやいや。一応、ここで釈明しておきますけど、私は飲茶さんに「小説の分割投稿」という暴挙を仕出かした愚かな人間でしてね。多大な迷惑をかけたお詫びの気持ちで、ガンガンと感想を送ってるにすぎないわけですよ。勿論、面白い小説に触れたから感想を書きたくなったって気持ちもあるんですがね。
あと金椎響さんに「この企画には素晴らしい作品が沢山ありますので、頑張って下さい。あなたの感想は、きっと他の投稿者様にも喜ばれると思います」と励まされたことに自惚れてしまい、『私の感想が誰かの役に立つのならば』と心に決めて感想を書いておるにすぎません。自己満足ですね。
それから私、創作意欲(書きたい! って気持ち)というのが殆ど無いんですよ。エキセントリクウさんはどうやら物書き志望みたいに感じられたのですが(違う?)、逆に私は物書きになりたいとはこれっぽっちも思っておりません(このサイトに来ている人全員が作家志望な筈ないですよね)。
また、自作のほうもミステリー的側面に限っていえば、自叙伝なところがあります(その他の側面は創作で書きましたよ)。そして自分はどうも自叙伝しか書けそうにない人間のようでして、自叙伝しか書けない人間は当然ながら物書きにはなれません。
だから仮に「哲学的な彼女」企画パート2があったとしても、よほどのことがないと小説を投稿したりはしないでしょうね。だから次の創作作品で圧倒させてと期待されても困ります(笑)。またかなりの読み専人間ですので、例えエキセントリクウさんだろうとも哲彼企画パート2に新作を投稿して、私がそれを読んだとしても、きっと感想は書かないでしょう。はい。
そのかわり、立派な書き手さんが世の中にいるように、私は立派な読み手さんになりたいと心がけてはおります。エキセントリクウさん、決して表舞台に出ない読み手さん達を唸らせるような作品が生み出せるよう頑張って下さいね。

にしてもエキセントリクウさんに教えてもらった「office babel」で書かれていた「「たくさん書ける」は要注意です」ってタイトルにはかなりへこみました。
まあ、前から薄々とは気付いていたことなんですけどね。エキセントリクウさんは前に私の作品で「まず初心者にしては、文章は読みやすく、形になっているし、基本的なルールもおさえているようですね」「それと処女作でこのボリュームは大したものです」と褒めてくれて、私のほうも「世間知らずの私としては「処女作のボリューム」という予想外の方向から褒められてビックリしつつも嬉しいです」と浮かれちゃいました。
でも、そのあとによ〜く考えてみると、王冠を手にした金椎響さんの「シャッターボタンを全押しにして」を始め、世の中には私以上のボリュームを初めて書いておきながら凄く面白い小説って腐るほどあるじゃないですか。
それが「office babel」によって決定打を放たれた気分です。そうですよねえ、本当に大切なのはボリューム云々じゃなくて内容ですもんね。私の小説に対する感想を読み返しても、上記以外の好評価はありませんでしたし。
知らぬが仏、ってホントですな。まさしく、ぬか喜びしてたあの頃にはもう戻れませんし、あの二十点は本物だったのか私には分かりません。
いっそのこと自作の二十点を取り消してゼロ点かマイナス点にでも直してくれませんか? そのほうがスッキリします(笑)。
いやー、あなたってもしかして「夢喰いエキセントリクウー」じゃないでしょうか? なんてね。
……フフ、でいどぅい♪(白昼夢)。
ああそういえば「BLACK @PPLE」(SHO)の感想でも「このような長さの作品でも、小説としての基本・形はしっかりしてます」とかほざいちゃいましたね、私。それも減点しなくちゃいけませんかなあ? ……まいっか。あれには他にも良かった点がありましたし。

では最後に……

>真柴竹門さんの熱意に圧されて、哲学シーンの表記に若干の修正を施しました。
>指摘いただいた「私」と「システム」あたりです。少しは通りが改善したでしょうか?

……すみませんが、もうわかりません。哲学シーンはゲシュタルト崩壊寸前まで読み返したので、もう「初読者の気持ち」になって評価を下すことが不可能だからです(笑)。
でも多分エキセントリクウさんの改善は成功しているでしょうね。私にはそう祈るしか出来ません。
重ね重ね手間取らせてしまってすみませんでした。それでは、この辺で失礼しま……むむ! こんなところにまで追っ手が来たか! 隠れる場所、隠れる場所は?
よし、あそこだ! ハッ!(くるりと刑事ドラマさながらの前転アクション)。

126

pass
2011年02月05日(土)15時20分 エキセントリクウ  作者レス
真柴竹門さんの感想に対するレスの追記です。

背後霊タイプの三人称(一般的には三人称一視点というみたいです)について、少々気になったので、ネットで調べてみました。
その結果、
>しかしよーくよく考えたら、ユースケは「零度の〜」を全然知らないはずなのに……
>一方は、真剣な表情で、批評を。……って、おかしくないですか?
という真柴竹門さんの指摘が正しい可能性が出てきました(はっきりそうだと、言い切れませんが……)。
三人称一視点を自分の中で曲解していたかもしれず、これについては、再度見直そうと考えています。

この視点の問題は小説創作のベーシックかつ重要な部分でありながら、結構難しく、厄介です。とりあえずスムーズに読めれば、多少視点がブレてもオーケーみたいな意見もありますが、真柴竹門さんのように、気付く人は気付くわけで……。今後、できるだけ気をつけようとは思います。

ネットで調べていたら、とても詳しく解説しているサイトを見つけました。人称以外のことについても色々ためになる話が書かれているので、一読をおすすめします。
「office babel」でググって、「1次選考通過のポイントとは?」というページを開いてみてください。

pass
2011年02月05日(土)02時24分 エキセントリクウ  作者レス
真柴竹門さん、しつこいですね(笑)。いや、冗談です(笑)。追加の感想までいただき、恐れ入ります。

真柴竹門さんの熱意に圧されて、哲学シーンの表記に若干の修正を施しました。指摘いただいた「私」と「システム」あたりです。少しは通りが改善したでしょうか?

>「わたしも他人も一緒くた」は一見素敵ですが、裏返せば「カオス(混沌)」でもありますので

ここでは関係性を問題にしているので、「カオス」まで行ってしまうと、ちょっと違うよ、ということになってしまいます。これは作者レスの哲学シーンの解説で「宇宙」という言葉を使ったことに起因していると思います。なので、訂正します。「宇宙」を、「世界」とか「全体」とかに置き換えてから解釈していただけると助かります。

「ロマンティック」ですか。うまいこと言いますね。私はロマンティックな人間ですよ〜。空想癖が抜けなくて、夢見がちで、浮世離れしている、という意味で。

それにしても真柴竹門さんの感想文における熱意とエネルギーには、ただただ圧倒されます。
今度はぜひ、真柴竹門さんご自身の創作に、そのエネルギーを向けてください。そして作品で圧倒してください。期待してます!




pass
2011年02月01日(火)23時25分 真柴竹門  +40点
<追記>


哲学シーンの解説、読みました。独我論的だと薄ら思ってましたが、そんなロマンティックな哲学問答だったとは! くそ、美文は愚か読解力の無さも恨めしいです。くそ、知識は時として想像力を阻害する場合もあるから、エキセントリクウさんのようなロマン的な哲学問答は一生思い付かなかったかもです。くそ、風邪で寝込んでる場合じゃないぞコレ。是非ご教唆させてくださ……いや、させなきゃ画面越しに殴る! ……あ? 次の作品に取り掛かっているだと? それこそ知ったことか!(笑)。

>自我こそ私。私は存在する。
>『私』は『自分』じゃなくて『自我』だっていうわけだ。

この私の所、もっと変えたほうがいいです。確かに哲学の世界では「私」という用語は頻繁に使いますが、それでもこうやって「自分」「自我」と並べて書かれると同語反復的になり、混乱を招きます。私の所を、『本物の私』にするか、または<私>とちと変わった表記にしてはどうでしょう?
そして大きな円の下に、直球で「システム」と書いておいたほうがいいんじゃないでしょうか?
あとユースケの、指で「自我」を隠す行為は『消去』とも受け取られます。「わたしも他人も一緒くた」は一見素敵ですが、裏返せば「カオス(混沌)」でもありますので、なかなか難しいです。

修正案1.「わたしも他人も一緒くた、分け隔てのない宇宙に」の強調案
「おいおい、他人の自我はわからないからマトモに存在するの一人だけか。う〜ん、そっか成程な。
そいやスパゲティ批判者め、もっとちゃんと書けっての! 他人に分かってもらおうと書いてないから独り相撲だ。俺もスパゲティ批判者の主張が分からんから一人ぼっちな気分だ。
ん? 観念的には、一人なのがみんな一緒だ。そしてみんな一人。そう、自分と自我でも同じことが言えるな。つまり、つまりだ。お前も俺もスパゲティ批判者も「一人」って所で「一緒」なんだよ! つーかこの観念ってやつ、円の周りの余白だけじゃなくて(指でなぞる)、ノートからはみ出ていて無限の広がりを持ってるじゃん!(習字の最後のように、ビッと撥ねる)。おお、私はあなた。ぼくは君。俺はお前(略)」
修正案2.「だから君は独りじゃないよ」の強調案
「(澪からペンを奪ったあと)いいか、自我には何も書かれてないだろ? よし、俺の顔を見ろ!」
「?(ジーッ)」
「(ちょっと長い間、ユースケもジーッ。その隙にブラインドタッチみたくペンを走らせ)ほら見ろよ」
「(自我の円の中に「ユースケ」と書かれていて)!!」
「今、俺のこと考えてたろ? そうさ、スパゲティ批判者は俺の小説を読んで、俺のことを考えたから、そいつの思考には「ユースケ」が存在するし、またスパゲティ批判者の辛口評価によって、俺の思考の中に「スパゲティ批判者」が存在する。なんてったって「思考=存在」だからな。あれ、違う? ま、いいか。
それと同じように、お前は俺の顔を見ながら『何がしたいんだろ、この唐変木?』って考えたから、他者という俺も存在できた。勿論……(澪の自我の円のそばにユースケ用の自我円を書いて、その中に「村上澪」を書き)……俺がお前のことを考えてるから、お前も存在するんだよ。大事な人が死んでも、その人の心の中で行き続けるのと一緒だな。
ん? お前の中に俺がいて、俺の中にお前がいる? おお、私はあなた。ぼくは君。俺はお前(略)」

どうでしたか? 見当外れな意見をしてなければいいんですが。
というか、また長文になってしまい、「哲学の道で〜」で残された700文字では無理でしたから(倍の1500文字)、追記のための再投稿させてもらいました。はあ〜、直したいなあ、この長文癖。
あと「背後霊タイプの三人称視点」は本当に勉強となりました。
それでは最後に、私もユースケに習って……
「エキセントリクウ哲学、サイコー」

125

pass
2011年01月25日(火)12時40分 エキセントリクウ  作者レス
真柴竹門さん、感想どうもありがとうございます。
ビッシリ書き込んでいただいて、感謝と同時に、頭が下がる思いです。


>そして一番印象的で読後に覚えていたのはやはり、村上澪が哲学書を読んでユースケがライトノベルを読むベンチのあたりですね

ここは自分でもいいシーンだと思っていたので、そう言っていただけると大変嬉しいです。
ところでこれ以外でも、真柴竹門さんに褒めていただいてるところって、実は自分でも特に読んでほしいと思っていた箇所なんです。
そこをピンポイントで狙って来るので、いい気分です(笑)。
マッサージしてもらっていて、あ、そこそこ、そう、あーいい気持ちっていう、あんな感じ。
真柴竹門さん、褒め上手ですねー。

あと尾行シーンは「引っ張る」ための常套手段ということで使ったのですが、何だか描写ばかりで逆効果では?と危惧していたので、良かったと言っていただいて、ホッとしました。


>しかしよーくよく考えたら、ユースケは「零度の〜」を全然知らないはずなのに……
>一方は、真剣な表情で、批評を。……って、おかしくないですか?

これは三人称で書いているので大丈夫だと思うのですが……。
三人称には「神の視点タイプ」と「背後霊タイプ」がありますが、この作品は後者です。
ユースケの背後に第三者の語り手が亡霊のようにいるんです。
一人称に近い三人称ですね。


>これはさすがに不謹慎じゃないでしょうか? レスキュー隊までならともかく、ウルトラマン・ガンダムってそりゃないですよ。

ユースケはトリックスターなので、ときどき不謹慎だったり、無礼だったりするときがあります。そういうキャラなので、大目に見てあげてください。


>しかしその後の哲学シーンですが、正直に言いましょう。サッパリわかりません!
村上澪が何を書き表したいのか意味不明だし、ユースケの修正案はもはや天才レベルで全くついてこれません。

すいません……。これについては、本当に申し訳なく思っています。
浅い知識と生半可な理解で書いたら、そりゃ、こうなりますよね。
とりあえず、そう言われたら、解説するしかないでしょう。
頭のいい真柴竹門さんに説明するのは、はなはだ心苦しいですが……。

まず、村上澪が描いた図から。
大きい円=システムです。
大きい円の中の小さな丸=現実のわたしです。
社会とか、国家とか、学校とか、そういうシステムが現実のわたしを囲っています。
そして大きい円の外部にあるもうひとつの小さな丸=観念的なわたしです。
で、村上澪にとってはこの観念的なわたしがすべてで、他人の入り込む余地がないため、独我論に陥ったのです(ありがちなコギトの誤解です)。
でも観念的なわたしを相対化している時点で、そのわたし=他者ではないかと。
ユースケはその観念の世界がどこまでも無限に広がる宇宙に見えました。
わたしも他人も一緒くた、分け隔てのない宇宙に。
だから君は独りじゃないよ、とユースケは言いたかったのですが、村上澪にはショックが大きかったのです。
わたしの存在が自我から他者に、他者から宇宙までつながってしまったために。

すいません、これだけです。
質問は受け付けません。
ご教示は大歓迎です。


>けれど、野々宮真司さんの言うとおり村上澪のキャラが若干薄いのですが、それは本作の大半がユースケ節の爆発によって描かれてるためなんじゃないでしょうか?

うう……また言われてしまった。
そんなこと言うから、書き直したくなってきたじゃないですか!
もう次の作品にとりかかっているっていうのに……。
まあ、この作品が運良く出版される日が来たら、必ず直しますよ!


pass
2011年01月24日(月)01時15分 真柴竹門  +40点
どうも、真柴竹門です。先にプロモ作品の「バカ哲学ラーメンゾンビ(略)」の感想を書いたので、こちらとしてはエキセントリクウさんがそちらから読んでくれると幸いです。
今日は120円の自販機で、伊藤園の「みそ汁」(スチール缶。塩味ひかえめ)を試し買いしてみました。う〜ん、こりゃあ白米と一緒だったら丁度いいかもしれませんね。弁当のお供には有能でしょう。

さて、真っ先に高評価したいのは情景描写です。これが私にとって最大の見所でした。
洞窟のような路地を冒険譚みたく抜け出した先、川を散歩するシーンは雰囲気バッチリです。綿密な描写によって川沿いの道をてくてく歩いた気分になりました。「哲学の道」というのは行ったことないんですが、この哲学の道もきっと素敵なはずです。夜の川辺の散歩とは洒落てますね。
続いて清沢あかりによる幻想的な回想シーンも何だか桜の花びらがぶわあってイメージが湧きました。「世界を変えるほどの笑顔を見せる、憧れの少女」から考えて、ユースケの初恋だったのでしょう。
そんでもってまあ、ユースケ作の『彼女のペットはチュパカブラ』だけれど、個人的にはちょっと大変でした(笑)。質は悪くないんですがねえ。
そして一番印象的で読後に覚えていたのはやはり、村上澪が哲学書を読んでユースケがライトノベルを読むベンチのあたりですね。陳腐なのかもしれませんが、それでもこういう対比はグッと来ます! 
しかしその後の哲学シーンですが、正直に言いましょう。サッパリわかりません!
村上澪が何を書き表したいのか意味不明だし、ユースケの修正案はもはや天才レベルで全くついてこれません。ま、これはあくまでヒロインの演出のためだそうですから、この辺については評価しないでおきましょう。
つーかエキセントリクウさんは「零度のエクリチュール」「14歳からの哲学」を読んだことあるのですかー。偉いですねー、私はどちらも未読ですもの。
しかしよーくよく考えたら、ユースケは「零度の〜」を全然知らないはずなのに……

>一方は、真剣な表情で、批評を。
>一方は、時折ニヤニヤしながら、ライトノベルを。

……って、おかしくないですか? ユースケが批評書だとわかる描写は見当たりません。些細なことなんですが、印象的だったからこそ目に付きました。
でもまあ、哲学シーンで「自分は、機械」と出てきた時は『お? 村上澪ってなかなかやりおるんじゃないのか?』と何となく感じましたね。近寄りがたさは半端ないですが、ゆくゆく楽しみな哲彼ですな。
あともう二つほど些細な、いや重要かもしれないツッコミを入れてもいいですか?
まずラスト前の、村上澪のスカートを引っ張って救出しようとするシーン。まさかこのシリアスな場面でパンツネタを持ってきた時はマジで『えええええっ!』ってなりました(笑)。
コメディとシリアスの交互って作品はありますが、これを混ぜてある作品は非常に珍しいというか、私は初めてかもしれないというか。
んでこれは『彼女のペットはチュパカブラ』とリンクしているんで構いません。アリです。けれど……

>「それで警察でも消防隊でも自衛隊でもレスキュー隊でもウルトラマンでもガンダムでも何でもいいから呼んで!」

……これはさすがに不謹慎じゃないでしょうか? レスキュー隊までならともかく、ウルトラマン・ガンダムってそりゃないですよ。
タクシーの運ちゃんとの会話シーンまでなら、まだ村上澪の危機は推測の域だからギリギリオーケーかもしれませんが、眼前にあるピンチでもギャグがあったのには違和感を感じました。
でも考え直してみたら『ギャグをやりすぎだ!』と同時に『パンツといいウルトラマンといい、この作者は天才だから?』とかなり葛藤しましたし、他の感想では特に気にもかけてないようなので、これもアリなのかもしれません。
しかし、ここでもユースケ節が爆発してるのが、問題なのです。
私はユースケというキャラが好きですよ。脳内アンケートをよくしたり、パパラッチ尾行で前転したり、ムーンウォークをかましたり、「ウガアアア!」と野獣になったりと、所々で見せるユーモア(?)が読者に軽い息抜きを与えてくれます。
けれど、野々宮真司さんの言うとおり村上澪のキャラが若干薄いのですが、それは本作の大半がユースケ節の爆発によって描かれてるためなんじゃないでしょうか?
つまり一言でいって「村上澪のターンが無い」ということです。私は村上澪に「そこに存在する生き生きとした人間性」(元気な人間、って意味ではない)とやらを感じられず、あくまで「ミステリアスなキャラクター」として認識してました。
それはそれでいいのですが、本作は危うくそれすら満たせないところでした。マイナスとゼロは違います。
そして自殺未遂の緊迫シーンは数少ない村上澪ターンなんじゃないかなって思っているんですよ。なのに、折角のチャンスがユースケ節によって消費されるのは勿体無いです。
このシーンをどういうふうに改善すればいいのか私には分かりませんし、またエキセントリクウさんがおっしゃるように(?)、確かに「哲学的な心を持つ少女」の内面ってのは一般的には凄く理解しづらいでしょう。
だったら無理せずにそのハードルを引き下げて「哲学書も読む文系的な少女」についてキャラ考察してみても良かった気がします。そしたらこのシーンに何かしらの改善案を思いつけるんじゃないでしょうか?
そしてその思考の果てに導き出した苦労は、今後のエキセントリクウさんの物書き(ですか?)の活動にきっと良い影響をもたらすのかもしれません。
すみません。しゃしゃり出すぎてますね。ちょっと今、グロッキーどころか軽い風邪を引いてしまってるんですよ。熱はないけど、咳は出るわ身体の節々が痛むわで、少し休養が欲しいところなのです。
……というか私もちょいと前に「女心がわかってない」的なことを書かれまして、この件に関してどうこう言える立場じゃないんですよ。

>「女の考えてることは男にはわからん!」

……ですよねー! おお、導師よ!(笑)。まあ、パンツネタとウルトラマン・ガンダムネタの些細なツッコミはここまでにします。
というか本っ当に描写力が巧みですね。村上澪の救出するアクションシーンですけど、tabibitoさんと違って私は読みやすかったですよ。
私は小説のイロハを勉強したことすらないので、ああいうアクションシーンの難しさがどんなものか知りませんが、まあ確かに配分が難しそうですね。
でも本作は大抵の人々にも読みやすいアクションじゃないかと思います。その中でも……

>その姿は、
>今まさに大空へ飛び立たんと、翼を広げる燕。

……いいですね、こういうの。私には真似できません。美文とは無縁の私には羨ましい限りです。
それから折伏ぬゐさんと同じく、意識が途切れて保健室までジャンプするあたりには驚きました。本当に心の中で『おおっ!』ってなりましたもの。またアイディアを殺すことなく、ちゃんと生かす技術もあるように見受けられました。しかもユースケ、「今度は相手を病院送りにしてやるさ!」とイカしてます!
そしてラストのオチはいいんじゃないでしょうか。私としてはイジメが続いているのがちと心苦しかったのですが、それでも未来は明るいように感じられました。
ただまあ「作者からのメッセージ」を読んで『……ツンデレ?』となったんですけど(笑)。
著者はどう思うか知りませんが、わたし的にはこのバラエティ豊かな描写が詰まっている点で本作を気に入っております。
追跡劇、散歩シーン、幻想的回想、読書タイム、哲学問答、救命アクション、ストーリージャンプ、と、いろいろてんこ盛りでお送りされた学園ドラマ、とても楽しませてもらえました。

村上澪のキャラの件を考慮したとしても、四十点という大健闘です。色とりどりの光景に描き込まれたボーイミーツガール物語、ギャグとシリアスの混ぜっこぜが大変ユニークな傑作でした。
風邪云々は関係なく、長ったらしいばかりか至らぬ点だらけの感想でしたけれど、ここらあたりで失礼します。それでは、どうもありがとうございました。

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2011年01月15日(土)13時09分 エキセントリクウ  作者レス
折伏ぬゐさん、感想どうもありがとうございます。
先日はいきなり個人的に指名してしまい、失礼しました。折伏ぬゐさんの「コギト」がぼくにとって、あまりにもストライクな作品だったもので。今でも時々あの感動的なラストシーンを思い出しては、鳥肌立ってます。

>途中、彼の意識が飛んだ部分でストーリーまでジャンプさせたのは驚きでした。しかもごく自然な繋げ方で。

そう言っていただけると嬉しいですねー。この場面はすごく悩んで、何度も書き直したところなので。アイデアがあっても、形にするのって、難しいですよね。

>読みにくいと感じた部分も特にありませんでした。ユースケ君の小説を除いては(笑) 

これも嬉しいですね(笑)。ユースケになりきって彼の作品を書くのは、意外と大変でした。
あと、ケチャップ漬けですか。うーん、うまいですね(おいしいという意味じゃなく)。

>難点としましては、主要キャラクターである二人が二人とも感情移入しにくい、というのが挙げられると思います。

そうですか……それは残念です。
見苦しいかもしれませんが、ちょっとここで、二人の人物像について簡単に説明させてください。説明です。言い訳ではないですよ(笑)。

まず、ユースケ。
彼はスサノオノミコト的な、いわゆるトリックスターなんです。
彼の性格をKYでウザイ感じにしたのは……
まず、私が多大な影響を受けた、清原康正著「小説を書きたい人の本」の中の「読者の感情をプラスにもマイナスにもかきたたせることが、小説においての『共感』」という言葉に従って、というのが一点。
あと、「ウザイ」と「面白い」を紙一重のところで行く、最近のお笑い芸人からの影響もあると思います。とにかくインパクト重視のお笑い芸人は、意図的にウザく振る舞っているところがあるんですよね。
あと、新井英樹の漫画とか、仏教思想の影響もあるかも。

次に村上澪なんですが……実は作者である私自身、よく解らないんです(笑)。
ユースケという闖入者(他者)の出現でパニックを起こしたことは確かです。しかしそれで、果たして本気で死ぬつもりだったのか、それともただユースケを引きつけたかっただけなのか……その辺の真意は謎です。
ちょっと投げやりかもしれませんけど、結局、「女の考えてることは男にはわからん!」ということで、いいですか?(笑)
少女漫画は複雑な女性心理の動きが核で、男性はそこに感情移入できないから、ストーリーに入り込めないんですよね。
一方、あのあまりにもシンプルなラノベの萌え美少女たちには、逆に拒否反応を示してしまいますが。

>それから、ストーリーの長さ的な意味で物足りなさを感じました。

おっしゃる通り&耳が痛たたた……。
実は開蔵さんの投稿した掌編作品に対して、もっとたくさん書きましょう的なことを感想で言ったのですが、他人のこと言えんのかって、自分自身にツッコミたい気分です。
はい。次は頑張って、これでもかってくらい、書きまくりたいと思います。


pass
2011年01月14日(金)01時29分 折伏ぬゐ 3zzXlUmpzE +30点
 エキセントリクウさん、こんばんは。作品読ませて頂きました。

 展開に引っ張られて一気に読めました。掴み所の無いユースケ君のキャラクター、好きです。
 文章力に関しましては、私に言えることなどなに一つありません。読みにくいと感じた部分も特にありませんでした。ユースケ君の小説を除いては(笑) あまり関係ありませんけど、彼の小説は味が無いスパゲッティというより、スパゲッティのケチャップ漬けかな、と思ったり。

 途中、彼の意識が飛んだ部分でストーリーまでジャンプさせたのは驚きでした。しかもごく自然な繋げ方で。自分ならこの後の展開も律儀に書いてしまい、読者を飽きさせてしまうところでしょう。今後の参考にさせていただきます。

 登場人物で一番ハマったのは保健の先生でした。などというと私の性癖が垣間見えてしまいますね。白衣に電子タバコ、素敵。


 さて、ここからはケチを付けることに定評のある私のターンです(←クズ)。
 難点としましては、主要キャラクターである二人が二人とも感情移入しにくい、というのが挙げられると思います。ユースケ君が無意味にハイテンションなのと、村上さんの心理が分かりにくいのと。個人的には村上さん視点の物語ならばストライクでした(孤独な少女の前に突如現れる変態、みたいな)。ユースケ君視点は読んでいるとなんだか恥ずかしくなってきます。まるで脳が感情移入を拒否しているかのように(笑)

 それから、ストーリーの長さ的な意味で物足りなさを感じました。それだけ面白かったからだと思います。どの登場人物もまだ何か秘めていそうでしたし、ここからいよいよ哲学が始まるぞ……というところで終わってしまっているので。身も蓋も無いことを言わせてもらいますと、このクオリティーでもっと長い話ならば、さらに高い点数を付けてました。


 以上、粗末ですが感想です。それでは。
143

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2011年01月04日(火)22時58分 エキセントリクウ  作者レス
tabibitoさん、感想どうもありがとうございます。

>つい、チュパカブラを調べてしまいました。

お、ユースケの策略にハマりましたね?(笑)ユースケは満足してますよ、きっと。

>屋上で助けるシーンなど、動作の描写をもう少し丁寧にしてもらえたら、もっと読みやすくなるかも。

これはひとえに、作者の文章力の至らなさです。はい。
でも言い訳するわけじゃないですけど、難しいんですよ〜。
言葉が足らないと登場人物がどういう状況か伝わらないし、でもあまり詳しく書き過ぎると今度はストーリーの流れが止まってしまったり、緊張感もなくなったりするし……。
もう一度、西尾維新とか読んで勉強します。


pass
2011年01月04日(火)16時41分 tabibito  +30点
『彼女のペットはチュパカブラ』
つい、チュパカブラを調べてしまいました。
続きが読みたかったな、と。

先述されていましたが、ユースケが澪に話しまくるところが好きです。
声にチカラがある感じが伝わってきました。
面白かったです。

屋上で助けるシーンなど、動作の描写をもう少し丁寧にしてもらえたら、もっと読みやすくなるかも。

138

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2011年01月02日(日)01時00分 エキセントリクウ  作者レス
nさん、感想どうもありがとうございます。

>宣伝の作品の「作者からのメッセージ」につられて、読ませていただきました。

よかった!このまま埋もれてしまうのが惜しくて、なんとかしないとって思って、あの宣伝作品を思いついたんです。小説の宣伝を小説でやるって、なかなかいいアイデアかな、と。実際、宣伝効果があったというわけですね?嬉しいです。

>タイトルにイマイチ惹かれるものがなく、これまで読まなかったのですが、

そうですよね〜。自分でも気づいてて、それで宣伝作品はインパクト重視のタイトルにしたんです。ただこっちは(内容的に)バカとかゾンビとかチュパカブラとかつけるわけにもいかず……難しいですね、タイトルって。

>泣きました。最後の情景、読後感、良かったです。

これは自分にとって最高の褒め言葉ですね。めちゃめちゃ嬉しいです!ありがとうございます!


pass
2011年01月01日(土)20時57分 n  +40点
泣きました。最後の情景、読後感、良かったです。

タイトルにイマイチ惹かれるものがなく、これまで読まなかったのですが、
宣伝の作品の「作者からのメッセージ」につられて、読ませていただきました。
奇をてらうことなく、オーソドックスな書き出しだと思いますが、
退屈と言うよりむしろ安心して読み進められました。
徐々に、本当に自分でも気がつかないくらいにだんだんと引き込まれていました。
不思議です。

主人公が親しみやすいキャラクターで良いですね。笑い要素もあって嬉しいです。
女の子は謎な部分が多くて、読者の興味をそそります。
二人の間のちょっとした進展を描いているだけなのに、むしろその抑えた部分がより魅力になっていると思います。

自殺未遂があってもなお、いじめがおさまらないというくだりは、
かえって二人の温かさを感じられ、うまく引き立てているなぁと感心します。
いじめ、自殺が出てくるのに重くない。だからといって軽々しいわけでもない。
バランス感覚が良いのですね。

宣伝の作品も読みたくなりました。
131

pass
2010年12月26日(日)23時53分 エキセントリクウ  作者レス
牛髑髏タウンさん、感想どうもありがとうございます。

>主人公がなんで澪に相談しようと思ったのかよくわからないというか、いつも本を読んでいるというだけで適役だと言い切るのは飛躍があるように思いました。

おおっと、またスルドイ指摘ですね。
そうですよね。
ご都合主義っていうか、かなり強引っていうか。
もう少し理由をつけないと、説得力のかけらもないですね。

こういう指摘は言われて初めて、ああ、そうか、って気づきます。
いくら自分で推敲しても、他人の目にはなれない、ということがよく解りました。
こういう形での小説の投稿って、実は今回が初めてなのですが、やって良かったと、心底思いました。

冒頭にコメントした人が実は、っていう展開も面白いですね。
もし続編を書くことがあれば、新キャラとして登場させるのも、ありかも。

pass
2010年12月17日(金)06時04分 牛髑髏タウン DN9w0wBvqc +30点
読ませていただきました。

面白かったです。主人公が突拍子も無くてテンション高くて、とても魅力的だと思いました。文章も読みやすかったです。完成度が高い。感服いたします。

主人公が澪に話しかけまくるシーンが好きです。場面が想像できて、笑ってしまいました。主人公がバカなのか凄く頭がいいのかよくわからないところも好きです。

最初のほうでちょっと思ったのは、主人公がなんで澪に相談しようと思ったのかよくわからないというか、いつも本を読んでいるというだけで適役だと言い切るのは飛躍があるように思いました。

個人的に、主人公の作中作に寄せられた冒頭のコメントが、伏線としてもうちょっとからんでくることを勝手に期待していました。コメントした人が実は……みたいな展開かも、とかずっと気になっていまして。

楽しませていただきました。ありがとうございました。
125

pass
2010年12月15日(水)11時13分 エキセントリクウ  作者レス
野々宮真司さん、感想ありがとうございます。
非常にスルドイ指摘に、かなりビビッてます(汗)。

「哲学議論が浮いている」ですが……

今回、哲学をどう入れるかがなかなか決まらず、この場面をとりあえず飛ばして、一旦ラストまで書き終わってから、一番最後に哲学議論のシーンを挿入する、という書き方をしたんです。
こういう芸当は、それなりに力量のある人じゃないと出来ない、ということがよく解りました。
普通に、最初から最後まで順番に書くべきでした。流れは大事ですよね。

あと村上澪のキャラが薄い件も、おっしゃる通りだと思います。

プラスのユースケとマイナスの村上澪、だったわけですが、プラスに振れ過ぎですね。
もっとマイナスも書き込まないと、バランスが良くないですね。

pass
2010年12月14日(火)21時42分 野々宮真司 H4HIQlHxIA +30点
 エキセントリクウさん、初めまして。野々宮と申します。
 読みやすい文章、魅力的なキャラ、そして、しっかりしたストーリー。三拍子そろったバランスの良い作品ですね。なんと言ってもユースケ君のキャラがいい。一見カッコ悪いようでいて、めちゃくちゃカッコいいです。男の子はこうでなくちゃいけませんね。ストーリーの内容は「少年が孤独な少女を助ける物語」という王道路線ですが、ボーイ・ミーツ・ガールの基本を踏まえた完成度の高いものとなっています。こういう直球勝負の作品は大好きです。
 難点を言うならば、まず第一に、澪ちゃんのキャラが若干薄いような気がします。ユースケ君のキャラが立ってるだけに、なおさら彼女の存在の希薄さが気になってしまうんですよね(汗) 無口なのはいいんですけれど、もう少し、彼女の苦しみとか、彼女の人間性の魅力とかをしっかり描き出してほしかった。
 第二に、哲学要素が、いまいち物語のなかに上手く組み入れられていない、という点が気になります。哲学議論が全体の流れのなかで浮いてしまっていて、企画に合わせてムリヤリ挿入したような印象がしてしまうんですよね。
 上に挙げた二つの難点を一気に解消する策としては、哲学議論を澪ちゃんのキャラを演出するために利用する、ということが挙げられます。エキントリクウさんは、牛髑髏タウンさんの『先輩と、真実の口』をお読みになっているかと思いますが、あの作品では哲学的な会話を、先輩の不思議なキャラを演出するために使っています。本作においても、同じ手法が有効なんじゃないでしょうか。哲学的な会話のなかに、澪という人間の苦しみや優しさを織り交ぜていけば、より物語の完成度がアップするはずです。
 基本的な筆力は十分に高い作者さんだと思いますので、あとはそれぞれのキャラクターをしっかり掘り下げていくことを心がければ、さらに高いレベルに進めると思います。これからもがんばってください。
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合計 6人 200点


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